第830回 胃酸と吸収 ヘリコバクターピロリ菌 その2


ヘリコバクターピロリ菌 その2
1990年以降、委縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療改善がピロリ菌の除菌に変わっていったことは万国共通ですが、アメリカでも日本でも、依然としてピロリ菌の除菌の際にオメプラゾールのような胃酸を制御してしまう薬が処方されることは少なくありません。確かにこれらの薬で一時的に胃の痛みなどの症状が緩和されることはありますが、これらの薬がピロリ菌を抑制する効果があるわけではないので、根本的な解決には至りません。逆に、これらの薬によって胃酸が抑えられることによって、ピロリ菌が生存しやすい環境をつくることにもなります。1995年には世界的に権威のある医学誌「Lancet」をはじめ、プロトンポンプの働きを止めてしまう薬がピロリ菌の繁殖と治療に及ぼす影響に関する研究がいくつも報告されています。1996年にはスウェーデンとオランダの研究チームが、世界的に権威のある医学誌「New England journal of medicine」で、5年間にわたるピロリ菌の治療とオメプラゾールの影響についての検討結果を報告していますが、オメプラゾールを治療に使った患者のグループでは、その30%に治療後に委縮性胃炎の症状が再発、または悪化していることが報告されています。
ピロリ菌の除菌の際に、オメプラゾールのような胃酸を制御してしまう薬を使うことの是非は別として、どの段階で使用を中止するかの見極めはもちろんのこと、これらの薬の適用の効果の有無を確認することは重要なことだと思います。

さて、6月10日の逆流性食道炎からはじまった胃酸と吸収に関する長期テーマは次回から中盤に入ります。次回からは、胃酸が不足することによって現れる症状や、胃酸不足が関わる病気の紹介をスタートします。

暑さも今週末でひと段落する予報が出ています。しかし、くどいようですが、水分を意識して補充すること、特にお子さんや乳幼児は親が意識して補充するようにしてあげてください。

それでは皆さん、良い週末を!
by nutmed | 2010-07-23 10:16