人気ブログランキング | 話題のタグを見る

第810回 胃酸と吸収 その1 鉄

昨晩は、講談社の会員制健康雑誌の取材を受けてきました。私もこの手の会員制の雑誌ははじめてですが、健康に気を使う方(多くは女性だそうです)の情報誌として、話題になっているそうです。

さて、今日は逆流性食道炎からの継続テーマの1つ、胃酸の働きについてです。
胃酸は食物を消化分解するための強力な酸であることは誰でもが知っていることですが、胃酸過多という言葉はTVのコマーシャルで刷り込まれていても、胃酸が少ないことによってあらわれる症状については、知られていないことは残念です。
今日からしばらく、胃酸が少ない「胃酸過小」によって、消化分解から吸収に与える影響が大きな栄養素について紹介をします。
1回目の今日は鉄についてです。
鉄は人間の体にとって不可欠なミネラルの1つでもあり、その役割には皆さんも良く知っている血液のヘモグロビンをつくるときの役割がありますね。鉄分が不足する貧血になることで、酸素が細胞に供給できなくなり、めまい様のしょうじょうや疲労感が現れます。
胃酸と鉄の関わりについては、1930年代はじめに、アメリカの研究者がすでに報告しています。13人の貧血と診断された小児の栄養状態と胃酸の分泌を調査したものですが、実に13人中、11人の貧血の小児の胃酸分泌が過小であったことがわかり、胃酸の分泌状態が鉄の吸収に影響を与え、貧血症状の背景には胃酸の分泌が関わっていることを報告しています。その後1960年代にも、44人の慢性貧血の成人男女の胃酸分泌能力を調査した報告があり、ここでも80%の慢性貧血の成人男女で、胃酸がほとんど分泌されていないか、分泌量が非常に少ないことがわかりました。
通常、食材から摂取できる鉄分は、動物の肉に含まれる「ヘム鉄(Hem iron)」と穀類、豆類、野菜に含まれる「非ヘム鉄(Non-Hem iron)」があります。ヘム鉄はpHが7(中性)またはアルカリ性の状態でも比較的吸収はできる鉄ですが、非ヘム鉄は難消化性の繊維質に結合しているために、鉄(元素)を吸収させるためには、強い酸が必要になります。
1990年のイギリスの研究チームの報告では、非ヘム鉄から鉄を分離するためには、少なくとも胃酸のpHは4.0以下であることが条件と報告しています。
慢性的な貧血で、鉄の吸収が不良なクライアントの胃酸の分泌能力と、pHを調べてみると、60%くらいの人に胃酸分泌の低下またはpHが十分に酸性にならない人がいるため、栄養療法ではこのような人に、胃酸を補うための塩酸(塩酸ベタイン+ペプシン)のサプリメントを使ってもらうことが少なくありません。その効果は高く、このような背景で慢性貧血の人の80%は貧血症状が大幅に改善します。

次回は胃薬と鉄の吸収についてです・・
by nutmed | 2010-06-23 07:52