めっきり秋の様相が広がりはじめたこの頃ですが、一方で、この5年ほどの間、ホン若と穏やかな春と秋の季節感が昔に比べて少なくなったと感じるのは私だけではないのでは。ここ数年で毎年その傾向が強くなり、暑いか、寒いだけの季節になりつつあるようで、寂しさだけでなく恐怖さえ感じます。

さて、今日は、知人の紹介でこの6月から栄養療法カウンセリングを行っている、43歳の2型糖尿病男性について紹介します。
5年前に2型糖尿病と診断を受け、食事療法に加え、血糖降下剤を飲んで治療を続けてきているこの男性は、いわゆる肥満体形ではなく、中肉中背の均整のとれた体形の方です。私のところに紹介されてきた時には、インスリン抵抗性の背景が疑われたこともあり、食事だけでなくサプリメントの指導で、インスリン抵抗性を抑えるビタミン、ミネラルに加えて、機能性ハーブを摂っていただくよう勧めています。
糖尿病のケアをしている内科の主治医から処方されている薬は、ビグアナイト系のメトホルミン(薬剤名:メトグルコ)を3年前から服用しています。 この1年は、食事療法の成果もあって、糖尿病のモニタリング指標となる血液検査のHbA1c(ヘモグロビンA1c)の数値も6.2%くらいを維持しています。私のところに紹介された背景には、この男性が、今年の6月から異常に疲れるようになり、特に階段の昇降りや、重い荷物を持って距離を歩くことで異常に疲労感と倦怠感が押し寄せてくるようになったため、副腎疲労の可能性があるのではないかとことがありました。 男性の主治医は栄養療法に理解も興味もある医師で、早速男性のだ液コルチゾールの検査をお願いしたところ、結果は、副腎の疲労をうかがわせる数値ではあるものの、極度に副腎の疲弊を疑うような数値ではありませんでした。
この段階で、主治医と相談し、念のために貧血の可能性を考えて、血液検査を行ってもらいました。結果から、中程度の大球性貧血の可能性がわかりました。大球性貧血は 進行のスピードは比較的遅く、進行に合わせて体が順応することから、はじめは貧血症状がみられないこともあります。症状としては、息切れ、疲労感、全身の倦怠感、頭重感、顔面蒼白などが現れます。 主治医と男性本人には私からお願いして、ビタミンB12の状態を調べた方がいいことを話し、血液中のビタミンB12、葉酸、ホモシステイン及び尿中のメチルマロン酸の検査を行ってもらいました。ビタミンB12の体内での吸収と代謝を正確に知る場合には、血液中のビタミンB12を検査するよりも、ビタミンB12の代謝物としての、尿中に排泄されたメチルマロン酸を検査確認する方が的確にビタミンB12の動向が確認できます。しかし、残念なことに現在では、日本の検査センターでメチルマロン酸を検査分析してくれる施設は皆無で、アメリカまで送って検査をするしか方法がないことは非常に残念なことです。決して手技が難しい検査ではなく、歴史も古い検査なのでコストも安い検査にも関わらず、現在の臨床医学では、ビタミンB12の過不足からくる症状の背景を疑う医師も少なく、メチルマエオン酸の検査になど誰も目を向けなくなったようです。
この男性の検査結果ですが、結論から言うと、明らかにビタミンB12の不足が疑われる数値が分析され、大球性貧血の確定ができました。 主治医にお願いして、男性には1カ月間、毎週500マイクログラムのビタミンB12の筋肉注射を行ってもらったところ、筋肉注射をした日から3日間ほどは疲労感が全くなくなるが、その後は次の注射の日までは再び疲労感が襲ってくるとのことでした。
一方で、この男性の食生活を見ても、ビタミンB12が含まれた動物性のたんぱく質が極端に少ないわけでもないことから、今度は私のブログでもおなじみのレモン水を使った胃酸自己チェックを行ってもらい、ビタミンB12と鉄、葉酸の吸収には不可欠な胃酸の状態を調べてもらいました。結果は、胃酸が少ない状況ではありませんでした。 主治医と相談し、男性のビタミンB12が不足する原因は何か悩んでいたところ、過去の論文検索をしていると、男性が服用しているメトグルコという薬の成分が、ビタミンB12の吸収を抑制するという研究論文をいくつか見つけました。2000年にアメリカ、ニューヨークにあるマウントサイナイ医科大学の研究チームに夜報告(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10977010?dopt=Abstract)を皮切りに、その後6年間にわたり、毎年、様々な大学の研究者によって、メトグルコ(メトフォルミン)がビタミンB12の吸収を抑制することが報告されています。
全ての論文を見ると、メトグルコ(メトフォルミン)を服用している患者の全てにビタミンB12の不足が見られるわけではないものの、30%ほどの患者でビタミンB12不測の症状が現れていることがわかりました。
早速、主治医に相談して、この男性に処方しているメトグルコ(メトフォルミン)を止めて、別な血糖降下剤に変更してもらいました。
先週金曜日、メトグルコ(メトフォルミン)の服用をやめて2週間目の男性のカウンセリングを行いましたが、この1週間ほどは疲労感もダルさもなくなり、体を動かしても不安が無いとのことです。10月中旬には再度メチルマロン酸ほかの検査を主治医にお願いしてあるので、検査数値がどのように変化しているかが今から待ち遠しいです。
メトグルコ(メトフォルミン)は、日本では2型糖尿病の患者への処方薬としては、ポピュラーな部類には属さない薬かもしれません。しかし、最近2型糖尿病治療のターゲットにもなりはじめた、インスリン抵抗性の改善効果は高い薬のため、処方されている人は少なくは無いでしょう。メトグルコ(メトフォルミン)を服用している患者さんで、この男性のような疲労感、倦怠感などがある場合には、主治医に相談し、大球性貧血とその背景にあるビタミンB12の吸収抑制を考えてみるといいのではないかと思います。
by nutmed | 2013-09-30 14:27

昨年あたりから日本でも「有識者」の間でもてはやされているカロリス(カロリー摂取抑制:Calorie Restriction)ですが、この最大の注意点は筋肉ボリュームの減少にあると言ってもいいかもしれません。これはカロリスだけの話ではなく、サプリメントや健康食品に頼る減量プログラムも同じですし、果ては、癌細胞の病、腎不全、AIDS,重度のやけどの背景にある状態でもあります。
一方で、アスリートやジム通いの筋力アップ志向の強い人たちにとって、筋肉量アップは必須項目で、日々プロテイン、BCAA(ロイシン、イソロイシン、バリン)などの筋力増強に期待が持てるサプリメントの摂取に余念がありませんね。
ところがこれらのプロテインやアミノ酸に関して言えば、期待通りの効果を実感できた人は想像以上に多くは無いのではないかとも思います。
この数年の間、アメリカやカナダで筋肉の増量ではなく、筋肉の減少を押さえるコンセプトが注目されはじめ、新たな機能性素材として注目されているのが、ウルソル酸(Ursolic Acid)です。
ウルソル酸、ursolic acid)は、様々な種類のがん細胞の増殖を阻害することが報告されている機能性成分で、がん治療にも有望視されている素材でもあります。
アイオワ大学の研究チームによるマウスと、人におけるウルソル酸投与の、筋肉消耗や筋肉委縮の予防の検討によると、高齢化社会における加齢性および病中の消耗性筋肉量低下に備える機能性素材として期待が持てると考えます。
ウルソル酸には、インスリンの働きに作用することで、筋肉への糖分供給を促進する可能性が考えられています。事実、ウルソル酸を投与したマウスでは、血中中性脂肪、血糖値が低下していることが報告されています。
ウルソル酸は、リンゴの皮の部分に豊富に含まれているほか、バジル、ビルベリー、クランベリー、ローズマリー、ラベンダー、オレガノ、タイム、サンザシ、プルーンなどにも含まれていることが確認されています。
昔から世界中で、「健康のために1日1個のリンゴで医者いらず」と言われている背景や、病中病後の回復期に皮ごとすり下ろしたリンゴが重宝されてきた背景には、ひょっとするとこんなウルソル酸の存在があったのかもしれませんね。
by nutmed | 2013-09-18 10:05

今日は、メタボリックシンドロームを肇、2型糖尿病、肥満の人では、癌のリスクが高くなるという研究発表の紹介です。
2型糖尿病や肥満など、代謝性疾患を持つ人は、一般の人に比べて乳房、肝臓、大腸や膵臓癌を含む特定の悪性腫瘍のリスクが高いことは以前からの研究で報告されてきたものです。 何故これらのインスリンに強い抵抗性を持ち、インスリンの働きが抑制されている人たちの体内で、癌が活発に増殖するのかについての原因背景が不明でした。
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アメリカニューヨーク州にあるマウントサイナイ医科大学の研究チームが、ショウジョウバエを使った実験によって、特定の組織細胞の癌が、糖分を積極的に吸収して増殖をすることを2013年8月に報告しています。
2型糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなどの、炎症をともなうインスリン抵抗性が強くなる人の体内では、血中の糖分が細胞に取り込まれるために機能するインスリンに抵抗性を持つことから、癌細胞の増殖に必要な糖分の供給が滞ることになるはずなので、癌細胞の増殖は低下してもいいはずになるわけです。
この研究発表を見ると、インスリン抵抗性を持つッショウジョウバエでは、糖分が高濃度になった場合に、癌細胞の遺伝子に変化が起こり、癌細胞自身が積極的に糖分の取り込みを促進するように変化を起こす可能性が高いことを突き止めました。ショウジョウバエに高タンパク食餌を与えていた時には、この変化はおきませんでしたが、高濃度の糖分の食餌に変えた直後に、癌細胞による糖分の取り込が活発になり、癌細胞の増殖が起きることがわかりました。
研究チームは、この現象が人の体内でも同様に起きることを人の細胞を使って明らかにしています。

この報告を考えると、正常な細胞のエネルギー源にもなる糖分を制限するような、糖質制限や低炭水化物食材でのコントロールをする以前に、インスリンの作用が抑制されるおうな炎症をともなうインスリン抵抗性を改善するとともに、特にリスクグループとなるメタボリックシンドロームの生活改善をすることが優先課題として考えられるべきだと思います。
日本ではすでに死語になりつつあるメタボリックシンドロームについては、高齢化が一段と高まるいまだからこそ、食生活と生活習慣の改善見直しに注目するべきではないかと思います。
by nutmed | 2013-09-13 17:12

今日はビルベリーの機能性についてです。
アントシアニン豊富なビルベリーエキスには、目の機能、特に明彩機能の向上作用があることが以前から報告されています。

ビルベリーエキスには食後血糖を硬化させる作用があることは以前からもたびたび報告されてきましたが、2013年5月にイタリア、ミラノ‐アバディーン大学の研究者らによってJournal of Nutritional Scienceに発表された新たな臨床試験から、36%アントシアニンを含有するビルベリーエキスの単回投与によって、食後血糖値を下げる血糖応答と、インスリン応答が調節されることが初めて報告されました。
この試験は、同時にビルベリーエキス投与後に、酸化ストレスマーカー及び炎症マーカーが低下していることも報告されています。
アントシアニンの摂取量の高さが一貫して2型糖尿病のリスク低下に関与しているという疫学的観察から、糖尿病や肥満に伴う炎症及び酸化ストレスを減少させるもうひとつの食事療法として、アントシアニンの摂取が有効だと考えられる結果です。
また、別な研究では、8人の食事療法と生活指導だけでコントロールしている2型糖尿病男性志願者に、36%アントシアニンビルベリーエキス470mg(新鮮なビルベリー50gの摂取にほぼ相当)を経口カプセルで2週間投与したところ、血漿中のグルコース、インスリンが有意に減少していることが報告されています。
日本ではブルベリーに比べてあまりなじのないビルベリーですが、一見すると形はよく似ておりますが、皮をむいて見るとブルーベリーに比べ、ビルベリーの方が赤いアントシアニジン色素が一段と濃いベリーです。
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もう季節は終わりますが、血糖値の上昇が心配な人は、食事の直前にビルベリーを50gほどを生で食べてみるといいでしょうね。最近はビルベリーエキスが豊富に含まれたカプセルタイプのサプリメントも出回っているので、食事と一緒に飲んで見るのもいいですね。
ただし、注意をしていただきたいのは、アントシアニン、あんとしあにじんいの大量服用によって胃壁が荒れて胃痛の症状が現れることがあるので、一度に大量の摂取は注意してください。
by nutmed | 2013-09-12 14:58

昨日9月8日の日曜日、第2期の栄養療法塾がスタートしました。
第一期同様、医療従事者または、それに準ずる資格知識を持った方を対象として開講している栄養療法塾ですが、今回も28人の応募があり、遠方は札幌、滋賀をはじめ、静岡、長野からも受講参加される方もいらっしゃいます。
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受講者は臨床医、歯科医、管理栄養士、カイロプラクター、整体師、保健師など様々な医療関連分野の方々です。
これから半年間にわたり、テーマごとの栄養療法の知識とスキルを身に着けていただくことになります。栄養療法というと、単に、不足している栄養素を食事やサプリメントで補うことや、ビタミンミネラルの大量投与などが取り上げられますが、この栄養療法塾の講義では、栄養素が人間の体内で作用機能するための最もベーシックな位置にある消化分解と吸収については、徹底的に理解していただくことにしています。
今の日本では、栄養療法を標ぼう実践する臨床医ですら、貧血の患者にいきなり鉄材を、それも吸収がいいというだけで、ヘム鉄を処方します。考えてみれば、肉、魚、野菜と多くの食材に鉄は含まれているわけですから、体内に鉄分の蓄積量が少なく、血液中を流れる鉄が低い背景には、食材に含まれている鉄が体内に吸収できない原因背景があるはずです。その原因をさぐるためのスタートは食材の消化分解と吸収の働きであることは疑いようがありません。
かつて、アメリカやカナダでもこのようなことがあり、ビタミン、ミネラル、アミノ酸など栄養素の存在とその不足ばかりに注目するばかり、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などを飲ませてはみたものの、期待する予想とおりの結果は得られない「ニュートリションスパイラル」「ニュートリションパラドックス」を味わった専門家は少なくありません。
栄養療法塾では、受講者がニュートリションパラドックスに陥ることのないよう、的確な知識とスキルを学んでもらうことを目的としています。
そして、受講者を通じて世の中の皆さんが最適な健康を手に入れることができることを、もくてきとしています。
by nutmed | 2013-09-09 14:11

今年の春、私がフォーミュラしたビタミンD+ビタミンKのサプリメントの読者モニターを行いましたが、1か月間のモニター後の結果が思いのほか良好でしたので、その評価を少し紹介します。今回のモニター参加者の中に、以前から気管支ぜんそくの症状を持っている方が偶然2人いました。
お2人ともにぜんそく発作を抑えるステロイド吸入剤治療を行ってきた方でした。実際にサプリメントのモニターをスタートしていただいた後から、発作を抑える吸入剤を使う回数が減り、ビタミンD+ビタミンKのサプリメントを飲んでいる間はぜんそくの発作がほとんど出ることなく生活できたという報告をモニター終了後にいただきました。実はビタミンD3(コレカルシフェロール)がぜんそく発作を抑える働きについては、以前からいくつかの研究報告があります。
やはり、以前からぜんそくの発作を誘発する可能性が高いことが報告されている物質に、サイトカインのIL-17(インターロイキン17)という、白血球が構成する免疫にかかわる物質があります。ビタミンD3には、このIL-17の働きを抑えることによって、ぜんそくの発作を抑える働きがあることが報告され、実際にビタミンD3をぜんそくの治療に積極的に取り入れているドクターも少なくありません。
ビタミンD3には、IL-17のほかに、同じサイトカインで腫瘍の発生と増殖拡大を促進すると考えられているIL-23の働きを抑えることも報告されています。
一方、ビタミンK(メノキノン)には、気管支ぜんそくの発作を抑える強力な働きがあることが、1975年の岡山大学の研究チームによって報告されています。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/51576
ビタミンD3は,ビタミンとう呼称があるものの、性ホルモンやステロイドホルモン同様に、コレステロールから作られるステロールが変化した、ホルモン様物質であることを考えると、近年、子海外を中心に、ビタミンD3の持つ様々な生理活性が解明報告されていることもうなずけるわけで、今回のぜんそく発作の症状緩和作用についても、ビタミンD3が持つ作用の1つだと言えると思います。
by nutmed | 2013-09-04 11:45