第588回 中高年に多いうつ、慢性疲労、肥満の原因 その8

今日の東京は小雨交じりの朝を迎えています。このところ週末になるとぐずついた天気で困りますね。
天気と言えばアメリカには季節性の精神症状「SAD:seasonal affective disorder)」という季節性のうつ症があります。これはアメリカ北部を中心として太陽があまり顔を出さない冬場に見られる症状なんですが、私の好きなシアトルやオレゴンでは雨季となる冬には深刻な問題になっています。日本ではSADはあまり注目されていないようですが、私自身はアメリカのように冬ではなく、雨が続くこれからの梅雨のシーズンが日本のSADが多くなる季節だと思っています。

さて今日は生理前症候群(PMS):Premenstrual Syndrome)とトリプトファンの関係について。
ひとむかし前の日本では、女性の「生理前症候群(PMS):Premenstrual Syndrome」という言葉はあまり耳にしなかったように記憶していますが、その最たる理由には、PMSという症状自体は以前からあったのですが、最近のようにマスコミメディアで取り上げられることがなかったというのが本当のところだと思っています。ただ、明らかに食生活の変化と社会生活におけるストレスも大きくかかわっていることも事実だと思います。
ある社会学者が「女性の社会進出が増え社会がそれを真剣に考え始めてからPMSの症状を訴える女性が増えた・・」と言っていましたが、それも事実なんでしょうね。
PMSについては近いうちに箸休休題として扱う予定です。
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今日は結論から入りますが、1999年にアメリカで発表されたPMSとトリプトファンに関する研究によると、1日あたり6000mg(1回あたり2000mgを3回)という大量のトリプトファンを継続的に摂取してもらった重いPMSで悩む女性たちの情緒不安定、イライラ、神経過敏症状が顕著に改善したという報告があります。
女性の場合、毎月のイベントとしてホルモンの変化がありますが、このホルモン周期の変化がトリプトファンがセロトニンに変化する代謝のしくみに影響を与えている可能性は以前からの研究で示唆されていて、排卵日から3日間が最も影響を受けやすい時期と言われています。この背景には、黄体期になって分泌が高くなるプロゲステロンという女性ホルモンが、トリプトファンがセロトニンに変化する働きを低下させ、かわりにキヌレイン(Kynureine)というナイアシンを合成するときに必要な物質への変化量が多くなると考えられています。

ここで少し脱線しますが、キヌレインはアミノ酸の仲間ですが、多くの動物の雌が繁殖期に醸し出すフェロモンの成分でもあって、繁殖期には雌が盛んに合成して尿中に分泌される物質なんです。人間では定かではありませんが、私は女性が排卵後にトリプトファンからセロトニンではなくキヌレインの合成を増やすのは、人間の持って生まれた遺伝的な本能で、男性を惹きつけ強い遺伝子を持った種を保存するための女性の体内メカニズムなのではないかと思っています。
by nutmed | 2009-06-05 10:13