悪玉菌について

昨日、アメリカの友人のドクターから届いたメールを見てビックリ!
日本では一般にも比較的馴染みのある(あまり馴染んでほしくない話でもありますが・・・)大腸菌O-157によって1人が死亡し、700名以上に症状が現れているというニュースでした。何でもフレッシュパックされ全米に流通していたホウレンソウが感染源のようで18州で被害がでているそうです。もし、この1週間以内に米国から帰国して、渡米中にサラダなでで生のホウレンソウを食した経緯のあるかたで下痢などの症状が出ている方は自治体保健所に念のために申し出たほうがいいでしょう。
さて、大腸菌ということで今日は悪玉菌についてお話しましょう。
常在菌(通常人間の体内にあってもおかしくない菌)である悪玉菌のほとんどは、病原性を持っています。腸の中にいるだけでは発病はしませんが、菌に対する抵抗性や免疫力が低下したり、特定の悪玉菌が非常に増殖すると病気になってしまいます。悪玉菌の中で代表的なものは、ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌などがあげられます。毎年春から晩夏にかけて話題になる病原性大腸菌O-157もその1つで、菌に対する抵抗性や免疫力が低下することによって発病します。しかし、大腸菌の中はビタミンの合成や感染制御にも関わっているので全てが悪玉とはいえません。タンパク質は胃や小腸を通過する間に消化酵素でアミノ酸に分解・吸収されますが、悪玉菌は、タンパク質の一部を栄養分として利用し、その過程で有害物質が作りだされます。
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例えば、大腸菌は出産直後の乳児の体内に入り込み、乳児が細菌に対する認識ができる能力のスイッチを入れる役割を担います。これ以降乳児は、細菌などの外敵侵入者を見分ける能力を持つことができるようになり、免疫能力の大切な基礎をつくることができます。
大腸菌の餌となるものは排泄物である便の中に残された栄養素ですが、乳酸菌などの善玉菌もまた餌である栄養素を必要としています。したがって、悪玉菌である大腸菌と善玉菌である乳酸菌などは、自らの環境を優位な状態に保とうと活発に繁殖しようとしますが、この状態こそが、腸内細菌の環境バランスがとれている状態で最良の環境といえます。
また、人間の皮膚の上には沢山の菌が繁殖していますが、体調が良く健康体の場合には悪さをするどこころか、人間にとっては有益なものをもたらしてもくれるんですよ。脂腺から排泄された脂をこれらの菌が食べてくれた後、彼らのウンチの中には必須脂肪酸といって皮膚の保湿やウィルスなどの外敵から防いでくれる物質が含まれます。以前にも書きましたが、悪玉という名前からしてあまりよろしくないですよね。もっと菌と共存共栄することを考えないと、SF小説ではありませんが、いずれ人間は菌との戦いに敗北して痛い思いをすることになると私は常々感じています・・・
by nutmed | 2006-09-21 10:38