第1210回 プロテインの摂り方にメリ張りを考える

週末は汗ばむほどの天気でしたが、絶好のバイクツーリング日和だったので、久々に茅ヶ崎にある友人のCafeまで高尾山、丹沢を廻って走ってきました。体に受ける風はもう真夏の風ですが、背後に流れて行く風に乗ってストレスも一緒に飛んで行ってくれました。
第1210回 プロテインの摂り方にメリ張りを考える_d0070361_9342249.jpg

今日の話は、たんぱく質摂取の素材についてです。約1カ月前の4月21日にアメリカサンディエゴで行われたExperimental Biology meetingでTexas大学の研究チーム(Blake Rasmussen, PhD, of the University of Texas Medical Branch)がたんぱく質摂取素材についての非常に興味深い発表をしています。日本では話題にならなかったようですが、日本でもプロテイン摂取の人口は増加していますし、高齢社会でプロテインの積極的な摂取が話題にもなっているので、こういう貴重な学術的な発表こそメディアは取り上げてもらいたいものですね。
多くの日本人がたんぱく質の摂取としてプロテイン素材を選択する蔡の素材の多くは、大豆由来のプロテインではないでしょうか。実際プロテイン商品の市場を見ても、大豆プロテインの比率は高いと思います。一方で、プロテイン摂取の素材としては大豆のほかに牛乳やヤギの乳由来のホエイ(Whey)と同じく乳成分のカゼイン(Casein)があります。今回のテキサス大学の研究チームの発表の中で注目するのは、筋肉の増強増量、筋肉疲労回復、筋肉トーンの維持を目的とした場合、プロテインの素材によってその目的達成のための素材が大きく変わると言うことと、全てのアスリートの筋肉の増量と疲労回復のためのプロテインの黄金比をはじめて紹介しています。日本でも数年前からのアスリートやスポーツトレーナーの中にもプロテインの摂取素材として牛乳由来のホエイプロテインを使用したり勧める傾向が高くなっていると聞きます。アメリカでも5年ほど前から練習、試合を問わず、運動の前と後にはホエイプロテインとNa/Kの電解質を摂ることをトレーナーが勧めてきました。従来の大豆由来のプロテインからホエイプロテインに人気が集まった最大の理由は、アミノ酸のロイシン(Leucine)で、筋肉の合成には最も有効なアミノ酸と言われているこのアミノ酸がホエイプロテインには豊富に含まれているためです。
第1210回 プロテインの摂り方にメリ張りを考える_d0070361_108336.png

しかし、ホエイプロテインにも弱点があり、ホエイプロテインは非常に消化が早い(fast digester)素材であることがわかってきて、今回のテキサス大学の発表では、ホエイプロテインは摂ってから約1時間で吸収しプロテインの供給が終了すると報告しています。同研究チームの報告によると、大豆、カゼインともい消化吸収までにかかる時間が、以下のように大きく異なることがわかりました。
1、ホエイプロテイン :30-60分
2、大豆プロテイン  :120分
3、カゼインプロテイン:180-300分


この各プロテイン素材の消化吸収にかかる時間差を考慮することによって、対象となる競技種目や運動、加えてどのタイミングで最大の筋力が必要で、運動後の筋肉疲労回復のスケジュールを考えたプロテイン素材を摂取し、最大の効果を得ることができることにもなるわけです。 筋肉細胞の断裂や損傷の修復を行うリカバーに必要とされる時間は、一般に24-48時間と言われているので、アスリートにとって重要なリカバースケジュールでもプロテイン素材を吟味することは重要なファクターになるはずです。

結果としてテキサス大学の研究チームが導き出した3種類のプロテイン素材の黄金比は以下の比率と報告しています。

50%=カゼイン・25%=大豆・25%=ホエイ
この黄金比はベースとなる配合比率で、運動の量、筋肉への負荷時間、種目によって比率の微調整をすることが望ましいと報告しています。
加えて、このベースとなる黄金比率は、アスリートだけでなく、高齢者の生活で必要となる筋肉の働きを向上させ維持する目的でも十分使えることを報告しています。

最後に、ホエイ、大豆、カゼインの各素材の使用に際しては、言うまでもなく使用する本人がこれらの素材に反応してしまうような食物不耐性を持たないことが前提となります。
by nutmed | 2012-05-28 11:06