第718回 聴力障害と葉酸

今日は全国的に仕事始めのところが多いようですね。
さて、2010年最初のテーマは聴力障害(聴力低下)と葉酸の関係です。
加齢とともに増えるともいわれている聴力の低下ですが、男性の場合には加齢だけではなくある栄養素が関わっている可能性が2009年の耳鼻科学会で報告され注目されています。
その栄養素は葉酸です。葉酸と言えば女性、とくに妊娠中の女性には日本でもこの数年、胎児の神経管欠損の予防となることが話題になっている栄養素の1つですね。葉酸には低周波の音の聞き取りにかかわる働きがあることは以前からの研究で報告されています。
発表された内容を見ると、1986年から40歳から75歳の医療従事者で聴力低下をうったえている26273人を対象に長期にわたって行われた追跡調査によると、そのうち3559人の重度聴力障害の対象者を調べてみたところ、食事からの葉酸摂取量が平均よりも低いことがわかりました。加えて、この3559人は全員が1週間のうち5日以上アルコールを常飲していることもわかりました。アルコールは葉酸の体内での働きに影響を与えることもわかっています。

おそらく、アルコールを常飲しない場合でも、高齢者の場合には胃酸の分泌能力が低下することにともなって、食材からの葉酸の摂取不足、つまり慢性的な栄養吸収障害(Malaabsorption)に陥ることで、聴力低下、とくに低い音が聞き取りにくくなる症状が現れる可能性はあると思います。

最近、日本でも以前に比べて50歳以上の方の聴力低下が問題になってきました。外傷、アレルギー、神経症、感染症(歯の治療によるものを含め)などが背景にあることが多いとっも言われている聴力障害ですが、葉酸の摂取不良もあなどれない大きな背景であることは間違いのないことかもしれません。
もちろん葉酸を摂取する場合にはパートナーでもあるビタミンB12を一緒に摂取することも考えていただきたいです。

葉酸が豊富に含まれる食材には以下のようなものがあります。
鶏・牛・豚のレバー
枝豆・モロヘイヤ ・ほうれん草・ブロッコリー・いちご・春菊・アスパラガス・とうもろこし
そら豆・アボガド・小松菜・カリフラワー

by nutmed | 2010-01-05 16:25