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第710回 コレステロールには善も悪もない

昨晩から西日本はこの冬一番の寒波が流れはじめ、九州や山陰山陽地方でも初雪の便りが聞こえてきました。東京も今朝はこの冬一番の寒さです。

さて、今日はコレステロールをテーマにしてみたいと思います。
以前に比べて少なくはなりましたが、今でも毎日のように電話やメールで寄せられる問い合わせの中で上位を占めるのが、コレステロールを中心とした肥満や高脂血症の相談です。問い合わせをされる方の100%が口をそろえて言うことは「悪玉コレステロール」と「善玉コレステロール」のことです。私はコレステロールに善も悪もなく、HDLもLDLも人間には欠かせないコレステロールだと確信していますから、このような問い合わせをいただくと、最初の10分間、また最初の50行くらいはコレステロールには善も悪もないことの説明と確認をするために割かれるわけです。
マスコミメディアの摺りこみは恐ろしいもので、善だ悪だと白黒をつけてしまうような報道や掲載をするもので、日本だけでなく世界中の老若男女がこぞってLDLコレステロール(俗に言われる悪玉コレステロール)を悪者扱いし、忌み嫌うようになってしまったようです。
私がこの内容を説明するときに最初にお話しするのは「もし悪玉なら人間の体には必要のないものになりますよね?」ということですが、もしLDLコレステロールが悪玉で、必要のないものだとしたら、人間の肝臓でつくられる必要はないはずです。残念なことに、世の中を見てみると押しも押されぬ一流食品会社でさえ、悪玉コレステロールをあたかも目の敵にするような商品を相も変わらず宣伝し続けていることに閉口しています。
医者をしても、血液検査の結果を見せながら「ああ、悪玉コレステロールが高いですから注意してください・・」という状況です。短時間で患者に説明するには、また食生活の改善を促すための「恫喝文句」としては悪玉善玉という表現は都合がいいのかもしれませんが、専門知識を持たない一般の市民が、マンガで悪魔の姿をしたLDLコレステロールを見せられながら「LDLコレステロールは悪玉でHDLコレステロールは善玉・・」と説明されれば、誰もがLDLコレステロールは悪者だから必要のないものだと考えてしまうのは自然の成り行きでしょう。
ここでコレステロールの主な役割を確認してみましょう。
1、コレステロールは人間の約60兆個もの細胞の膜( 細胞膜)を構成する重要な脂質
2、男性・女性ホルモンを含む各種ホルモンを作る源となる脂質
3、食材の中の脂肪を消化分解するために必要な胆汁をつくる脂質
4、脳内の神経の働きにかかわる脂質
5、体内で合成されるビタミンDの源となる脂質


このように人間の生命恰ふぉうにとっては必要不可欠なコレステロールですが、必要な時に肝臓で合成され、必要に応じて、コレステロールを必要としている細胞組織に送られるわけですが、このコレステロールを運搬するいわば運び屋がLDLコレステロールで、運び屋としての役目を終えたLDLコレステロールを回収して肝臓に戻ってくるサルベージの役割を担っているのがHDLコレステロールになります。詳細はここを参照

中でも細胞膜を構成する役割からみると、細胞がいろいろな原因で損傷した直後から肝臓ではコレステロールが盛んにつくられ、それと同時に運び屋であるLDLコレステロール(LDLコレステロール自身も細胞膜の修復材料となる)も盛んに作られ、損傷した細胞膜の修復のために血液中をたくさんのLDLコレステロールが流れはじめます。細胞膜に傷がつくほどの細胞の損傷は日常的に皆さんの体の内外で起き得ることだと思いますが、たとえば包丁やナイフで指を切ってしまったとき、口内炎、歯槽膿漏、歯の抜歯やインプラント、手術などがそれにあたります。

確かに、運び屋としての役目を終えたLDLコレステロールが、サルベージの役割を持ったHDLコレステロールに十分回収されずに血液中に残ることで、酸化脂質となり血管の壁や他の細胞に害を与える酸化物質に変化することは間違いのないことですが、LDLコレステロールが「悪玉」という説明には無理があると思いますね。
ものは違いますが乳酸菌も同じように悪玉=乳酸菌以外の大腸菌やコレラ菌など、善玉=乳酸菌という刷り込みが見事に浸透していますね。

そろそろ「善玉」だとか「悪玉」というような議論や説明はやめにして、人間の営みにとってどのような役目を担っていて、過剰過小によってどのような影響をもたらすのかということを正しく理解してもらうべきではないでしょうか・・
by nutmed | 2009-12-17 13:10