第755回 食物過敏症 セリアック病 その1

週末土曜日は20℃と一気に桜前線が近づいてきたようです。今週末には東京近郊でも開花のニュースが飛び込んでくるかもしれませんね。

さて、今日から食物過敏症のテーマの1つでもあるセリアック病についてお話してきます。
「Celiac」とは翻訳するとお腹という意味で、まさにお腹「小腸」における栄養吸収にかかわる症状です。セリアック病の歴史はそれほど古くはありませんが、症状としてはかなり古くからあったもので、セリアック病という名称がついたの歴史はそれほど古くはないと言ったほうがいいかもしれません。様々な症状が複雑に絡み合う総合的な症状の元凶ですが、その中にはⅠ型Ⅱ型糖尿病、低血糖、うつ病、慢性疲労、骨粗鬆症、体重の減少、貧血、シェーグレン症候群や、普段は皆さんが「いつものことだから・・」と諦めているような下痢や便秘、胸やけ、不眠、疲れ、体重の減少、虫歯、歯槽膿漏、耳鳴り、めまい、頭痛などなどの背景に深くかかわっていると言ってもいいでしょうね。
セリアック病については日本でも今まで認識されていなかった病気と言ってもいいかもしれませんね。
人間には約60兆個の細胞がることは今までも何回も説明してきましたね。その細胞または細胞の集合体である組織が正しく働くことができるように栄養素や水分が必要となります。栄養素は食物をそしゃくした後、胃で胃酸や酵素の助けを借りて消化し、次の栄養素を吸収する腸に送る前に細かく分解します。人間の体の中心には口から始まり肛門まで続く1本の管が通っていて、一方の入り口(口)から食べたものが胃で分解され、腸で必要な栄養素を吸収し、不要になったものや有害な物質が肛門から外に排泄されます。栄養素は胃から腸に入り小腸(十二指腸)からの大腸までの間でほとんどが吸収をされますが、場所によって吸収される栄養素は異なります。(詳細は下の図を見てください)
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腸の表面は下の写真のように突起(絨毛)が沢山あり、この表面には粘膜がはりめぐらされていてこの粘膜を通過して栄養素が体内に吸収されます。
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何らかの原因でこの粘膜が損傷して炎症が起き、それが継続して慢性化することによって栄養素の吸収が難しくなるのがセリアック病です。セリアック病の場合、多くはこの何らかの原因となるのがグルテンになります。もう少し詳しく説明すると、グルテンを構成しているたんぱく質の「グリアジン」(アルコールに溶けるたんぱく質)がその原因で、代表的な食材は小麦で、そのほかには多くの穀類にグルテンは含まれています。最近の多くの加工食材に使われている「つなぎ」もグルテンであることが多いでしょう。グリアジンは33個のアミノ酸で構成されている非常に大きな物質で、このグリアジンが腸の突起(絨毛)の粘膜に障害を与えて炎症を起こすことがセリアック病の原因であると考えられています。つまりセリアック病は吸収にかかわる症状だと言ってもいいでしょう。

いわゆる原因が不明の不定愁訴だけでなく、糖尿病や低血糖の背景にもセリアック病がかかわっていることは少なくありません。また、現代人にはセリアック病が原因になっている症状を持っている人も少なくないと思います。
by nutmed | 2010-03-15 16:26