第967回 うつ病ではない男性更年期症状

アメリカ出張から帰国して、年末にかけての仕事が溢れかえっていて、何から手をつけていいやら多忙な毎日です。
さて、今日は先日カウンセリングで出会った50代前半の男性クライアントさんについて紹介したいと思います。
8か月ほど前から精神的に滅入ることが多く、やる気や活気が失せてしまっていたこの男性は、雑誌を見たり、周囲の知人からのアドバイスで、ひょっとすると自分はうつ病かもしれないと思いこむようになっていました。
話を聞くと、精神科に行くことを勧められたり、それとなく読んだ雑誌に書かれていた症状を見ると益々自分はうつ病ではないかと思いこんでしまったようです。
この男性は知人からの紹介で神尾記念病院にカウンセリングにいたっしゃいました。
ここ数か月間の状態や症状を聞く限りでは、確かにうつ病の症状に重なるところがありましたが、いわゆるうつ病のそれとは異なるところがあり、男性ホルモン(テストステロン)の生産と分泌の低下による、男性型の更年期症状ではないかと感じ、念のために男性ホルモンと女性ホルモンの血液検査をオーダーしてもらい、結果を待ちました。 先日検査の結果が戻ってきたので確認したところ、私の感はあたっていたようです。
テストステロン自体は極端に低いわけではありませんが、本来体内で活性を持ち、アクティブに働くフリーテストステロンが低いことと同時に、女性ホルモンのエストラジオールが高い状況にありました。
テストステロンとエストラジオールのことについては今年の10月末のブログで詳しく解説していますので、そちらを見ていただきたいと思いますが、腹部を中心に蓄積される脂肪細胞に含まれるアロマターゼと言う酵素によって、テストステロンが女性ホルモンのエストラジオールに不必要に変換されてしまう原因によって、アクティブなテストステロンが低下してしまう状況がこの男性にはあったようです。
加えて、今年の春にタバコをやめて以降、食べ物が美味しくなり、食欲も増して体重が一気に増えたという背景があり、男性の症状が出始めた時期に一致します。
この男性には、私の方から食事指導をするとともに、神尾記念病院から天然型のテストステロンクリームを処方してもらうことにして、1カ月ほど症状の様子を見ることにしました。
本人も今まで、今の症状の原因がわからず、場合によっては精神科へも行こうかと考えていたようなので、原因の背景が理解できて安心はしてもらいました。

以前、男性肥満とテストステロンのテーマのときにも書きましたが、この男性と同じように、50代以降の男性でうつ様症状を持ち、その原因背景に男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れることによる症状を持つ男性が想像以上に増えています。
症状そのものは確かにうつ様症状が現れることが多いですが、安易にうつ病の改善薬を処方される前に、主治医に男性ホルモン(総テストステロンとフリーテストステロン)、女性ホルモン(エストラジオール)の血液検査をしてもらうことをお勧めします。

最近日本でもTVでも特集が組まれるようになりましたが、うつ病の改善薬や睡眠薬など向精神薬の不必要な処方が問題になりつつあります。いわゆる「薬害」の1つですね。 
by nutmed | 2010-12-16 13:16