2010年 03月 25日
第761回 食物過敏症 セリアック病 その7 グルテン#3
今日は、セリアック病の腸の症状の原因となるグルテンとHLAとの関係についてです。
現在までのところ、セリアック病は遺伝的な要因がかなり深いと考えられていて、遺伝的に決定されるHLA(ヒト白血球型抗原:Human Leukocyte Antigen)の中の特定のHLAを持っている人では、圧倒的にセリアック病を発症する確率が高くなることが報告されています。HLA-DQ2とHLA-DQ8という白血球型抗原がそれにあたりますが、DQ-2を持った人では、セリアック病の発症リスクが95%近くまで高く、逆にDQ-8を持った人では5%と低いことが報告されています。日本赤十字が定期的に報告している日本人のHLA発現頻度を見ると、DQ-2のHLA持つ人は0.3%と他の人種に比べて低く、DQ-8の場合には約10.8%と報告されています。確かにこの数字は他の人種から見れば少ないようですが、DQ-2とDQ-8のHLAによるセリアック病の発症リスクと、日本人のDQ-2とDQ-8のHLA頻度を考慮すると、日本人の約120人に1人がセリアック病の発症リスクを持つことになります。この数字は、糖尿病や高血圧など生活習慣病のリスクに比べ決して高い数字ではないかもしれませんが、読者のみなさんはこの数字、どう感じますか?
以下の図を見てもらうと、HLA-DQ2とHLA-DQ8がセリアック病にどのように関わっているのかがわかると思います。

食材に含まれるグルテンの構成成分であるグリアジンが腸から吸収された後、酵素のトランスグルタミナーゼ(tTG)によって形を変えます。この形を変えたグリアジンとリンパ球の表面にあるHLA-DQ2とHLA-DQ8が結合することによって、抗原提示細胞(APC)が刺激を受けます。刺激を受けたAPCは、ウィルスやバクテリアなど外部からの侵入者やがん細胞を攻撃するT細胞を刺激するとともに、リンパ球を刺激します。刺激されたリンパ球は自身が作り出すタンパク質でできた、いわば攻撃用のミサイル(ペルフォリン)や爆弾のような酵素(グランザイム)を放出します。例えはいいとは言えませんが、「昨日までは有効関係にあったどこかの大国が、国境を越えて侵入し、ミサイルや爆弾で攻撃してきて交戦状態となり、武器を持たない市民が巻き添えを受ける・・」のような状態ですね。言うまでもなく、正常な絨毛細胞や粘膜細胞が武器を持たない市民ということになります。


