第915回 体内環境経過報告

季節感がなくなったとは言え、確実に日ごと秋めいてくるようで、少し安心しています。今朝の東京は雨です。
午前中、用事があって中央区の商工会議所に行った際、築地・新富町近辺の歴史を紹介するパンフレットをいただいてきました。10年近くここで仕事しているにもかかわらず、近隣の歴史は全く知りませんでした。ここ新富町、築地、明石町の界隈は、明石にある聖路加病院を中心に沢山の史跡があることに驚きました。芥川龍之介の生家、日本海軍発祥の地、印刷業発祥の地を筆頭に、慶応義塾、青山学院、立教など、東京近郊にある有名私立学校の発祥の地がそこかしこにあります。今度時間を見つけて秋の散策でもしてみようかと思います。

さて、今日は久々にカウンセリングを行ったクライアントさんの経過報告を紹介したいと思います。
調度1年前からカウンセリング栄養指導してきたこのクライアントさんは、遠方から新幹線に乗っていらっしゃる女性なので、2カ月に1度しかお会いすることができませんが、今回2カ月ぶりにお会いして、明らかに体調の変化がみられました。この方は、胃腸の調子が悪く、不眠、またメンタル的なストレス耐性が低い状態を改善希望でいらっしゃいました。当初、胃酸の分泌状態を疑って、レモン水と消化酵素で症状に改善が出てくるかの確認をしましたが、期待するほどの効果がなく、3か月前に、IgGレベルの食物耐性反応の血液検査をお願いしました。検査の結果では、やはり小麦製品と小麦グルテンに強い耐性反応があり、加えて牛乳を含む乳製品にもかなりの反応が出ていました。この結果をもとに、約2カ月間の除去食指導を行い、まずはパン、麺類、菓子類とヨーグルトを含む乳製品の摂取を可能な範囲で行っていただき、体調の様子を2カ月ほど見てもらうことにしました。
2カ月半ぶりにカウンセリングに来ていただいた彼女に会ったときに、顔の血色がいいことと、いつもよりも明るい様子がうかがえましたが、本人が報告してくれたこの2ヶ月間の除去食による体調の変化は、本人も驚くほどの効果があったようです。 まず体が軽くなった感じが訪れたようで、これは吸収機能を担う腸にあった、食後のもたれや張るような状態がなくなったことが大きな理由だと思われますが、実際に2カ月半前に会ったときに比べて、体が明らかに絞れているようでした。次に睡眠についてですが、仕事の関係で毎日午後11時過ぎまでの勤務が多く、帰宅後まで緊張感やストレスが続くため、ベッドに入っても安定した眠りにつけずに、中途覚醒や寝不足で、日中に眠気が襲うこともしばしばであった状態が、この2カ月の間に、同じ勤務就労環境の中で、帰宅後には緊張感や興奮状態もなく、自然に睡眠できるようになり、朝も目覚めが爽快になったことには、本人も驚いているようでした。食欲についての変化は、以前は勤務中に甘いもの、特にチョコレートなどの間食が頻繁であったのに、今ではチョコレートがあっても食べたいという欲求もなくなり、それは甘いもの全般について言えるとのことでした。以前からあったストレスによる精神的な落ち込みもかなり軽減され、本人が満足するに至る体調まで改善することができたようです。
サプリメントを飲んだり、増しては薬を飲んだり、除去食はあったものの、特別な食事メニューをしなければならないわけでもなく、小麦製品と乳製品を可能な限りの範囲で避けてきただけで、自分の体調がこれほど変化したことに、本人が一番驚く状況でした。次回は12月に再度カウンセリングを行う予定でいますが、本人も除去食を継続することは辛くはなく、むしろ体調がいいので継続していただくこととしました。

以前にも小麦の除去を行った結果、体調が大幅に改善された女性のケースを紹介させていただきましたが、今回の女性を含めて、今までに食物耐性反応のある食材(予想に反して小麦が圧倒的に反応する食材でした)を可能な限り避けてもらう食事をしてもらうことで、体内環境、特に腸の状態が改善され、体調が大きくポジティブに変化したクライアントさんは沢山います。 私が何回も「可能な限りの範囲で・・」ということには理由があります。日本にも小麦のグルテン耐性や、最近ではLGSを考えた栄養療法を施すドクターも多くなったようですが、私が耳にする限り、小麦などの食材に反応が出たクライアントに対する食事指導では、いわゆるエリミネーションダイエットと言った完全除去食指導をするドクターが多いようです。中には「これ以上症状を悪化させたくなければ100%完全に反応している食材を除去しなさい」と指導するケースもあるようです。
この点については正直私の気持ちも同じではあります。ただし、クライアントさんも人間です。年齢、性別以上に、性格、嗜好、仕事や就学の環境も千差万別ですから、「食べるな!」と言うのは簡単なことなんですが、折角反応している食材を突き止めて、除去食をスタートしてもらったところで、本人がストレスをためるような環境で行っても、かえって逆効果になることは少なくありませんし、私はこのようなケースをイヤと言うほど経験してきました。 私がカウンセリングで除去食の指導をするときに、必ず「可能な範囲でストレスをためずに進めてください」というのはこのためです。人間、食べたいものを我慢することほど辛いことはありません。また、普段の食生活と異なることをすることほどストレスがたまることはありません。今までに除去食の指導とカウンセリングを行ってきたクライアントさんの100%がカウンセリングの最後に「頑張ってやってみます・・」と言ってくれますが、私は必ず「頑張ってやらなくてもいいですから」と言います。頑張るということは、今まで自分が行ってきた何かを我慢したり、避けて通らないといけないわけですが、これがストレスをためる原因になるわけです。そして、そのストレスが、食物耐性の改善には重要な役割を持っている「副腎」という臓器に大きな負担となって、想像以上に結果がでず、また期待するするほどの効果がでない原因になります。
ドクターをはじめ、除去食を指導する側にとっては、「結果」を期待していることはもちろんですが、クライアントさんにしてみれば、ドクターや私にいい結果が出たことを喜んでもらおうと思って除去食をする必要はなく、自分の生活環境の中で、可能な限りできる範囲からスタートさせ、ストレスを受けないように段階的に除去食を進めていくことが、実は最も近道であるのだと実感しています。
そして、そこに栄養療法の難しさもあると実感しています。
by nutmed | 2010-09-30 14:45