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第676回 α-リポ酸が低血糖を引き起こす可能性がある

今日のテーマは、特定の人にα-リポ酸が低血糖症状を引き起こす可能性が高いという内容で、私の知人の姉妹に起きた出来事の紹介です。
従来、薬の分類であったチオクト酸(α-リポ酸)が食品の分類になったのはつい数年前のことで、今ではサプリメントや健康食品の中でα-リポ酸を配合した商品は、健康食品の上位を占めます。私自身、10年まえから1日あたり800mgのα-リポ酸を服用していますし、カウンセリングで糖代謝の良好でないクライアントや、水銀などの重金属の排泄を促す目的でα-リポ酸を勧めることが多いです。α-リポ酸は健康食品として多くの人が愛用常用している機能性分の1つだと思われますが、その働きは、強力な抗酸化作用で、代表的な抗酸化成分のビタミンCやビタミンEと異なり、水溶性、脂溶性のどちらの環境下でも作用することのほか、インスリンの感受性の向上、重金属の排泄促進、ミトコンドリアでのエネルギー生産向上などがあります。

さて、この知人の姉妹がある日突然、極度の体力、集中力の低下を覚え、ベッドから起き上がるのも辛い状態に陥り、病院で血液検査、診察をしたところ、極度の低血糖状態であることがわかりました。本人は低血糖症ではないことはもちろん、最近の食生活に変わったところがなく、すい臓に与える外傷もないだけでなく、インスリンの自己注射をするような状況でもなく、原因不明の状態でした。ところが主治医が、日本のある研究報告を見つけ、そこに報告されている内容が彼女の低血糖症状の背景にかなり近いことがわかりました。
その背景にあったのがα-リポ酸です。

その報告にn書かれていたのは「インスリン自己免疫症候群」という症状で、今から40年ほど前に東京女医性医大糖尿病センターの当時の所長だった平田先生が世界ではじめて報告し命名したもので、別名「平田病」「IAS:insulin autoimmune syndrome」と呼ばれています。
このインスリン自己免疫症候群は、インスリンに対する抗体がつくられ、体内で大量に作られたインスリンのほとんどがこの抗体と結合してしまい、そのインスリンによって低血糖症状が引き起こされるものです。
私もこのインスリン自己免疫症候群については知るところでしたが、2007年の6月にα-リポ酸がインスリン自己免疫症候群を誘発する報告がされていたことはしりませんでした。
インスリン自己抗体症候群は、臓器移植のときに組織の適合性をみるために使われるHLA(ヒト白血球型抗原)と強い関係があることは報告されていて、特定のHLA(DRB1*0406)を持っている人が発症しやすいことが今までにわかっています。このHLA(DRB1*0406)は日本をはじめとする東アジア圏の民族に多く、日本人では30人に1人(約3.3%)が持っていると言われています。

HLA(DRB1*0406)を持っている人が全てインスリン自己免疫症候群を発症するといういことではありませんが、今までに、このHLAを持っていて、SH基の成分が配合された薬を飲むことでインスリン自己免疫症候群が引き起こされる可能性が非常に高いことが報告されています。SH基(スルフヒドリル基)は簡単に言えばその多くは「硫黄」の成分を持った比較的悪臭のある物質です。
SH基を含んだ薬剤は比較的多く、以下の処方薬に含まれています。
・ カプトプリル (血圧降下剤)
・ チオプロニン (肝臓機能改善剤)
・グルタチオン、D-ペニシラミン (解毒用剤)
・6-メルカプトプリン(代謝拮抗剤)
・チアマゾール、プロピルチオウラシル(抗甲状腺ホルモン)

α-リポ酸もこのSH基を含んだ物質で、2007年6月に神戸大学内科から発表された研究報告(α-Lipoic Acid and Insulin Autoimmune Syndrome )によれば、32歳のインスリン注射歴がなく、糖尿病家族歴もなく、上記の薬剤の服用もない一方、HLAタイプはDRB1*0406で、唯一α-リポ酸の健康食品を飲んでいたこの女性に突然低血糖症状が現れていて、少なくともこの研究報告の中ではそれまでにこの女性のほかに、44歳女性と55歳男性が同様の症状と背景が確認されています。ただ、いずれの症例もα-リポ酸の摂取を中止すると低血糖症状は治まりもとに戻っています。

ここまで書いてしまうと、日本人の性格から、α-リポ酸があたかも危険な素材のように思われてしまう恐れがありますので、ここは正確に理解していただきたいと思います。インスリン自己免疫症候群のように低血糖を誘発してしまう可能性のあるα-リポ酸ですが、体内環境、特にストレスフルな現代社会の生活習慣や飽食化した食生活を考えた場合、α-リポ酸の持つ機能性は余りあるものがあることは事実ですし、その有効性は私自身もまた私のクライアントでも確認しているところです。
30人に1人という数字は確かに少なくはありません。1人1人がHLAのタイピングを確認していればいいことですが、それは生活感のない話です。
以前からこのブログでも言い続けていることですが、サプリメントや健康食品、もっと言えばビタミンミネラルは薬ではないので安全であるということは決してありません。
今回のα-リポ酸のことだけでなく、私が日頃から感じていることは、あまりにも目的なくサプリメントや健康食品を摂取している方が多い、特にマスコミメディアの啓発で簡単に手を伸ばしてしまう方が多い、「何となく飲まないより飲んだほうがいいだろう・・」という方が多いことです。TVや雑誌で紹介されている自分と同じ悩みを抱えた人が飲んで、症状が改善したから自分も同じように改善することは決して100%ではないということ、100人の人がいれば100人ともに体内環境が異なるということを自覚するべきだと思います。

α-リポ酸がSH基(スルフヒドリル基)を持った素材はα-リポ酸のほかにも多く、アミノ酸のシステインやグリシンもその1つで、これらのアミノ酸が含まれている食材は少なくありません。臭いの強い野菜、たとえばブロッコリ、ニンニク、タマネギ、豚肉などの食材にも含まれています。

今回のようにα-リポ酸が引き金となって特定のHLAタイプを持っている人が低血糖症状を招く可能性が高いことがわかったわけですから、少なくともα-リポ酸を摂取して、急に気力が低下したり、疲労が増したり、特に食事の前後で急激に疲れやダルさ、眠気などの症状が現れるようなことがあった場合には、ただちにα-リポ酸の服用を中止して、しばらくの後にそれらの症状が治まるようであれば、α-リポ酸がその症状にかかわっている可能性を疑うこと、また、システインやグリシンなどSH基(スルフヒドリル基)を含んだ食材を食べて、多かれ少なかれ上記のような症状が現れるような場合には、それらの食材には十分注意するとともに、チャンスがあれば糖尿病の専門医が在籍する施設でインスリン自己免疫症候群のことを相談してみることをお勧めします。




   
by nutmed | 2009-10-29 15:58