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第815回 胃酸と吸収 葉酸 その1

残念と言えば、残念でしたね・・。さすがにサッカーに興味のない我が家でも今朝のニュースを見て、もう少しの差だったのに・・と思いました。寝ずの応援サポーターの皆さん、お疲れさまでした。

さて、今日は胃酸と吸収の葉酸についてです。
葉酸については、つい先日のブログで、最新トピックスをテーマにしたばかりですので、葉酸の働きについてはそちらをご覧いただくといいと思います。
したがって今回ここで説明する葉酸は「folic acid」ではなく「folate」です。胃酸が葉酸の吸収に影響を与えるのは、胃酸が少ない、または胃酸のpHがアルカリ性になることによって、吸収を担う小腸のpHが極端にアルカリ性になることによるものだと考えられます。1993年と1994年に、アメリカはボストンのTufts大学の研究チームが、ビタミンミネラルB12、葉酸を含むビタミンが、胃酸分泌の不足またはpHが十分に酸性にならない被験者、特に高齢者では吸収率が著しく低下することを報告しています。研究チームは胃酸分泌量の少ない被験者に、塩酸ベタインを飲ませたところ、ビタミンB12と葉酸を含む多くのビタミンの吸収が平均で54%向上したことも報告しています。
葉酸の吸収も胃酸が十分で、pHも十分酸性にならないと低下することは間違いないですが、ここにパラドックス的な要素があることも事実です。胃酸の分泌の不足またはpHが十分に酸性なっていない高齢者の中にも、血液中の葉酸レベルが十分である人も珍しくはないことがわかっています。Tufts大学の研究チームの発表内容からいえば、通常はこのような人の場合、葉酸の吸収は低下するはずなので、血中レベルは必然的に低いはずなんですが、予想以上に葉酸の血中レベルは高い。なぜこのようなことが起こるのか???
この点については、自然の摂理ともいうべきユニークな背景があり、その背景はバクテリアの関与があります。胃酸の働きの1つに、その強力な酸による殺菌作用がありますが、胃酸が少ないまたはpHが殺菌能力を発揮するには十分に酸性ではない状態の人の場合、胃および小腸においてバクテリアの不用意な繁殖が起こります。細菌の多くは代謝に葉酸が必須で、自ら葉酸を作り出します。つまり、胃酸分泌が少なく、pHが十分酸性でない場合でも、繁殖した細菌自らがつくる葉酸によって、宿主である人間の血中の葉酸レベルは予想以上に高いということです。
実はこのバクテリアの性格を利用した薬の恩恵に皆さんも預かっているんです。サルファ剤という抗菌薬を処方されたことがある人は少なくないと思います。ポピュラーな感染症治療薬なので処方されるチャンスも多い薬です。このサルファ剤はバクテリアがつくる葉酸の構成成分であるパラアミノ安息香酸という物質に似た構造の薬で、細菌が自らつくる葉酸と競合する「葉酸合成阻害剤」とも呼ばれています。サルファ剤は細菌を直接的というよりも、代謝に必須の葉酸の合成を邪魔することで、バクテリアの繁殖を拡大させない、いわば間接的抗菌薬なので、服用を中止し、薬の効果が無くなると場合によっては再び細菌の繁殖が起こることになります。
細菌が葉酸をつくってくれるのであれば、胃酸不足でもいいじゃないか・・と思う人がいるかもしれませんが、そうではないですよね。葉酸を自らつくってくれはしますが、バクテリアは一方で人に必須なビタミンミネラルなどを「盗んで」繁殖をする性格も持っていますから、不用意に繁殖することはご法度です。
by nutmed | 2010-06-30 07:59