第1170回 MSMについて その2

先週土曜日は、大阪でカイロプラクティックの先生達に栄養療法の講義をしてきました。約4時間半の講義でしたが、皆さん真剣に聴講してくれ、また、的を得た質問も活発に寄せられ、講義する私にも熱が入り、あっという間の4時間半でした。今までに、臨床医、歯科医師、アロマセラピスト、鍼灸師などに対して栄養療法のレクチャーを数々行ってきましたが、私の感覚では、専門分野のスキルと診療科が細分化された臨床医に比べ、基本的には体の全体的な状況と、体内環境の変化に対応を要求される、鍼灸師、アロマセラピスト、カイロプラクティックなどの施術者の方が、栄養療法の理解、その取り組み姿勢は積極的だと感じています。これは日本だけでなく、アメリカやカナダでも同じだと思っています。これらの分野のスペシャリストにとって、自分の学んできた専門分野以外のスキルを取り入れることは、リスクやプライドなど様々なハードルがあるようですが、クライアントに対応するスキルの幅が広がることは、クライアントにとってのメリットは大きく、自分も対応スキルと能力が向上することでもあります。

さて、今日はMSMの2回目です。
前回のブログで紹介したように、MSMは自然界のあらゆる生物に存在する硫黄成分を持った物質で、MSMが関わっている可能性が高い症状はたくさんあり、人間は細胞の営みに、日常的にMSMを必要としています。MSMは野菜、肉、魚、牛乳、果実と、あらゆる食材に含まれていますが、加熱、乾燥など調理方法、および消化分解が不良による吸収できずにMSMが不足することによって、MSMが不足することによるしょうじょうが現れることは稀ではないように感じています。MSMはビタミンの吸収代謝に関わる働きを持っているため、その不足は直接的にビタミンの不足や機能低下につながります。また、MSMはアミノ酸から酵素を合成する際に不可欠な素材なので、MSMの不足は酵素不足が招く症状の多くにかかわります。この他、MSMは細胞同士を結合する接着剤のような役割を持っているため、細胞組織のフレキシブルな弾力性が保たれていますが、不足することで、皮膚や肺組織の弾性が低下し、症状として現れることにもなります。
もう少しMSMの具体的な働きを列挙してみましょう。
1、天然のキレート作用による水銀などの重金属の排泄解毒の働き。
2、血流量の促進。
3、筋肉や軟組織の炎症を抑える働き。
4、細胞組織の酸化抑制の働き。
5、LGSの改善。
6、腸におけるバクテリアの異常繁殖を抑える働き。
7、皮膚や粘膜、コラーゲンを作るアミノ酸(メチオニン、システイン)の合成。
8、血糖のコントロール(MSMはインスリンの合成に必要)
9、アスピリンなど薬剤による胃痛の症状改善。
10、便秘、下痢の改善。
11、筋肉痛、片頭痛の緩和。
12、浮腫みの改善。
13、手指のこわばり、痛みの改善。
14、緑内障などの眼圧低下改善。
15、細菌、寄生虫、真菌(カンジダ)の感染症状緩和と予防
このように、MSMの作用機能には多くの有用なものがあります。
興味のある機能の中に、眼圧を下げる作用と浮腫みを改善する作用がありますが、これらはMSMの共通する機能の1つで、細胞膜や粘膜に作用することで、水分の透過性を向上させる働きによるものです。タンパク質でできた風船の中に水分が充満して圧力が高くなりすぎた風船の表面にMSMが作用し、風船の中の水分を逃がして圧力を下げる働きと考えるとわかりやすいでしょうか。アメリカの眼科医や栄養療法ではMSMが配合された点眼薬を緑内障の患者に使って眼圧を下げる医師が少なくありません。
寄生虫や細菌、カンジダ菌の症状緩和や感染の拡大防止に際するMSMの作用の背景も少し変わっています。細菌やカンジダ菌は繁殖するために腸の粘膜の上についていて分裂を繰り返して繁殖をしますが、MSMには腸の粘膜上に結合する働きがあるため、言ってみれば、細菌やカンジダ菌とMSMは腸の粘膜の場所の競合をするわけです。MSMは細菌やカンジダ菌に比べて細胞への結合力が接着剤のように強く、MSMに先回りされて繁殖の場所を奪われた細菌やカンジダ菌のはんしょくりょくは低下するわけです。アメリカやカナダの栄養療法クリニックでは、小児の細菌感染症、特に腸に繁殖し、食中毒症状を伴うような場合には、抗生物質を服用させるよりも、MSMを観戦初期に飲ませるドクターは少なくありません。日本でも小児や高齢者の細菌観戦初期にMSMは有効だと思います。
by nutmed | 2012-02-15 14:50