第T10回 寿命にかかわるカルノシン

先週末は、高校時代に夢中になっていたイーグルのコンサートに行ってきました。前回2004年の来日のときには仕事で行けなかったので、32年前にサンフランシスコで見たコンサート以来でした。 来ている客層は、私と年代もほぼ同じ男女、つまりおじさん、おばさんばかりで、なんだか安心感すら感じました(笑) 
今日の新富町は朝から雪が降っています。積もる様子はありませんが、やはり予想通りこの時期の雪はアリでしたね。

さて、今日のテーマはカルノシン(Carnosine)です。
カルノシンの持つ強力な糖化抑制については、昨年9月のブログで詳細に説明しているので、そちらを参考にしていただくといいでしょう。
今回は、カルノシンの持つ糖化抑制以外の機能について紹介していきます。
2010年8月、老化抑制にかかわる研究雑誌「Rejuvenation Research」に、ロシアの研究チームによるショウジョウバエを使った興味ある発表が掲載されています。(Stvolinsky S, Antipin M, Meguro K, Sato T, Abe H, Boldyrev A. Effect of carnosine and its Trolox-modified derivatives on life span of Drosophila melanogaster. Rejuvenation Res. 2010 Aug;13(4):453-7.)
ショウジョウバエと言えばメンデルの法則と連想できる人は、まだまだ脳がちゃんと働いているようですね。ロシアの研究者は、ショウジョウバエのエサにカルノシンを混ぜて与えたとろこ、平均で20%も生存期間が延びたことを報告しています。彼らがショウジョウバエを選択した理由は、かつてメンデルが遺伝子の研究のときと同じです。ショウジョウバエは産卵して10日(220時間ほど)間ほどで成虫になり、翌日には産卵が可能な状態になり、およそ1か月で寿命をまっとうします。彼らは、カルノシンを与えたショウジョウバエの寿命の変化を見たわけです。さらに、ビタミンE(水溶性)をカルノシンと併せて与えると、メスのショウジョウバエでは36%も寿命が延びたことを報告しています。 昆虫のレベルでは、カルノシンの寿命を延ばすことに成功しましたが、この結果が人間でも同じように起こり得るのでしょうか? カルノシンの機能を考えると、40歳半ば以降の中高年男女では、その可能性は高いと思います。
カルノシンの最大の働きは、糖化を抑える作用と抗酸化作用になると思います。細胞が糖化や酸化によるダメージを受けることで、想像以上に臓器組織をはじめ、体内環境全体への影響は計り知れないものがあります。20歳から30歳後半までは、ストレスや食生活、運動不足などの背景があっても、糖化や酸化による細胞のダメージから回復する能力が高いことや、カルノシンが多く含まれる鳥類の肉から消化分解して吸収できる胃酸の生産量もある程度十分なわけです。しかし、40歳半ば以降、直接的にも間接的にも、自分の力で、細胞の糖化や酸化ダメージを改善する力が低下してくるために、カルノシンの恩恵は大きいと思います。
by nutmed | 2011-03-07 10:51