第828回 胃酸と吸収 バクテリアの影響 その3

昨晩から今朝まで、気温は27℃を下回ることなく、今朝6時の時点ではすでに30℃を越えています。連日、熱中症で倒れる人が増えているようですので、くれぐれも水分補給、忘れないでくださいね。気がつく前に、意識して1時間置きなど、定期的な水分補給をしましょう。

さて、今日はバクテリアの影響の3回目です。
「他の胃酸のpHを上げて(アルカリ性)しまう薬と同様に、健常な人がオメプラゾール(Omeprazole)を14日間服用した場合には、胃の中のバクテリアの繁殖を著しく増加させます。繁殖するバクテリアの種類は、だ液中に発見される一般的なバクテリアと変わらず、服用を中止して3日でこの状態は改善された。」
この文章は、アメリカで逆流性食道炎、ヘリコバクターピロリの除菌補助などの目的で最も汎用的に処方されているオメプラゾール(薬品名:Prilosec)に添付される注意書きの1部です。オメプラゾールは日本でもジェネリック医薬品として市販されていますが、私が調べた限りでは、この薬の注意書きまたは副作用の喚起の文章の中には、胃酸のpHをアルカリ性にし、胃内のバクテリアの繁殖を誘発する注意喚起はありませんでした。
服用して3日で状態が改善されることは不幸中の幸いかもしれませんが、商品の添付書に、「この薬によって胃酸のpHがアルカリ性に傾くこと」、「それによって胃の中のバクテリアが著しく繁殖すること」を医薬品メーカーも認め、FDA(米国食品医薬品局)がその内容を文章で添付する指導をしていることは事実なわけです。これはこれで消費者に喚起を促すという点ではいいことなのですが、そもそも「健常な人」が飲むような薬ではないこと、逆流性食道炎やヘリコバクターピロリの除菌補助で、オメプラゾールのようなプロトンポンプの働きを止めてしまうような薬を処方される患者は「14日間」以上飲み続けることが圧倒的に多いこと、処方されている間に「3日間」服用を中止することはまずないということで、結局中途半端な喚起注意書きということになります。

また、「だ液中に発見される一般的なバクテリアと変わらず」とありますが、これもいささか中途半端ですね。皆さんも歯科に行ったときに歯科医に聞いてみるといいですが、人間の口腔内に存在するバクテリアの種類は400種類を越えると言われていて、バクテリアの繁殖する環境が整っていれば、たった1人の口の中に、現在地球上に居る人口をはるかに上回る数のバクテリアが繁殖します。これらのバクテリアの1部が胃の中に落ちていくことによって、胃の中のpHがバクテリアを殺菌するに十分の酸度になっていれば、ほとんどのバクテリアは殺菌されるでしょうが、オメプラゾールのような胃酸の分泌をとめてしまうような薬を継続服用することで、体内環境に影響をあたえるほど繁殖するバクテリアが現れることになります。
胃酸の働きに影響を与えるような薬の服用には十分注意が必要ということですね。
by nutmed | 2010-07-21 06:39