臨床栄養士のひとり言

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グルテンとカゼイン

最近、栄養医学研究所のカウンセリングで訪問される方の中に、お子さんのアレルギーで悩まれているお母さんやOLさんが増えています。多くの場合、提携しているクリニックを紹介してアレルギー検査(MAST法またはバイオエナジー)を行っていただくのですが、最近目立って多いのがグルテンとカゼインに対する耐性です。今日はグルテンとカゼインについてお話します。

グルテンは、小麦、大麦、ライムギ、及び、オートムギのような草食物に含まれる蛋白質です。カゼインは、母乳、牛乳、アイスクリーム、チーズ、及び、ヨーグルトなどの乳製品に含まれる同じく蛋白質です。
グルテンやカゼインは人間にも有用なたんぱく質ですが、年齢、吸収能力を考えて摂取しないと、逆効果にもなるたんぱく質で、これらの食物に含まれるグルテンとカゼインが幼児のアレルギーの原因および神経系統の働きに支障を来す可能性が示唆されはじめています。

牛乳のたんぱく質の80%を占めるカゼインは、母乳にも含まれるたんぱく質ですが、牛乳のカゼインに比べて極めが細かく、乳幼児の腸でも消化が可能なたんぱく質です。しかし、牛乳に含まれるカゼインは、人間の母乳に含まれるカゼインとは異種のたんぱく質で、分子も大きく、胃を4つも持つ子牛にとっては容易に分解できても、人間の乳幼児には分解が困難なたんぱく質です。したがって、乳幼児、少なくともカゼインを分解する酵素(トリプシン、キモトリプシン)が分泌できるようになる2歳ごろまでは、牛乳を与えるべきではないと考えます。

グルテンとカゼインは、腸でタンパク分子(2個以上のアミノ酸が結合したペプチドと呼ばれる分子)に分解され、最終的にアミノ酸に分解されます。
グルテンとカゼインが、腸でタンパク分子に分解されるとモルフィン(グリアジノモルフィン、カソモルフィン)と呼ばれる物質になります。このモルフィンは本来血液の中には存在しない物質で、これが腸の膜を通過して体内に吸収される可能性があります。特に、小腸の粘膜が破れてしまうようなLGS(リーキーガット症候群)の場合には確実に体内に吸収されることになります。
血液を通して体内に入ったモルフィンは、麻酔薬のモルヒネに似た作用を持つことが知られており、このモルフィンは脳膜を通過して脳内に入り、小児の脳、特に、言語や聴覚機能を司る側頭葉の働きに影響を与え、ADHDの引きがね、また、精神分裂症の原因になる可能性が報告されています。

また最近の食品にはグルテンやカゼインを添加物として使っているものも少なくないので注意してください。
by nutmed | 2007-10-31 18:00

エビデンスは画一ではない・・

昨日の日曜日は今年で5回目となった新蕎麦賞味会に長野まででかけてきました。
趣味のバイクの友人による趣味を逸脱したプロさながらの蕎麦打ちを見て、蕎麦の食べ方のレクチャーを受けて、今年は35人の参加にも関らず、6種類の二八蕎麦の相伴にあずかりました。しっかりとポリフェノールを摂取できた1日でした。

さて、今日は私の知人でもあり、今や米国だけでなくヨーロッパ、最近では日本でもその名前を聞くようになった点滴療法の第一人者ドクターAlan R. Gabyから届く毎月1回のトピックスレポートから「コーヒーが肝臓がんを予防する???」を少し紹介しましょう。
肝臓がんは近代社会で増加しているがんの1つで、世界中で年間60万人が肝臓がんによって亡くなっているという数字もでています。今年、米国の権威ある医学誌Hepatology (2007;46:430-435.)で報告されたドクターBraviらによる追跡統計調査によると、コーヒーを頻繁に飲む人には肝臓がんが少ないことが報告されています。これは以前からも言われていることで、コーヒーに含まれるカフェインによる背景であるとか、ポリフェノールによるものであるとかが報告されていますがどれも確定的なことはわかっていません。この日本でもかつて疫学調査をおこなった結果、コーヒーを飲む人には肝臓細胞が癌化するリスクが低いという報告もあります。現状ではコーヒーのどの成分ががん細胞に有効(可能性)であるのかがわかっていません。ただ、このような研究報告が発表されると多くの場合、○○コーヒー協会、○○コーヒー会社などコーヒーを扱う団体企業がこの部分だけを取り上げて、「コーヒーは肝臓がんの予防になるから毎日○杯のコーヒーを飲みましょう!」などというPRを出したり、TVのメディアが取り上げて健康番組で特集したり、雑誌が特集したりしますね。それを見聞きした消費者の多くがコーヒー豆を買いに走り、何となく今までコーヒーなんて飲まなかったお父さんが街角のスターバックスに入ってコーヒー飲んだり(笑)
しかし、注意、いや注意というよりも警戒しなければいけないのは、確かに統計的にはコーヒーを飲んでいる人に肝臓がんが少ないかもしれませんが、それが単純にまた直接的にコーヒーによるがん細胞への影響と言い切るには時期尚早であるということです。なぜならば、コーヒーが肝臓がんの予防に有効であることは確かに統計学的には言えるかもしれませんが、一方でコーヒーの成分の1つであるカフェインが脳神経細胞への影響によって記憶力が低下する、特にパーキンソン病の患者ではカフェインは禁物であることが動物および人の研究で報告されている事実があるからです。
よく「木を見て森を見ない」ということばが使われますが、今回の報告は正にこれと同じです。以前にも書きましたが、最近一般の方の口からも「エビデンス・・」という言葉を聴くほど、世の中エビデンス偏重の状況があるようですが、特に日本人が注意しなければいけないのは・・・
医学、科学の実験研究によるエビデンス(証拠)はそのときの条件から見つけられた結果であって、言い換えればキュウリを包丁でスパッと切った切り口だけを見て「このキュウリは腐っていないしスが入っていないから安全でおいしいキュウリだ」と言っていることに近いということです。しかし、その切り口からほんの数mm左側を切ったらスが入っているだけでなく黒く腐っているということが決してない話ではないということです。

エビデンスがいけないということではありませんし、医学的・科学的に証明されることは消費者にとってもいいことは疑う余地はありません。ただし、そのエビデンスを消費者に伝えるメディアは、そのエビデンスのおいしい部分だけを捉えるのではなく、少なくとも全文を読み理解し、従来報告されているエビデンスやそれに関係するエビデンスとの比較評価をし、第3者として中立的な立場で正確にそれを伝える義務と責任があると思います。そしてそれを受け取る消費者も自分で可能な限りそのエビデンスを正確に評価するために積極的にインターネットなどを使って分析し評価しなければいけないと考えます。 好むと好まざるとに関らず、幸か不幸か今の世の中は我々消費者のエゴで作り出された副産物ばかりです。便利、合理的、楽ちんというエゴによって作り出されたモノの評価だけは、自分が責任を持って行うべきではないかと思います。
なぜなら自分の健康は他人に委ねるものではないからです。自分の健康は誰が決めるのでもなく自分が決めるものですから、それを選択する決定権は自分にあり、そこからくるリスクを被るのも自分の責任であることを考えれば、エビデンスとは「そのエビデンスが自分にとって有益なものかどうかの判断と選択は自分にある」ことを考えるべきだと思います。
by nutmed | 2007-10-29 14:04

油の酸化防止にビタミンE

連日テレビで報道されているので皆さんもご存知かと思いますが、アメリカカリフォルニア州南カリフォルニアの山火事は今世紀最大の被害をもたらしているようです。私の個人的な友人知人もこの地域には多く、毎日メールで安否を確認していますが、残念なことにサンディエゴの火災で1人の友人宅が全焼しました。また南カリフォルニアには全米でもサプリメントを製造する工場が多く点在していて、栄養医学研究所で開発し製造を委託している提携工場の2つがもっとも火災が甚大なリバーサイドという地域にあり、1つの工場は今週水曜日に1マイル先まで火の手が迫り強制的に非難勧告を受け本日現在工場は閉鎖中です。CNNの報道では原因は放火のようだということですが、昨今のサブプライムローンで家のローンが支払えなくなった人の仕業ではないかとの声もあがっていますね。

さて、気を取り直して、今日は脂続きで家庭で使うオリーブオイルやフラックスオイルなど、抗酸化作用が高いオイルの保存方法についてです。
これらのオイルは他の植物性オイルに比べ比較的低い温度条件で絞られているものがすくなくありません。その背景には優良な必須脂肪酸を壊さないということが一番です。ただ、このような低温で絞られたオイルも消費者の手に届く前に紫外線や空気によってオイルの酸化が進み、本来オイルが持つ恩恵に十分あずかれない状況があることを覚えておいてください。
最近のこれらのオイルの商品の中には、茶色の遮光性の高いビンに充填されていたり、黒い箱に詰められているものがありますが、折角抗酸化作用を持つオイルの恩恵にあずかるためには、実際に皆さんが購入したあとの保存の状況に留意していただきたいものです。

一番のポイントは「短い時間で使いきれる量を購入すること」です。開封後、できれば1週間以内で使い切ることが望ましいですね。次のポイントは「酸化を防ぐこと」です。これらのオイルは空気に触れることでオイル自体の酸化が進みます。オイルの酸化を防ぐためには短い時間で使いきれるように小分けにする方法などもありますが、保存は必ず冷蔵庫で保存することです。また、キャップの開け閉めは極力少なくするとともに、オイルの酸化防止のためにビタミンEを使う方法をお勧めします。
ABCD社で販売されているような手ごろな価格のビタミンE(ソフトジェルカプセルに入っているもの)で結構ですから購入し、オリーブオイルやフラックスオイルのビンを開封したらすぐに、カプセルに針など鋭利なもので穴をあけ、中身のビタミンEを2-3カプセルほどビンの中にあけてください。こうすることによってビタミンEがオイルの表面に膜となってオイル自体の酸化を防いでくれます。
by nutmed | 2007-10-26 15:19

タラの肝油とメタボリック予防改善

この半年の間のこのブログのテーマを振り返っていただくと1つのキーワードがあることをご存知でしょうか?それは「メタボリックシンドロームの予防改善」です。
いままでコレステロール(LDL)、中性脂肪の抑制、血糖の代謝改善などの優秀な素材について、先日のトコフェロールにいたるまでの素材がそれです。
いよいよ来年から行政・企業をあげてのメタボリック対策がはじまりますが、流行で片付けてはほしくないメタボリック改善予防には、無理なく日常生活で取り入れられる方法が望まれます。
私の立場から言えば栄養素になりますが、決してサプリメント至上主義ではなく、可能な限り食生活からの改善を目指していただくことが重要です。そのうえでサプリメントの摂取を考えていただくわけですが、自分の状態や環境(食事、就労、年齢、性別など)にあったサプリメント素材を選択してもらうことがポイントといえます。

さて、今日は同じくメタボリックシンドローム予防の優秀な素材の1つタラの肝油の再掲載です。
日本ではサプリメントとしてあまり馴染みのないCod Liver oil(タラの肝油)ですが、タラの肝油に含まれる脂質は、多価不飽和脂肪酸(PUEFA)と言って、オメガ-3系脂肪酸であるEPA、DHAが非常に豊富に含まれる油です。PUEFAにはコレステロールが含まれていないだけでなく、血液での有害な脂肪を減少させ働きがあります。タラの肝油にはPUEFAだけでなく、ビタミンA、Dが豊富に含まれており、視力および免疫力の向上のほか、骨や歯の形成、アレルギー性疾患の改善、血圧の安定化、中性脂肪の抑制の作用を持つ素材です。

1、タラの肝油の働き
①血液の凝固を抑制し血液の流れをスムースにする
②血圧の抑制(血圧の安定化)
③血中中性脂肪を抑制し血液の粘度を抑制
④骨および歯の形成促進
⑤視力低下の改善
⑥皮膚の炎症改善、皮膚の細胞の再生を促進
⑦妊娠中に摂取することにより胎児の脳細胞形成促進と若年性糖尿病の予防
⑧リュウマチの炎症緩和と鎮痛作用
⑨血糖値抑制作用
⑩白内障の予防
⑪カルシウムとマグネシウムの吸収を促進
⑫過敏性大腸炎の症状改善
⑬アルツハイマー性認知症の予防
⑭記憶力、集中力の向上

タラの肝油は臭いがありますのでソフトジェルカプセルに充填されたサプリメントが簡単に摂取できる商品と思います。
by nutmed | 2007-10-25 17:49

閑話休題

今日は昼から1泊で北海道釧路に出張してきます。気温は10℃以下とのことなので、一気に冬です!
さて、最近栄養療法の普及啓蒙のためのヒアリングで都内、首都圏のクリニックを訪問することが多いのですが、いくつかの地域で医師会が中心になって「地域住民のサプリメントによる被害調査」なるものが行われているようです。なんでもサプリメントや健康食品を飲んで体に何らかの被害があったかどうかをヒアリングアンケート調査をして、医師会が集計するそうなんですが。
私が疑問に思ったのは、散々メディアで叩かれた最近の健食業界ですから、被害調査をするのは重要なことですが、被害調査をした後はどうするのか?ということです。 実際にヒアリングを受けた住民の方も少なからず被害調査をするのなら、その後その対応でも医師会がしてくれるのだろうと思うのは自然の成り行きですね。ただ、この調査を進めている地域のドクターに聞いて見ると、調査は調査であって、その後の対応を医師会が具体的に何かアクションするということは難しいだろう・・とのことです。では何の目的でこのような調査を行うのか、その目的が不鮮明です。
医薬品の場合には販売された後の「市販後調査」というものが義務付けられていますが、現在の日本ではまさに「いわゆる健康食品」という非常いあいまいな、でも食品として位置づけられているサプリメントや健康食品だけを取り上げて被害調査をして、その後のフォローがないというのはいささか疑問を残すことになりはしないでしょうか・・・
by nutmed | 2007-10-23 09:33

トコトリエノールについて その3

昨日の日曜日は日本サプリメント協会の5期生の講義に青山までいってきました。毎回のことですが、生徒の皆さんには真剣に2時間+αを聴いてもらい、講義するほうも毎回楽しみではあります。

さて、今日はトコトリエノールの3回目です。前回はトコトリエノールが持つコレステロール抑制作用についてお話しました。
ビタミンEを構成するトコフェロールとトコトリエノールにはいくつかの異性体(アイソマー)が存在し、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、それにδ(デルタ)がそれにあたります。LDLコレステロールの抑制作用についていえばトコトリエノールのδ異性体が最も強力で、続いてγ、α、βの順番に弱くなり、α、βにはこの作用がほとんどありません。最近の研究でLDLコレステロールの抑制作用が最も強いδとそれに続くγトコトリエノールには、LDLレセプター(受容体)とコレステロールを合成する酵素をコントロールする作用を持つことがわかりました。
日本同様、メタボリックシンドロームという悩みを抱えているアメリカでは国民の約16%がメタボの対象である可能性が高く、特に中性脂肪が高くなる高脂血症の増加に頭をかかえています。
昨年2006年に発表されたドクターChenらによる研究によると、米糠油に含まれるトコトリエノール(δ)がLDLコレステロールだけでなく、中性脂肪の抑制にも有効であることを報告しており、アメリカでもメタボ改善に米糠オイル(Rice Bran Oil)に注目が集まっています。

考えてみれば日本でもかつては米糠を利用した食材が多く存在し、今で言うところのメタボの背景となる高脂血症や糖尿病、高血圧が少なかった可能性は否定できませんが、海の向こうのアメリカ人がかつての日本の習慣食材に注目していて、その日本人はと言えば西欧食にかぶれてメタボが増えてきたというのは、なんとも皮肉なものです・・・
by nutmed | 2007-10-22 13:23

トコトリエノールについて その2

前回はトコトリエノールの意外な素性についてお話しました。
トコトリエノールが豊富に含まれる素材原料は多いですが、代表的な素材はココナッツ(パーム)ですね。最近の研究でトコトリエノール、特にコレステロールの抑制に効果があるδ-トコトリエノールが豊富に含まれる素材とし、茶褐色の食品着色料として日本でも使われているアナトー(Annatto)という果実のオイルが注目されています。
            こんな果実です・・・
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熱帯性果実なので日本ではまずお目にかかることはないと思いますが・・・

トコフェロールとトコトリエノールの構造を調べてみると、両者には共通の「頭」があります。この部分の構造には抗酸化作用があると考えられています。しかし、この両者は異なる「尻尾」を持っていて、トコトリエノールの尻尾はトコフェロールのものよりも短い構造になっています。トコトリエノールの尻尾にはコレステロールの合成をコントロールする、3ヒドロキシ-3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG-CoA)リダクターゼという酵素の働きを抑える作用があることがわかりました。中性脂肪やコレステロールが高くなるメタボの原因の1つである高脂血症になると医者から処方される「スタチン」系の薬もこのHMG-CoAリダクターゼを抑制する作用を持ちます。
一方、トコトリエノールの長い尻尾にはこの作用は確認されていません。

来年からの日本でも行政が推進するメタボ一掃プロジェクトがスタートしますが、中性脂肪やコレステロールが高い方は、是非このトコトリエノールを積極的に摂取することを考えてみるといいですね。
by nutmed | 2007-10-19 15:14

トコトリエノールについて その1

決して怠け癖がついたわけではなく、このところクリニックでのカウンセリングが続けざまにありまして・・今月は中々更新できずにフラストレーションが溜まりますね・・

さて、今日から数回は昨日アメリカから届いたビタミンEに関するトピックスです。
ビタミンEは最も有名なビタミンの1つであることは皆さんも同意していただけるでしょう。最近でこそ、ビタミンEと言えばトコフェロールといわれるようになりましたが、相変わらずビタミンEはビタミンE単体として捉えられていますね。ビタミンEの詳細な内容成分を見てみると、トコフェロール以外に「トコトリエノール」という成分がビタミンEを構成する成分として存在しています。
トコフェロールとトコトリエノールは非常に似た物質ですが、体内ではそれぞれ異なる働きをすることもわかってきました。例えば吸収について言えばトコトリエノールのほうがトコフェロールよりも早く優れていることや、抗酸化作用については、トコフェロールよりもトコトリエノールのほうが勝っていることが最近の研究でわかりました。
α-トコフェロールは市販されているビタミンEの主要成分として多く使われていますが、2005年にアメリカ栄養学学会誌で発表されたドクターTanらの研究によると、α-トコフェロールはトコトリエノールの吸収を阻害することが報告されています。また、1996年にニュートリションジャーナルで発表された研究によると、トコフェロールにはコレステロールを抑制する作用はほとんどなく、トコトリエノール(特にデルタ-トコトリエノール)にはその作用が多く存在していることが発表されています。
従来からビタミンEの抗酸化作用とコレステロール(LDL)抑制作用が心筋梗塞などの循環器系疾患の予防に有用であることが叫ばれてきました。しかし、市販されているビタミンEサプリメントの多くがα-トコフェロールを中心とするミックストコフェロールを配合した商品で、トコトリエノールが配合されたビタミンEは非常に少ないのが現状です。
私の師匠のDr.ライトや多くの栄養療法に従事するドクターは、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症などいわゆるメタボリック症候群の改善のために患者に処方するサプリメントの中には確かに必ずビタミンEをラインアップしていますが、彼らのビタミンEは市販されているビタミンEとは異なり、トコフェロールとトコトリエノールを成分配合した、いわば「フルスペクトラムビタミンE」とよばれるビタミンEです。
フルスペクトラムビタミンE1カプセル中の成分比率
・d-α-トコフェロール:66.7mg
・γ-トコトリエノール:30mg
・α-トコトリエノール:13mg
・β-δ-トコトリエノール:5mg

2002年にドクターQureshiらが発表した人による臨床研究によると、LDLコレステロールの抑制作用についてトコフェロールとトコトリエノールで比較したところ、α-トコフェロールでは15-20%の抑制作用であったのに対して、β-δ-トコトリエノールでは60%の抑制作用があったことが報告されています。

次回はトコトリエノールの原料素材についてです・・

参考文献
Schaffer S, Muller WE, and Eckert GP. Tocotrienols: constitutional effects in aging and disease. J Nutr. 2005;135:151-4.
Tan B. Appropriate spectrum vitamin E and new perspectives on desmethyl tocopherols and tocotrienols. JANA. 2005;8:35-42.
Qureshi AA, Pearce BC, Nor RM, Gapor A, Peterson DM, Elson CE. Dietary alpha-tocopherol attenuates the impact of gamma-tocotrienol on hepatic 3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase activity in chickens. J Nutr. 1996. 126:389-94.
Mensink RP,. van Houwelingen AC, Kromhout D, Hornstra G. A vitamin E concentrate rich in tocotrienols had no effect on serum lipids, lipoproteins, or platelet function in men with mildly elevated serum lipid concentrations. Am J Clin Nutr. 1999;69:213-9.
Mustad VA, Smith CA, Ruey PP, Edens NK, DeMichele SJ. Supplementation with 3 compositionally different tocotrienol supplements does not improve cardiovascular disease risk factors in men and women with hypercholesterolemia. Am J Clin Nutr. 2002;76:1237-43.
Qureshi AA, Sami SA, Salser WA, Khan FA. Dose-dependent suppression of serum cholesterol by tocotrienol-rich fraction (TRF25) of rice bran in
hypercholesterolemic humans. Atherosclerosis. 2002;161:199-207.
Tan DT, Khor HT, Low WH, Ali A, Gapor A. Effect of a palm-oil-vitamin E concentrate on the serum and lipoprotein lipids in humans. Am J Clin Nutr. 1991; 53:1027S-1030S.
Yu SG, Thomas AM, Gapor A, Tan B, Qureshi N, Qureshi AA. Dose-response impact of various tocotrienols on serum lipid parameters in 5-week-old female chickens. Lipids. 2006;41 (5): 453-461.
Qureshi AA and Qureshi N. 1993. Tocotrienols: Novel hypocholesterolemic agents with antioxidant properties. In L. Packer and J. Fuchs (ed.), Vitamin E in Health and Disease. Marcel Dekker, New York.
by nutmed | 2007-10-18 12:13

コーンシロップ甘味料は子供の糖尿病を増加させる

かなり以前から甘味料として炭酸飲料、スナック菓子、ジャム、ケチャップなどに幅広く使用されているトウモロコシのデンプンから合成された高果糖コーンシロップ(HFCS)については、体内細胞への影響についての研究報告がされています。HFCSの影響で最も懸念されることは、HFCSを甘味料として用いた炭酸飲料には、糖尿病患者の血液中で増加する「反応性カルボニル(reactive carbonyls)」という化合物が多量に含まれていて、組織損傷など糖尿病の合併症に関係するこの化合物によって、特に小児の糖尿病リスクが高まる可能性です。

今年の8月ボストンで開かれた米国化学会(ACS)年次集会で米ラトガース大学食品科学研究室教授のドクターHoらが、HFCSを含む11種類の炭酸清涼飲料について発表した内容は、現代と今後の食生活と生活習慣病のリスクに重い影を落とすことになったようです。ドクターHoの研究によると
HFCSは溶けやすくて甘味が強く、より経済的であるといった理由で、米国ではすべての炭酸清涼飲料に使用されていますが、日本でのHFCSが使われている食品は少なくありません。
ドクターHoによるとHFCSを含む炭酸飲料1缶あたりに含まれる反応性カルボニルは、糖尿病患者の血中濃度の約5倍であることが判明しましたが、一般のグラニュー糖にはこの化合物は含まれていませんでした。一方で、水和(hydrating)を促すスポーツドリンクや高カフェインのエナジードリンクにも多量のHCFSが含まれていることが少なくないため、子供や血糖値の高い人は注意するべきでしょう。
ドクターHoの研究によると、茶に含まれる抗酸化化合物「エピガロカテキンガレート」(EGCG)には反応性カルボニル濃度を低下させる作用があるようで、今後の研究に期待がされます。

ただし、ドクターHoの発表に懐疑的な見方をする研究者もいないわけではなく、米テキサス大学サウスウェスタン医療センター(ダラス)臨床栄養学助教授で米国栄養協会(ADA)広報担当のSandon氏は「今回の研究では、HFCS含有の甘味飲料を飲む小児において、糖尿病リスクが高まると考えられる機序が示されたに過ぎない」と指摘。糖尿病との因果関係は明らかでなく、最終的な結論を出すには時期尚早としている。また、ベス・イスラエル・ディーコネスメディカルセンター(ボストン)のドクターKahnも、今回の研究結果については検証が必要だとしている。
しかし、面白いのは、この2人はドクターHoの研究発表に懐疑的な見方をしているにも関わらず、2人ともに「HFCSの摂りすぎには注意する必要もある」と結語していることです。

皆さんの中にも糖尿病、その予備軍の方が少なくないと思いますが、このHFCSについては私も推奨できない甘味料の1つでもありますから、食品のラベルや情報には注意していただきたいものです。
by nutmed | 2007-10-16 13:04

前立腺肥大とサプリメント その2

週末は5年ぶりに横浜でアレルギー専門の治療クリニックを開設されているドクターと再開しまして、西洋医学ではない自然治癒のアプローチによるこの15年間のアレルギー治療の有効性をみっちり聞いてきました。このドクターが自ら考えた「Life Wheel」生命維持歯車という理論が非常に面白いです。
自律神経 - 内分泌 - 免疫機能 の三者が、真に調和を保つように調節され、内外の変化に対して、迅速に対応しています。 この三者からなるシステムを"生体の恒常性(ホメオスタシス)"と言いいます。 そして、生命維持歯車は自律神経・内分泌・免疫からなるtriangle(三角関係)を、円滑に調節しています。前述しましたが、生体内酸化現象は、生命維持歯車の故障の原因となり、いろいろな病気の発症を招くことになります。AD・花粉症の発症にも影響します。 D・花粉症の増悪因子として、環境要因、身体要因、精神的要因を上げることができます。個々の増悪因子への対応は、勿論大切ですが、根本的には、私達の体内の生体内環境をいかにより良い環境へと改善し、生命維持歯車が力強く回転出来る環境を育成することです。

さて、今日は前立腺肥大(BPH)とサプリメントの2回目です。
前回、ノコギリヤシの発ガンリスクが未解明であるという話をしましたね。私の師匠であもあるDr.ライトを含め栄養療法に従事するドクターの多くがBPHの治療のファーストチョイスとしてノコギリヤシを選択しないことも話しました。
今回はDr.ライトや他のドクターがBPHの治療改善にどのような素材を使っているかについてお話しましょう。
多くのドクター、特にDr.ライトがBPHの治療改善のファーストチョイスとして選択するのは、「亜鉛」と「必須脂肪酸」の組み合わせです。この2つの素材もまたノコギリヤシと同様に5-αリダクターゼ酵素の活性を抑える働きがあります。実際に私もこの6年間、日本のドクターからBPHに有効な素材の相談を受けたときにはこの組み合わせを勧めています。この組み合わせは決して新しいものではなく、1970年はじめのアメリカで既にBPHを対象として使われています。中でも有名な研究報告は、アメリカシカゴにあるCook Country病院のDr.Bushによって行われたBPHの改善に対する亜鉛と必須脂肪酸で、それまでBPHの原因と考えられてきたバクテリア節を覆し、亜鉛と必須脂肪酸がBPHの改善だけでなく予防にも有効であることがAMA(アメリカ医師会)のポスターセッションで発表されています。

Dr.ライトのタホマクリニックではBPHの患者に対して亜鉛については30-50mgを1日2回、必須脂肪酸(EFA)コンプレックスとして、10mgのALA(α-リノレン酸)、10mgのリノレン酸、10mgのアラキドン酸を処方します。場合によっては5000mg/日のFLAXオイルを与えることもあります。ここで重要なのは亜鉛の30-50mgは「エレメント(元素)」としての亜鉛であることなので、通常は硫酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛からエレメントとしてこの量の亜鉛を摂取できるように処方します。
いくつかの文献では、亜鉛も必須脂肪酸も過剰摂取による前立腺がんとの関係が報告されていますから、勿論、長期間の継続過剰摂取は避けなければなりません。今までに報告されている亜鉛摂取の上限に関する研究では、1日あたり100mgが1つの目安であることが報告されています。勿論、人種や体格、症状による差があるためにこれを考慮する必要はあります。

実際にDr.ライトなどの場合には、この組み合わせと量を平均して7-8週間、4週目以降は亜鉛の量を50%落としたものを処方しますが、約70%のBPHの男性では前立腺の肥大が大幅に改善されています。
by nutmed | 2007-10-15 13:17