第595回 減量のための9つのポイント「ホルモンバランス」

今日6月16日は「和菓子の日」だそうです。○○の日というのは万国共通のようで、日本だけでなく世界中にいろいろな記念日があります。我が家の近所にローカルなステーキハウスがありますが、毎月29日は「肉の日」で、この日はすべてのメニューが50%OFFになるので、年に3回ほどはA5級の良質のたんぱく質豊富な和牛ヒレステーキを食べに行きます。

さあ、今日は減量のための9つのポイントの2つめのポイントです。
ダイエットを行う方は、「食べる量を減らして・・」「カロリーを少なくして・・」ということからスタートすることが少ないでしょう。でも現在お腹まわりや二の腕にすでについてしまっている余剰な脂をどうするかについてはあまり考えていないようです。
ダイエットを行った方の多くが経験している内容の中に、食事やカロリーを抑えて運動もしているのに思ったほど体重が減っていないことに悩むというものがあります。以前にもお話しているかと思いますが、人間は栄養素の摂取環境が変わる、特に低くなることでエネルギーとして使う糖分を脂肪として蓄積しはじめることがあります。また、体重計の数値は「脂肪+筋肉+(水+栄養素)」であるわけですから、数値にあまりとらわれてしまうとエネルギーを消費するための筋肉量をいたずらに低下させてしまう結果にもなります。
今回の9回にわたるテーマでは、人間の営み、細胞のしくみ、食事や運動の考え方をとおして個人の環境にあった最適な減量の方法をみつけていただくことを目的としています。
今回はホルモンと減量の関係を見ていきましょう。
脂肪とホルモンの関係は深く、以前のブログでも紹介したアディポネクチンもその1つですが今回見ていくのは男性ホルモンのテストステロン、女性ホルモンのエストロゲン、そしてDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)です。
この15年ほどの間にテストステロンが脂肪、特にお腹まわりの脂肪の代謝にかかわっていることがわかってきました。その明確なメカニズムはいまだに不明な点が多いようですが、テストステロンが糖の代謝にかかわるインスリンの働きに強い影響を持つこともその背景です。テストステロンには下の図のようにタンパク質と結合していなくホルモン活性の高いフリーテストステロンとタンパク質(性ホルモン結合グロブリン:SHBG:SexHormoneBindingGlobulin)と結合したホルモン活性が低いテストステロンがあり、テストステロン全体の役95%はSHBGと結合した状態で血液中に存在しています。
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ここでテストステロンが肥満に間接的にかかわる背景を1つお話しましょう。このSHBGが血液中に増加すると血液中にインスリンがたくさん放出され、SHBGの量をコントロールしはじめます。つまり過剰なインスリンによってインスリン抵抗性を作りやすくなることと、糖の代謝に影響をあたえ脂質代謝にも影響を与えることになります。SHBGは言ってみれば核爆弾を安全に無力化して目的地に運んでくれる運搬トラックのようなもので、体内を巡っているテストステロンのほとんどがこの運搬トラックに乗せられて無力化されていることを考えると、いかにホルモンというものは少量でも非常に強力な作用を持っているということがわかるでしょう。
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このSHBG、年齢とともに増えることがわかっていて、逆にホルモン活性の高いフリーテストステロンは少なくなっていきます。日本ではダイエットや減量のカウンセリングを行っているクリニックや病院でこの血液中のテストステロンを検査する施設は少ないと思いますが、仮に検査をするのであればフリーテストステロンを検査しなければ肝心なポイントを見落としてしまうことにもなります。
続いて女性の場合を見てみましょう。閉経を目前に控えた中高齢の女性に多くみられるお腹まわりの脂肪蓄積原因の1つにもホルモンがかかわっていることが研究報告されていますが、加齢によるエストロゲンの不足が脂質代謝に影響を与えることがあります。
日本でも男性女性に対して、加齢ともに低下してくるホルモンとその働きを補うために、ホルモン補充療法がおこなわれていますが、ドイツ、フランス、アメリカの研究者の研究によると、馬の尿を成分として作られたエストロゲンなど、合成されたホルモンを使用した場合には逆に体重が増加するという報告もあります。日本ではようやく「天然ホルモン補充療法(NHRT:Natural Hormone replacement Therapies)」という言葉が普通に聞かれるようになりましたし、それを実践するドクターも増えていることは喜ばしいことですが、可能な限り日常生活、特に食生活の中で自らの体内でホルモンを合成するために必要な栄養素や素材(大豆食品など)を積極的に食すことも大切なことだと思います。

次回は「炭水化物と食欲のコントロール」です。
by nutmed | 2009-06-16 09:14