第762回 食物過敏症 セリアック病の検査

桜の開花宣言が出て以来、連日2月中下旬の陽気で、桜も咲いていいのか迷っている様子のこの頃です。

さて、今日はセリアック病の検査について紹介します。
セリアック病の診断のために、このtTGという酵素を検査することはポピュラーです。tTG(またはtTGに対する抗体)の数値が高い場合には、グリアジンが形を変えて、HLA-DQ2とHLA-DQ8に結合する頻度も量も増えるわけですから、検査診断としてはセリアック病の可能性が非常に高いということになります。tTGの数値が高い、または抗体が陽性であれば必ずセリアック病である、もしくはそのリスクが高くなる、というわけでもありません。現在のtTGの検査は、tTGという酵素(タンパク質)が存在しているかの確認を目的とする(感度)検査としては非常に有効な検査ですが、セリアック病であるかどうかを判断する確定的な診断(特異性)を目的にする場合にはやや劣る現状があります。
その背景には、tTGという酵素は腸だけでなく、全身の細胞に存在するということがあります。また、tTGは糖尿病、心臓病、肝臓の障害、クローン病などでも陽性になることがあります。もちろんセリアック病の人が陰性となることもあります。
アメリカでは、血液によるセリアック病の診断検査で、比較的感度が高く、最も特異性が高いのは、筋内膜抗体(Endomysial Anti-body:EMA)を確認する検査です。この検査は絨毛の状態(委縮しているかの確認)を判断するものです。このほかにも、血液を使ってグリアジンに対する抗体の有無を確認する検査がありますが、アメリカでも日本でも、直接小腸の細胞を採取して検査する「生検」(Biopsy)の信頼性が高いと考えられています。
皮膚表面に水が溜まったような水泡ができる「疱疹性皮膚炎」の原因の1つがセリアック病と関わっていることもわかっていまして、セリアック病の主な背景の1つである、栄養素を吸収するための腸の表面にある絨毛細胞が委縮することによるものと考えられています。したがって、疱疹性皮膚炎ができたときには、可能性の1つに絨毛の状態(委縮)を疑ってみることも必要かもしれません。
by nutmed | 2010-03-29 09:34