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第901回 2010.9 ビタミンD トピックス その3 肥満

今朝の東京は何十日ぶりかの小雨のふる朝です。ここ連日の猛暑と太陽の照り返しで、人間だけでなく植物も干上がっている状態ですから、この台風の影響による雨はまさに恵みの雨になればいいですが。ただ、すでに東北では台風の余波による影響もでているようですから、台風の通り道にお住まいの方は十分注意してください。

さて、今日はビタミンDと肥満についてです。
前回のブログでも紹介したように、ビタミンDは脂肪の代謝、糖分の代謝に直接間接的にかかわるホルモンに似た物質です。ビタミンDの多くは脂肪細胞に貯蔵されます。したがって脂肪がたくさんついている肥満の人は、やせている人に比べてビタミンDの量が多く、うつ病、不眠、骨そしょう症など、ビタミンD不足が背景にあるような症状は出にくいように思われますね。しかし、半分は当たっていますが、半分は当たってはいません。確かに、肥満の人の脂肪内に貯蔵されているビタミンD量は、やせている人に比べて多いかもしれませんが、体内で様々な作用をする活性をもったビタミンDが多いかと言うと実はそうではないのです。逆に、肥満傾向の人や脂肪が多い人の場合、ビタミンDが不足、いわゆる活性をもち作用するビタミンDが不足している可能性があると言えます。
臨床におけるビタミンDについて第一人者でもある、アメリカの医師Dr.Holick(Michael F.Holick,Ph.D.,MD)が行った臨床検討の報告(1998年のLancetに発表)を見ると、その背景が理解できます。
彼は、ビタミンDを体内で合成するために大切な日光に含まれる紫外線を使い検討しました。肥満の人(BMI値が30以上の肥満)と一般的な体型の人に同じ条件(紫外線量と時間)で日光浴をしてもらい、血液中の活性をもったビタミンDを検査で確認してみたところ、肥満の人は、ビタミンDが一般的な体型の人の半分以下しか上昇しなかったと報告しています。この原因は、肥満の人の場合脂肪細胞に蓄積されたビタミンDが固着(ロック)してしまうことで、肝臓、腎臓で活性をもったビタミンDに変換されにくくなるためだと考えられています。つまり、脂肪細胞が多い、肥満傾向の人では、一般的な体型の人に比べ、ビタミンDの必要量は2倍になるということです。
ビタミンDは太陽の紫外線を浴することで体内で作ることができますが、秋から春までの紫外線が不足する季節や天候条件などを背景として、人間はその永い営みの中で、ビタミンDを脂肪細胞に貯めておく機能を身につけてきました。紫外線が少なくビタミンDの体内合成ができにくくなる冬に向かって、秋から脂肪を体内に貯めることでビタミンDを貯蔵し、紫外線量が増える春には脂肪を落とし、日光に浴することでビタミンDの合成が盛んになる生活をしてきたわけです。しかし、生活様式、職業、ストレスなど、様々な生活環境の変化によって、季節に関係なく過剰な脂肪細胞が1年を通して貯蔵され続け、肥満を生み、それはビタミンDを脂肪細胞に貯蔵することはあっても、体に作用する活性のあるビタミンDへの変換ができにくい体を生みはじめたわけです。これは活性をもったビタミンDの利用が不足低下するだけでなく、過剰な脂肪細胞によって、代謝とホルモンのバランスに大きな影響を与える結果も生みだしました。言い換えれば、肥満によって増大した脂肪細胞は代謝が低い、つまり、循環することも利用されることもなく、またエネルギーとしても利用されることなく貯蔵されているだけの脂ということです。この動きのない、貯蔵され続けた脂肪がビタミンDの作用をも低下させてしまうということです。
私が研修を行っていたオレゴンのクリニックでも、肥満の人に対する栄養療法の中では、血液中のビタミンD(1-25H2-ビタミンDなど)を必ず検査していましたが、その量は一般的な体型の人に比べ少ない状況でした。
アメリカでは肥満の人にビタミンDの摂取を指導する際には、1日あたり75-100μgを3回にわけて摂取することを目安として行っていますが、私はもう少し多く、1日あたり200μgくらいでもいいと思っています。
by nutmed | 2010-09-08 07:34