第1207回 アレルギー食材の除去の難しさ

今朝の世紀の天体ショー「金環日食」は皆さんもご覧になったことでしょうね。我が家では昨晩から敢えて窓のシャッターを開けておき、早朝明るくなって晴れていたら起床、そうでなければ諦めてTVの中継を見ようと決めていましたが、幸い観測には無問題の快晴でした。
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近所の家庭の庭からも歓声が飛び交い、こんなに日本国民がおおらかに、そして一つの目的で歓喜の渦に巻き込まれる様は、私の記憶には久しくなかったように思います。

今日の話題はアレルギー症状、特に食餌性の食材による、アレルギー症状改善のための除去食についてです。
私が栄養カウンセリングを行っている青山外苑前クリニック神尾記念病院でケアをしているクライアントさんの中に、食餌性アレルギー症状を持った方が少なくありません。これらのクライアントには避けて通れないのが食餌指導であるとともに、症状の原因背景にあると目される食材のを避ける、いわゆる「除去食」や「回転食」という指導です。私の日米双方における経験から見ると、以前に比べ白人に多いとされている小麦(グルテン)に反応する日本人がかなり増えていることと、日本人の食生活を見てみると、小麦やグルテンを配合した食材、加工食品、添加食品がこの10年ほどで圧倒的に増えていることです。
アメリカでは、自分が持ってるアレルギー症状の改善のために、原因となっている小麦を食材から排除する除去食メニューを考えてもらうことと実行することは、彼ら彼女らにとってはあまり難しいことではないことのほうが一般的、つまり除去食をどのように進めるかについて精神的なストレスになることはあまり多くはないゆです。したがって、除去食をすすめるこちらとしてもあまり悩むことはないし、除去食の進行具合によって明らかに症状が軽減されていくことをクライアントと確認しながら進める余裕すらもできるようになります。
一方、日本人の場合、決して多くはありませんが、過去に私が栄養および食事の指導で関わってきたクライアントの多く(遠慮せずに言うとほぼ100%ですね)は除去食を進めていく際に共通するのが、何を食べればいいのか、何がOKで何がNOなのかという不安に加え、多くのクライアントの口をついて出てくるのが「その食材が大好きで食べたいのに、どうしても我慢しないといけませんか?」というものです。厳密に言えば、同じように反応する食材でも、個人差があることは歴然としており、一概な指導回答ができないことも除去食指導の難しさでもあります。10年ほど前に日本人の食餌性アレルギー症状の栄養指導を行っていたころは、アメリカで行ってきたように、高いレベルで反応することが明らかな食材はクライアントが何と言おうが完全に避けてもらうような指導を例外なしに行っていました。実際に、完全除去食の効果が顕著に現れたクライアントもいた反面、想像以上に改善が進まないクライアントが少なくなかったことも事実です。あるときに、私の師匠のDr.ライトと彼の奥方とシアトルで会食をしているときにこの話をしたことがありました。Dr.ライトの奥方の答えは明快で、それが今の私の日本人に対する除去食指導のベースになっています。白人、少なくともアメリカに住んでいる白人が簡単に除去食、例えば小麦の除去食をスタートして、苦もなく進めることができるのは、白人の食卓に並ぶ小麦製品、小麦使用配合添加食材の数と、日本人のそれとでは雲泥の差がある。いくら日本食がブームとは言え、毎日将由、味噌汁、カレーを食べる白人はいないけど、日本人はそうはいかないでしょ?!というのがその背景でした。確かに白人にとってもハンバーガーのバンズやホットドッグのパンを除去しろというのは辛いことと感じる人もいますが、小麦を除去することの目的と意味が十分理解できていて、今の症状がそれで軽減改善されるのであれば、彼ら彼女らは積極的に小麦の除去食を進めることも事実のようです。
多くも場合、アレルギー症状が炎症に関わるものであることを考えると、自分の体内で炎症を抑えるステロイドホルモンを生産する臓器である副腎は、同時にストレスのコントロールを担ってもいるわけですから、症状の改善を行う目的の除去食がクライアントのストレスになるようであれば、単純に除去食を進めることはできないこともあるわkです。「我慢」という言葉に現れているように、好きな食材を食べることができないことは、例えその食材が今の自分の症状の背景にあるとは理解していても、クライアント、多くの日本人にとっては「何かを諦める、我慢して自制する」ことはストレスとなり副腎に多大な負担をかけることとなり、想像以上に症状の改善のハードルを高くするということも事実です。
by nutmed | 2012-05-21 17:36