第583回 トリプトファンに関する1考察

今日は2回目の投稿になります。
今回のテーマの初めに、かつてトリプトファンがアメリカの市場から一掃に近い状態になり、その背景に日本の企業がかかわっていたことをお話しましたね。読者のかたからその背景を教えてほしいというメールが少なくなかったので、報道されている事実をもとに私なりの見解をお話したいと思います。

1980年代後半、数百人もの米国人が、汚染されていたL-トリプトファンを摂取することから病気になりました。多くの患者は、EMS(好酸性筋痛症候群)を引き起こしました。 米国食品医薬品局(FDA)は、汚染されていたL-トリプトファンの製造販売元が、「昭和電工」という日本企業であることを付きとめました。後日わかったことでは、昭和電工がトリプトファンの製造工程で商品が汚染されてたことを確認していなかったと報道されていましたが、実際には製造ラインを出る段階での品質チェック(菌検査)は十分に行われていたようです。皆さんは、常識的に考えればFDAは即刻、昭和電工を告訴したと思われるでしょう。 しかし、なぜかこの時FDAは昭和電工に対して何も措置を取りませんでした。FDAは、この事件を利用して米国の市場からL-トリプトファンの一掃を図ったのではないかと私は思っています。 L-トリプトファンがマーケットから消えたのと同時に、雑誌の「タイム」は、特効薬プロザックを大々的に紹介しました。 L-トリプトファンもプロザックも脳内セロトニンレベルを増加する働きがあるからですが、おもしろい偶然の一致です。
L- トリプトファンは、多くの好酸性筋痛症候群の治療に使われ、極めて効果的でした。 セロトニンを必要とする全ての人が必ずしもプロザックによる治療効果があるとは限りません。 アメリカのある雑誌でL- トリプトファンによって人生が救われた1人の若い女性がこう言いました。
「私は、私の脳がL- トリプトファンによって回復し、人生が救われたように思います」しかし、FDAがあらゆる薬局の棚からL- トリプトファンを引き上げさせたことによって、この若い女性は、代償機能を失い、うつ病状態に戻ってしまうことになりました。 最終的にFDAは、1997年にL- トリプトファンが薬品会社によって作られることを認めるようにしましたが、この若い女性と同じ境遇の患者が何千も現われました。 多数の人々が L- トリプトファンが不足し、セロトニンの合成が不足していたので、このFDAの決定は大衆にとっての大きいな福音となりましたが、その価格は従来の4倍になり、そして、処方薬剤として分類されるために、 L- トリプトファンを得るためには医者の処方箋代を支払わなければなりませんでした。しかし、2003年に何故かFDAはかつてのようにL- トリプトファンを食品としても認める決定をしました。
プロザックは新世代のうつ病治療薬で、最初に発売されたとき、イーライリリー社(プロザックの開発製造発売会社)はプロザックを飲む人の8%がある程度の性的機能障害に苦しむと報告しました。 しかし、プロザックが発売されてから10年後に、その数字が80%に近い数字であることが判明しています。 うつ病などの精神神経疾患で入院している患者の50%は、蛋白質/アミノ酸が何らかの理由で不足していると思われます。現在では、アミノ酸検査を日常的に実施しているところがほとんど無いために、医者は患者の多くが蛋白質/アミノ酸不足に陥っていることが理解できません。
by nutmed | 2009-06-01 11:43