2010年 09月 10日
第904回 2010.9 ビタミンD トピックス その5
さて、今日はビタミンDの5回目です。
アメリカや欧州ではビタミンDのことを「Sunshine Vitamin(サンシャインビタミン)」と呼ぶことがありますが、紫外線の照射量だけでなく、皮膚の色の違いによってサンシャインビタミンの合成能力の違いと、民族の定住場所、それんい自然淘汰が起こっていたことに関する興味深い研究発表があります。アメリカのマサチューセッツにあるBrandeis University(ブランディス大学)の生化学者Dr.Loomisは、今から40年以上前の1967年8月に、Science誌(Science 4 August 1967:Vol. 157. no. 3788, pp. 501 – 506)の中で、人種の皮膚の色とビタミンDの合成能力について興味ある研究報告を発表しています。彼は発表の中で、紫外線を浴びてビタミンDを合成する能力は、皮膚の色によって異なることを報告しています。白人・黒人・黄色人種では、皮下への紫外線の透過量が異なり、ビタミンDの合成量もそれにともない異なるということです。これは何万年という人間の進化の過程の中で起きた、人間の環境順応の結果だと彼はいいます。結論から言えば、紫外線が皮膚を通過して皮下の細胞に届く透過率は、白人>黄色人種。黒人の順に高く、黒人では紫外線の透過率が3%から最大で36%であるのに対して、白人では53%から最大で72%と高いということです。私たち日本人、韓国人、中国人、そして北米へわたったインディアン、イヌイットなど、いわゆるモンゴル系の黄色人種の場合には、黒人と白人の中間の透過率であるということです。この発表があった当時、世界中の人類学者が議論を重ねたようですが、彼の見解では、人類が移動の過程で自然淘汰をされてきた可能性があると言い、紫外線透過性の低い黒人は、北緯40度あたりを起点として、これより緯度の高い地域では死亡率が高かった背景を報告しています。たとえばクル病であり、女性の骨盤形成不全であり、日照量と時間が少ない緯度の高い地域では、黒人が定住することは難しいという背景があったようです。実際、1930年初までの北米に住む黒人の子供たちは、白人の子供に比べクル病の発症率が高かったようですが、1930年はじめ以降、アメリカ政府がビタミンDを強化した牛乳の普及をはじめてからは、劇的にクル病の発症率は低下したという報告があります。われわれ日本人と同じモンゴル系の血を持つ、アラスカや北極圏に住むイヌイットでは、黒人に比べ紫外線の透過率は高いものの、白人ほどではなく、日射量の少ない土地に定住する過程の中で、紫外線からのビタミンD合成ではなく、ビタミンDが豊富な魚、哺乳類からビタミンDを補っていたわけです。
幸い日本という国は、日射量もほどほどにあり、また、ビタミンDの豊富な魚や哺乳類を食生活の中で取り入れてきた民族ですが、食の様変わりや日光を浴びなくなった生活習慣が今後どのような形で表面化するのかが心配ではあります。
週末はまた暑さが戻るようですが、みなさん良い週末を!


