臨床栄養士のひとり言

ブログトップ | ログイン

<   2011年 01月 ( 16 )   > この月の画像一覧

第990回 カツオ節とヒスチジン

このブログの1000回目が、いよいよカウントダウンに入ります。残すところ10回で1000回記念になります。
このままの調子で進むと、バレンタインデーの14日が1000回目という予定ですが、記録でもあり私にとっての歴史でもある日なので、2月19日(土)を1000回目のブログ登校日にしたいと思います。2月19日は私の五十数回目のバースデーになります。これからこの日が感慨深いものになればいいなと思いますね。
と言うことで、来週からは1000回目のカウントダウンに入るとともに、少しスピードダウンをしますので、しばらくの間ご容赦くださいm(_ _)m

今日のテーマはカツオ節とヒスチジンです。何を唐突にカツオ節?!と思われるかもしれませんね。
カツオ節と言えば、日本人の食文化の中では長い歴史を持ち、東西の日本食には欠かせない「出汁の素」ですね。 
d0070361_1425271.jpg

昔はどこの家にもカツオ節を削るための、鉋(かんな)の削り器があって、味噌汁に始まり和食の出汁は、カツオ節・コンブ・煮干し(ジャコ)で取られていたものですが、今では削り器を常備している家庭のほうが少なくなり、削り器がクイズの問題になるほど今の若い人には珍百景になってしまったようです。
d0070361_14265469.jpg

カツオ節には出汁の源になるアミノ酸のグルタミンが豊富に含まれていますが、そのほか同じアミノ酸のヒスチジンも豊富に含まれています。 最近、ヒスチジンがダイエットに効果があるともてはやされているようで、ネットでヒスチジンと検索してみると、出てくる出てくる! カツオ節を専門に扱っているショップの中には、ヒスチジンを豊富に含むカツオ節をもっと利用して欲しいと、カツオ節deダイエットなる啓蒙をしているところもあるようです。
ヒスチジンにダイエット効果があると言われている背景には、脳内で分泌されるレプチンというホルモンの分泌を刺激する作用があるためです。レプチンはお腹がいっぱいになったことを実感させるためのホルモンであると同時に、脂肪の燃焼を促進させるための作用を持ったホルモンなので、そのレプチンの分泌を刺激する作用を持ったヒスチジンを積極的に摂ることは、ダイエットに有効と言うシナリオなんでしょうね。
おそらく、カツオ節をたくさん摂ることで減量効果があることを、血液検査の数字で詳細な作用効果が報告されているものはないと思いますが、あながち間違ったシナリオではないと思います。 現象論でしかありませんが、実際にカツオ節から摂られた出汁を日常的に、それもたくさん利用している日本人の脂肪の代謝状態や健康状態をみると、確かに十分効果のあるシナリオを継続してきたと言えると思えます。その1つが沖縄県の人、それも若い人たちよりも40歳を超えた中高齢以上の人たちの食生活の変遷をみると、それはあり得る話ですね。皆さん意外に思うかもしれませんが、沖縄県のカツオ節出汁の消費量は国内屈指と言えます。長寿でも沖縄県は常に上位に入りますし、肥満者率の低さでも優秀な県民です。これは決してカツオ節に含まれるヒスチジンだけのおかげだとは言いませんが、偶然はなく、明らかに食生活の食材に原因があり、カツオ節がその中でも大きな要因になっていることに疑いの余地はないでしょう。
ヒスチジンにはレプチンの分泌刺激のほかにも以下のようあ作用があります。
・リュマチ痛の緩和
・うつ症状の改善
・胃酸の分泌促進
・聴覚障害の改善
・有害金属のキレート
・妊婦のつわりの軽減
・アレルギー症状の改善(ヒスチジンはヒスタミンの前駆物質)
・貧血の改善
・高血圧の改善
・消化性潰瘍の改善
・神経性インポテンツの改善(ナイアシンおよびビタミンB6とともに)


日本の伝統食材のカツオ節には、現代人の大きな悩みの1つである肥満改善に、期待するところが多く、毎日の生活に積極的に取り入れてもらいたい食材の1つだと思います。
ただ、そんなヒスチジンですが、過剰な摂取によるマイナスの影響がないわけではないので、要注意です。
ヒスチジンは必須ミネラルの亜鉛と銅と結合(キレート)する作用があるため、過剰な摂取や日常的に亜鉛と銅の不足傾向にある人では、亜鉛不足と銅不足の症状が現れる可能性があります。この点は十分注意していただき、カツオ節を上手に食生活に取り入れるといいですね。
d0070361_14583132.jpg
余談ですが、私の知人の女性が築地のカツオ節卸の店にいまして、料亭御用達の削り節をいただくことがあるんですが、最近はこのカツオ節で、鍋で出汁を取りガラスポットでストックしておいて、毎朝お茶茶碗一杯分のストックを温めて飲んでから家をでます。固形物を食べなくても充足感があるだけでなく、脳がクリアになります。
今週末から本番を迎える受験生にはお勧めの「和ドリンク」ですね!

それでは皆さん、よい週末を!
by nutmed | 2011-01-28 15:01

第989回 筋力アップとうつ病

世の中の大半が、サッカーで日本が韓国に勝利した余韻で湧いているのに、我が家では、連日チャンネルはWowWowに半固定で、メルボルンのオーストラリアオープン一色です。 昨晩は夕飯中にナダルがまさかの準決敗退のLive中継だったので、ワイフが横でワー、キャー始まり、夕食どころではありませんでした(笑)世の中は30日のサッカー決勝でしょうが、我が家は同じオーストラリアでも、テニスの決勝で大騒ぎです。テニスが終わると、3月のフィギュアスケート世界選手権までは、穏やかな日々が戻ってくることでしょう・・

さて、今日は前回までのSAMeで取り上げたうつ病繋がりでトピックスを1つ紹介します。
筋力アップに有効なアミノ酸の摂りすぎが、うつ病のリスクを高めてしまうかもしれないという内容です。
うつ病の栄養療法による症状改善、治療のアプローチでは、ビタミB3(ナイアシンアミド)のメガドース療法の有効性が世界中で報告され、日本でもいくつかのクリニックで行われ効果が出ているようです。
ビタミンB3がうつ病の症状改善に有効である背景には、ビタミンB3が間接的に、うつ症状にかかわるセロトニンの生産量を増加させるからです。以前のブログ参照
セロトニンの原材料となるのはアミノ酸のトリプトファンですが、同じアミノ酸のロイシンを過剰に摂取することによって、セロトニンの生産にかかわるトリプトファンとVB3の代謝が低下することがわかっています。また、ヴァリンというアミノ酸の吸収と代謝も低下します。
さて、ロイシンやヴァリンと言えば、思いつくのはBCAA(分岐鎖アミノ酸:Branched Chain Amino Acids)ですね。 日本でも某薬品系清涼飲料水メーカーがBCAAを商品名にまでして、大々的にPRしていたことがありますね。 あの時にはジム通いの方々や、鏡の前でナルちゃんになってしまう男性諸氏がこぞってBCAAを摂っていました。

そのBCAAを構成するのはロイシン、イソロイシン、ヴァリンの3つのアミノ酸です。以前にロシアの研究チームがBCAAに関して興味深い報告をしています。筋力強化のためにBCAA(分岐鎖アミノ酸)を常飲していたアスリートでは、一般の人に比べうつ病症状が出やすいとい内容の調査報告ですが、この背景として、ロイシンの過剰摂取による、間接的なセロトニン合成の低下の可能性がないとは言えないでしょう。ロイシンは、日常的に食べている食材には、普通に含まれているたんぱく質ですが、一般的には食材だけでロイシンの過剰摂取ということは考えにくいでしょう。しかし、サプリメントや清涼飲料水などのように、ロイシンだけが著しく配合強化された素材を日常的に摂取することによって、過剰摂取に影響がでないとは言えません。
日本でもランナー、アスリート、ジム通いの人までこぞってBCAA飲んでましたね・・
by nutmed | 2011-01-27 12:59

第988回 SAMeの治療効果あれこれ

毎週水曜日は、神尾記念病院でのカウンセリングがあるので、朝5時に起きて、午前6時30分には一度新富町のオフィスへ出てから、カウンセリングに向かいます。ほんの1カ月ほど前までは、朝6時はまだまだ闇の中で、澄んだ朝の空気に月と明けの明星が煌めいていましたが、この時期になると朝6時には東の空が明るくなるのが日に日に早くなってきたようです。寒いけど、肌を伝わって流れる空気が東京でもこんなに新鮮に感じられるのは今の季節が一番でしょうね。早起きすると、何か本当に得をしたような気になるから不思議です。これも年齢のせいなのかな・・

さて、今日はSAMeの3回目です。
アメリカや欧州で、栄養療法だけでなく精神神経領域におけるSAMeを使った治療で、最も有効例が多いのは、おそらくうつ病およびうつ様の症状だと思います。事実、欧米では一般的なうつ病治療のための抗うつ薬の副作用を軽減することや、抗うつ薬に反応し難い患者に対して、SAMeと抗うつ薬を併用すること、またSAMeの単独使用で症状の改善に有効であることがたくさん報告されています。
アメリカのテネシー州ブリストルという街で、栄養療法クリニックを開業して20年になる私の友人のドクターは、2004年からうつ病または軽いうつ症状をもった患者に対して、いわゆる抗体うつ薬を一切処方せず、SAMeやDMAE(ジメチルアミノエタノール: Dimethylaminoethenol )を使うことで、副作用の軽減や治療効果の向上を見ています。
このドクターは、1日あたり500-1,500mgのSAMeを2-3回にわけて患者に飲んでもらっていますが、抗うつ薬に多い「口の渇き、吐き気、過食、体重増加、便秘、手の振るえ」などの副作用はほとんど現れず、治療経過も非常に良好で、早い患者では、1カ月ほどで生活上の変化を感じる人もいるそうです。
2010年にハーバード大学とマサチューセッツ総合病院の共同研究チームによる発表では、抗うつ病薬として最も一般的なSSRI剤に加えて、1回あたり800mgのSAMeを1日2回服用してもらったところ、従来SSRI剤だけでは症状に変化が見られなかった患者の中の約30%に、症状のポジティブな変化が見られたことを報告しています。
SAMeはうつ病だけでなく、アルツハイマー性痴呆症、パーキンソン病の治療および予防にも有効であることが報告されています。特に、この2つの症状では、脳内のSAMeの量に比例して症状が悪化していくことが報告されていて、SAMeの量が低いことがアルツハイマー性痴呆症、パーキンソン病に直接的に関係がある可能性があります。アルツハイマー性痴呆症、パーキンソン病の予防として、SAMeを1日あたり200-4
00mgを継続摂取することで予防効果が、また1日あたり500-1600mgのSAMeを継続服用することで、症状の改善に有効であると報告されています。
また、SAMeは肝臓におけるアルコールの分解能力を向上させ、肝臓の機能を高める作用があることもわかっており、アルコール性の肝硬変の予防にも有効だと考えます。
by nutmed | 2011-01-26 06:52

第987回 SAMeについて  その2

昨晩の東京近郊も雪交じりの雨が少し降ったようですが、お湿りまではいかなかったようです。連続乾燥注意報も記録的となっていますので、火の取扱いはもちろんですが、喉や鼻の粘膜を乾燥させることによってウィルスの感染リスクを高め内容に、適度は湿り気を与えてあげてくださいね。

さて、今日はSAMeの2回目です。
SAMeは人間の体内にも存在するアミノ酸の種類の1つで、グルタチオンを作るさいに重要な役割をになっています。グルタチオンは脳や肝臓で合成されますが、2008年の9月のブログで、グルタチオンとSAMe、その素材となるホモシステインのことを説明しているので、そちらを参考にしてください。
以前から私のブログでは常連のテーマである、脳内の情報伝達神経ホルモンのセロトニンや血圧、脈拍鼓動、不安恐怖に作用するノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を総称して、モノアミンと呼びますが、このモノアミンを構成している素材のが、葉酸、ビタミンB12でありそしてSAMeです。つまり、SAMeは神経の働きには不可欠な物質でもあるということです。

この10年ほどの間に、欧州やアメリカでSAMeがアンチエイジングの素材として注目され話題になっていますが、その背景には、SAMeが脳の機能、特に記憶、集中力、不安、睡眠など、年齢とともに低下または増加する症状の予防に対する有効性が高いということがあります。
1980年代初頭には、SAMeがうつ病、アルツハイマー性痴ほう症、健忘症など、神経の働きにかかわる症状の改善に有効性が高いことが、いくつかの研究報告によって明らかにされていおり、実際に初期のうつ病患者の症状の改善や、物忘れが頻繁になってきた状態の改善に高い効果をSAMeは示しています。
2000年の8月、イギリスのロンドンにあるキングスカレッジ病院(King's College Hospital)神経科の研究チームが、うつ病と診断された患者の骨髄液(骨髄の中の液体)に含まれるSAMeの数値を検査したところ、一般の人に比べて著しく低かったことを報告しています。SAMeが脳の働きに重要な役割を担っていることうを、マウスによる検討で解明した基礎研究が、1989年に九州大学薬学部の研究チームが発表していて、この研究報告がEU諸国やアメリカでSAMeの有効性を証明する背景になったとも言えます。

先週金曜日のブログでも紹介しましたが、私が青山外苑前クリニックで3年にわたって栄養カウンセリングケアしている女性が、SAMeを飲み始めて精神的に楽になり、以前よりも明らかにポジティブになったりと、私が栄養カウンセリングを行ってきたクライアントの中にも、SAMeの効果を実感している方は少なくないですね。
by nutmed | 2011-01-25 10:15

第986回 SAMeについて  その1

昨晩は東京近郊でも雪交じりの雨が降ったようですが、本格的なお湿りは当分はお預けの東京です。

さて、今日から最近日本でも話題のSAMeという素材について紹介します。
ここに来て、日本でもストレスなどによる精神神経の働きにかかわる症状で悩む人が増え、それに伴う薬物療法で処方される向精神薬の副作用や、薬が有効でない(ノンレスポンダー:薬に反応しない)ケースのことがマスコミメディアでも紹介されるようになりました。
中でも、「うつ病」に一番スポットライトがあてられ、良くも悪くも大きな話題になったことは間違いないことだと思います。
いわゆるうつ病に似た症状は、昨年秋に紹介した男性ホルモンのテストステロンの低下や、女性ホルモンの変化、甲状腺ホルモンのバランスなど、ホルモンの影響によって現れる症状もあるため、一律にうつ様の症状に対して、原因背景を確認せずに抗うつ薬を処方することの是非も併せて社会問題になりはじめています。
ここ数年、うつ症状に対して多く処方されているのは、依然として選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)と呼ばれる薬だと思います。SSRIについては、副作用に注意する必要があり、暴力的な行為にはじまり、体重増加、過食、拒食、異常性欲や自殺願望などが世界中で数多く報告されています。
一方で、SSRIに対して全く反応しない、いわゆるノンレスポンダーと呼ばれる人たちも多いことも事実です。
2004年に、ハーバード大学とマサチューセッツ総合病院の共同研究チームがJournalof Psychopharmacolに発表した報告は世界中の興味を引くに十分なものでした。
研究チームが、うつ病と確定診断された患者の中で、SSRIに反応しなかった患者に対して、SAMe(S-adenosylmethionine:S-アデノシルメチオニン)とSSRIを一緒に飲んでもらうことで、SSRIに無反応だった患者の20%ほどが反応するようになったという報告です。この研究はその後も継続され、2010年に同じ研究チームによって、American Journal of Psychiatry誌に、SAMeを1回あたり800mgを1日2回、SSRIと一緒に飲んでもらうことで、副作用が軽減された患者が現れ、SSRIに反応しなかった患者が反
応するようになったことを報告しています。
SAMeはアメリカよりも欧州でポピュラーな素材で、うつ様症状など、精神神経の働きを改善、予防する目的で使われてきましたが、この5年ほどの間に、アメリカでもポピュラーになってきた素材の1つです。
by nutmed | 2011-01-24 13:21

第985回 週末歳時記 いろいろ・・

昨日は今年はじめての青山外苑前クリニックでのカウンセリング日でした。もう3年ほど健康管理のために、3世代にわたってご家族全員の栄養カウンセリングを行っているクライアント家族がいまして、ここの若奥様の精神的なストレス改善と集中力とモチベーションアップの目的で、昨年9月からSAMe(S-adenosylmethionine:S-アデノシルメチオニン)を飲み始めていただいていたところ、本人が自覚しただけでなく、家族や周囲の友人にもその変化がわかるほどのモチベーションアップと集中力向上の大きな成果があり、助かったという喜びの報告が昨日ありました。 このSAMeについては来週から数回にわたって連載紹介する予定です。

つい最近強烈なインパクトを受けた女性シンガーについて紹介させてください。、私は洋楽専門で、1970年代はロック小僧としてギンギンのヘビメタ、グラムロックから、バートバカラックからマービンゲイまで、ありとあらゆる洋楽に傾倒していました。中学時代は授業をサボって後楽園球場(野外でしたね)に、雷雨のグランドファンクのコンサートにも、武道館のディープパープルにも行きました。心に響く音楽や歌に巡り合うことがあまり多くは無かったこの十数年ですが、先週末にFM YOKOHAMAから流れてきた、無垢でいて、気だるい歌声を聞いて、懐かしさとともに新鮮な感覚を味わいました。早速ネットで検索してみると、ロンドン在住のパキスタン人シンガー「Rumer (ルーマー)」という女性であることがわかりました。ネットで彼女を紹介しているコメントの多くが、キャロル・キングやジョニ・ミッチェル、カレン・カーペンターを彷彿とさせる歌声と書いていますが、私にはまったく別物の新鮮な歌声に聞こえます。昨年イギリスのヒットチャートで1位になったアルバムはすでに日本でも紹介されていますので、今年は日本でも話題になることと思います。

さて、今日最後の話題は、、臨床栄養学の実践教材としては世界的に認知された“クラウ スの書”の完全翻訳本である「食品・栄養・食事療法事典」の紹介です。
d0070361_1224162.jpg
d0070361_12244621.jpg
待ちに待ったということでもありませんが、日本語に翻訳された臨床栄養学にかんする原書で、この本は、情報量も内容もすばらしい本であることは間違いありません。 出版は昨年らしいですが、実は私もつい最近まで中身に良く目をとおしていなかったところ、私のクライアントでもあり、このブログのヘビーユーザーでもある女性から、「佐藤先生のブログの内容は、素人の私にはまだ理解できない部分が少なくないので、何か手引書になるような本があったら紹介してください」と言われたんが昨年秋でした。ネット書店でも販売されているので見ていただけるとわかりますが、決して安い本ではないのに(定価は福沢諭吉が3人ほど飛んでいきます・・)私の持っているこの本を5分ほど眺めて、購入を決意しました。1ヶ月後くらいに彼女からメールがあって、「この本は高いのが難点ですが、私には非常に有意義な本です!佐藤先生のブログも、この本が来てからは、理解力は確実に2倍以上は向上しました」とのことで、私も紹介した手前じっくり中身を改めて見てみると、監修されている方々のセンスもいいのでしょうが、臨床栄養学をより深く理解したい人、栄養士の人、鍼灸やカイロプラクティクス、マッサージ、アロマセラピーなどの施術にともない栄養やサプリメントのアドバイスをしたいと思っている人たちには、日本語で書かれた書籍のなかでは最優秀書と言ってもいいと思います。
今後、原書の改定に伴って翻訳のほうも改定版が継続して出版されることを望みますが、現状では私もお勧めの1冊ですね。一般の方から見れば、本を買う値段としては、確かに勇気のいる値段かもしれませんが、目的意識がはっきりしている人にとっては、自分への投資金額としては破格かもしれませんね。

明日から週末です。 次の1週間のために、充実した2日間にしてください!
Refresh, Enlightenment & Charge !
by nutmed | 2011-01-21 12:49

第984回 メトホルミン 最終回

思いがけない後部衝突事故から48時間経過して、首の張りはなくなり、背中の張りもほとんど感じなくなりました。バイク乗りの友人の整形外科医のアドバイスに従って、首は固定するのではなく、むしろラジオ体操ほどの軽い負荷稼動をしています。

さて、今日はメトホルミンの最終回です。
数回にわたって紹介してきましたメトホルミンですが、今後も世界中からメトホルミンの新たな作用効果の報告があるものと思いますし、この日本でもいくつかの施設で、がんの治療や予防にメトホルミンを積極的に処方するドクターが出始めているようです。

薬というカテゴリーにありながら、ハーブとして使うことができるメトホルミンは、症状や現在服用している薬、またその他のハーブやビタミンミネラル、アミノ酸を、知識を持った専門家のアドバイスに基づいて上手に使うことで、有効な素材であると言えます。
ただし、他の薬やビタミンミネラルなどのサプリメントと同様、メトホルミンの服用に際しては注意するべきことがないわけではありません。 最終回の今日は、その注意点を紹介します。

乳酸の蓄積
もともとメトホルミンが一時的に世界中のドクターから敬遠された原因の1つになったのが「乳酸」でした。ご存じのように、乳酸という物質は、人間にとって無くてはならないものではありますが、過剰に蓄積することで、筋肉疲労を助長することがあります。最近の研究では、十分な酸素を供給することでメトホルミンを服用しても乳酸は蓄積しにくくなることが報告されていますので、酸素が不足するような環境を作らないことが大切です。例えば、暖房器具、特に燃焼暖房器具を使う場合には、部屋の喚起を小まめに行い酸欠状態を作らないことが大切です。また、風邪や花粉症で鼻つまりを起こすことで、空気の通り道が制限されるため、思いのほか酸素不足に陥ります。
乳酸が少しでも蓄積すると影響のある以下の症状を持っている方も、メトホルミンの使用には主治医と相談をするべきでしょう。
・心不全の経験者および治療中
・腎不全
・肝臓機能障害
・一部の脂質異常症改善薬(フィブラート系薬剤)の服用者

その他の注意
・インスリン非依存性糖尿病(Ⅰ型糖尿病)患者ではメトホルミンは使用するべきではありません。
・甲状腺機能低下症またはその可能性のある方
 橋本病をはじめとする甲状腺機能が低下している人では、メトホルミンを服用することによってTSH(甲状腺刺激ホルモン)が低下するという報告があります。
・高齢者
・血中クレアチニン高値の場合
by nutmed | 2011-01-20 13:10

第983回 メトホルミン最近のトピックス

昨日は朝から車の事故に遭いまして1日大変な目に遭いました。午前8時ころ、いつものように首都高速に入ろうとしていた路で、これもいつものような渋滞に遭遇し、車が停車した途端後ろから来た車に追突され、その勢いで私の車が前の車に追突する、玉突き事故でした。幸いにも追突される前にバックミラーで後方の車のスピードが速すぎるなと気付き、追突されるかもしれないと思い背中をシートに押しつけて首は前に曲げていたので大きな怪我はなかったです。念のために救急車が呼ばれ、近所の病院で検査したところ、外傷性頚部症候群(最近は「ムチウチ症」とは言わないそうです)には至りませんでしたが、背中と首の張りがあったので、医師から1日休養するようにと指導されて1日おとなしくしていました。

さて、気を取り直して、今日はメトホルミンの最近のトピックスです。
今まで紹介してきたように、メトホルミンという薬の可能性は、がんの治療や予防にまで及ぶ機能性が見出されていますが、その根底には、50年以上も前に開発されたメトホルミンの主要成分であるグアニジンは、元々ゴーツルー(Goat’srue)と言う植物の花から抽出されたハーブの機能性であり、おもにインスリンの作用に関わる機能であることが、今日の研究の基礎になっています。今後もメトホルミンの研究は継続されていくと思いますが、栄養療法の中でメトホルミンを上手に使うことで、その有効性は高まると考えます。

それでは最後にメトホルミンの最近のトピックスを紹介ます。
アンチエイジングのサポート機能
皆さんの中には「カロリーリストリクション(calorie restriction)」「カロリー制限食」という言葉を聞いたことがある人も少なくないと思います。「健康で長生きする秘訣」とも「究極のアンチエイジング」などとも言われ、日本でも老化抑制やアンチエイジングにかかわるドクターや学会が1年ほど前から盛んに連呼していますね。簡単に言えば、カロリー(おもに炭水化物)を制限した食事を継続することによって、がん細胞が増殖するときや、細胞の老化に働くmTOR (エムトール:mammallian Target Of Rapamycin)という物質の働きを低下させることができるというもので、この3年ほどの間にいくるもの研究報告がされています。
メトホルミンには、このmTORの働きを阻害する作用があることが2010年に報告されていますが、実際に動物と人間の臨床検討のデータをみる限りでは、食事と運動療法に加え、メトホルミンを使うことで、細胞の必要以上の老化を抑える可能性は高いと思います。

肥満改善
日本の若い女性でも最近増えている多嚢胞性卵巣(PCOS)という症状の治療に、メトホルミンが処方されることが少なくないようようですが、PCOSで使われるメトホルミンの有効性の1つに、体重の増加による肥満を抑える作用があります。この背景には、メトホルミンの持つインスリンの抵抗性の抑制と過剰なインスリンの分泌を抑える作用、それに上記でも紹介していますが、メトホルミンがもつカロリーの吸収を抑える作用があると考えられます。アメリカでは、メタボリック症候群の肥満改善のために、メトホルミンを処方する栄養療法のドクターも少なくありません。

C型肝炎の治療
依然として増え続けているC型肝炎ですが、その治療にはインターフェロンが使われています。以前に比べて格段に副作用が少なくなったとおは言え、その副作用に悩む患者さんは少なくありません。
最近の研究報告では、メトホルミンにC型肝炎ウィルスの増殖を抑える働きがあることをイギリスの大学が発表していて、今後さらなる検討が期待されているところです。

次回はメトホルミンの最終回、メトホルミンの使用についての注意点です。
by nutmed | 2011-01-19 07:57

第982回 メトホルミンの膵臓と大腸がんの抑制作用

この週末は今年一番の寒波来襲で、全国的に冷凍庫を思わせる気温に加え、各地で降雪が思わぬ影響を与えてしまったようですね。その1つが全国センター試験だったようです。受験生はこれからがラストスパートの追い込みです。体調を万全にしてください。

さて、今日はメトホルミンの膵臓と大腸のがん抑制作用についてです。

膵臓がん
膵臓は、人間の体の臓器の中でも比較的限界ギリギリまで働いてくれる反面、異常が中々見つかりにくい臓器でもあります。「物言わぬ臓器」とか「サイレントオーガン」なんて呼び方をされることもあります。膵臓のがんが見つかった場合、その進行度合はかなり進んでいることが多く、生存率はかなり低いがんでもあります。
また、膵臓の細胞ががん化する原因の1つに、インスリンがかかわっていることもわかっており、過剰なインスリンの生産と分泌を抑えることも、膵臓がんの予防になることが報告されてきました。以前から早期発見が重要なポイントと言われ続けているがんでもありますが、進行が早く、治療や予防も早期が決めてになるだけに、手ごわいがんでもあります。 2009年8月、アメリカのUCLA(カリフォルニア大学LA校)の分子生物学研究所のチームの研究発表は、予防や治療が難儀な膵臓がんに朗報をもたらしました。 以前から、膵臓がんの成長と進行には、インスリンに似た成長因子(IGF-1)と、あるたんぱく質(Gタンパク)がかかわっていることが分かっていました。彼らは、IGF-1とGタンパクの作用をメトホルミンが阻害する働きを持っていることをつきとめました。このメカニズムとは別に、メトホルミンによって膵臓のがん化した細胞の寿命が短くなることも、2009年の8月に発表されたテキサス大学の研究チームによって報告されています。

大腸がん
大腸がんは、今世紀になって世界中で激増したがんの1つですが、その背景には食事内容やストレスがあると言ってもいいかもしれません。その増加は先進国だけでなく、発展途上国でもすでに死因の第2位まで増えていることを見ても、食事内容の変化が大きな影響を与えていることはわかります。
以前から大腸がんの進行とがん細胞の成長には、インスリンに対する抵抗性の有無、AGEs(糖化最終産物)
の関係を研究し報告してきた研究者は世界中にもたくさんいて、糖尿病患者が一般の人に比べて大腸がんの発症リスクが高くなる背景には、インスリンと糖化という、「糖のコントロール」にかかわる機能に影響を受けることが報告されてきました。 この日本でも、2005年に久留米大学の研究チームが、糖尿病患者の糖化作用が大腸がんの発症リスクを上げる可能性を報告しています(Yamagishi S, Nakamura K, Inoue H, Kikuchi S, Takeuchi M. Possible participation of advanced glycation end products in the pathogenesis of colorectal cancer in diabetic patients. Med Hypotheses. 2005;64(6):1208-10.)
メトホルミンをテーマで扱ってきたここ数回の中でも紹介していますが、メトホルミンにはインスリンの抵抗性を低くして、インスリンに反応することを促進すす作用のほかに、過剰に分泌されたインスリンを抑える働きがあります。したがって、大腸がんの発症を抑え、進行を抑えるために、メトホルミンは有効であるということです。
by nutmed | 2011-01-17 12:43

第981回 メトホルミンのがん細胞抑制の背景

今日の午前中、以前ブログでも紹介したことのある、食物耐性の確認検査として有効な、IgG抗体検査を、アメリカの検査施設に仲介して発送し、日本語で報告書を作成するサービスを行っているアンブロシアという会社の女性社長にお会いしました。このような検査サービスビジネスを行っている、それも女性の経営者ということだったので、どんな方だろうと思って会いましたが、思った通り、海外(豪州)で経営学を学んできた女性で、ビジネスセンスのいい方でした。たぶんいずれIgG抗体検査の普及と啓蒙について、協力をしていくことになると思います。

さて、今日はメトホルミンが持つがん細胞の抑制作用の背景についてです。今日は最初にかなり難しい話になるかもしれませんが、これを理解してもらえるとメトホルミンの持つ働きの骨格がわかると思いますので、ついてきてくださいね。
メトホルミンの持つ糖の代謝コントロールの働きの背景には、AMPK(AMPキナーゼ:アデノシン1リン酸によって活性化される蛋白質のリン酸化酵素)という酵素がかかわっていることが10年ほど前にわかりました。ここでは難しいことは覚えなくても結構ですから、このAMPKが細胞内のエネルギーバランスの変化を感じるセンサーであると覚えてください。
AMPKは、血糖が高くなったり、インスリンが過剰に分泌されることで、細胞のエネルギーのバランスが崩れることを感知し、そのバランスを取るために様々なたんぱく質や酵素などに働きかけますが、メトホルミンもその1つで、インスリンに対する抵抗性を抑えたり、過剰なインスリンの分泌を抑えたり、またインスリン様成長因子1(IGF-1)を抑えることで、2型糖尿病の改善の機能を持っています。
メトホルミンの働きにはもう1つ重要なものがあり、糖分やたんぱく質の過不足によって体内の細胞のエネルギーバランスが崩れ、それを感知したAMPKが活性すると、メトホルミンががん細胞の発育を抑える働きをスタートさせることがわかってきました。ここで細胞ががん化し、がん細胞が増殖するときに働くmTOR (エムトール:mammallian Target Of Rapamycin) なる物質が登場しますが、これは頭のどこかに記憶していただく程度で今回はいいでしょう。
メトホルミンに脂肪の蓄積を抑えたり、脂肪の燃焼を盛んにする作用があることも多数報告されていますが、その働きの背景にもAMPKによるシグナルがかかわっています。
それではメトホルミンの具体的ながん細胞への関与を見てみましょう。

前立腺がん
前立腺がんは、この30年ほどで増加している男性特有のがんです。2004年のCrinical Cancer Research誌、2008年のカナダのマクギル大学からの研究発表で、前立腺がんの発症リスクと、インスリンに対する抵抗性が高い(インスリンが出ても血糖が下がらない)ことには深い関係があることがわかりました。また、このことから、前立腺がんの予防には、過剰にインスリンを高くさせないことが有効であることもわかりました。 つまり、インスリンに対する抵抗性が高い人が多い2型の糖尿病男性患者では、一般の男性に比べて前立腺がんの発症リスクが高くなるということでもありますが、一方で、従来から2型糖尿病患者に血糖を下げる目的で処方されている、「インスリンをもっと作って分泌させる薬」や直接インスリンを注射する治療方法は、場合によっては適切な治療法ではないケースもある可能性があるということです。

もう1つ、メトホルミンには脂肪細胞で作られるアディポネクチンと言うホルモンに非常によく似た作用があることです。アディポネクチンは2008年12月にテーマとして紹介していますのでそちらを参考にしてください。
アディポネクチンが少ないことと肥満には深い関係がありますが、メトホルミンにはアディポネクチンに似た作用があるため、血糖のコントロールだけでなく、脂肪の代謝を促進する作用があることが報告されています。
by nutmed | 2011-01-14 17:50