第925回 肥満を作り出す要因 男性ホルモン その2

今朝の東京は、昨晩からの雲が波が引けるように晴れ間が広がり、日本の秋を感じさせる1日のスタートです。
さて、前回の男性ホルモンのヒアリングアンケートですが、週末土日と今朝までに120通を超えるメールをいただき、想像以上に関心の深さを感じています。 メールをいただいた方の平均年齢は40歳を少し超えたところでしょうか。普段から雑誌やメディアでは女性のホルモンに関する話題が多いだけに、なかなか男性のホルモン、特に肥満や男性更年期とホルモンに関わる話題が少ないので、一層関心が高いのかもしれませんね。
すでにメールをいただいた方々には、個別に回答いただいた内容に伴うコメントを返信していますので、参考にしていただければ幸いです。

肥満とホルモンがどのように関係しているかについては、日本をはじめ世界中で長年研究されているところですが、この5年ほどの間に発表されてきた研究報告によって、男性の肥満とメタボリックシンドロームが密接な関係にあることが、今まで以上にわかってきました。2007年にアメリカのベスイスラエル病院(Beth Israel Hospital)の研究チームと、2004年にフィンランドの研究チームが報告している、男性ホルモンのテストステロンと肥満、メタボリックシンドロームの関係についての論文は非常に興味あるものです。 日本では潮が引けた後のように、話題に上らなくなったメタボリックシンドロームですが、日本でメタボの検診と言えば、腹囲を測定して、コレステロールの血液検査がとおり一辺倒のお約束ですが、アメリカや欧州では、血液検査でコレステロールのほかにも数々の検査項目を行うことは珍しくありません。特に、40歳を過ぎてからの男性の場合には、男性ホルモンのテストステロンと女性ホルモンのエストロゲン(エストラジオール)や前立腺の機能を確認する検査は広く行われています。男性ホルモンと女性ホルモンの検査については、私も5年前から年に1回定期的に検査をしてもらっています。この検査については今回の継続テーマの中で紹介します。
なぜ、メタボリックシンドロームや肥満の背景を知るために、男性ホルモン、女性ホルモンの検査を行うのかと言えば、ホルモンの高低が脂肪の代謝や糖のコントロールに深くかかわっていて、それが加齢とともに加速されていくという背景があるからです。40歳を過ぎてからの肥満改善やメタボリックシンドロームの予防のために、コレステロールの低下ばかりが叫ばれ、適度な運動の継続と食事の仕方や食材の見直してきた世の男性は少なくないと思います。多くの男性諸氏がその甲斐があって体重も減り、コレステロール値も低下したかもしれません。もちろん、運動も食生活も非常に重要なファクターであることは言うまでもありませんが、残念ながら日本の肥満やメタボリックシンドロームの改善予防の指導の中には、年齢からくるホルモンバランスの変化と、その変化を改善する指導が非常に少ないのが現状です。 過剰なカロリーの摂取や不規則な食生活を改善するために、食事の量を減らすことは1つの方法ではありますが、30歳後半までと、それ以降の体内環境の中で大きく変化するものの1つがホルモンであり、食事量の見直しだけではコントロールできないものでもあります。 多くの男性が肥満の改善のために、またメタボリックシンドローム改善予防のために、様々なアクションを起こしたけれども、期待するほどの効果を達成できずに、ドロップアウトしてしまう背景の1つも、このホルモンバランスだと言えるでしょう。

次回はテストステロンと女性ホルモンと肥満のかかわりについてです・・
by nutmed | 2010-10-18 10:48