第951回 ビタミンB12の不足について 笑気ガス

今日は久しぶりにホテルランチを食べてきました。新橋駅前にある高層ホテルの最上階のレストランで、手ごろな値段のランチを、銀座やスカイツリーを見ながら楽しんできました。値段が手ごろなこともあって、近隣のサラリーマンらしき男性も多いのですが、気になったのは食事が終わるまでの時間がなんと早いこと! まるで街角にある立ち食い蕎麦屋で食べているかのような食事時間には驚きました。

さて、今日はビタミンB12の不足をもたらす少し変わった原因について紹介しましょう。
皆さんは「亜急性連合性脊髄変性症」という病名を聞いたことがあるでしょうか?初めから少し難しい病名がでてきましたが、医療系ドラマやサスペンス小説が好きな人は、今年の4月に放映された「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」の第2話でこの病名が劇中で扱われたことを覚えているのではないでしょうか?
亜急性連合性脊髄変性症は、悪性貧血と同様、ビタミンB12の不足または欠乏によって起こる症状で、握力や背筋、足の筋力が突然低下し、まっすぐに歩くことができなくなり、全身を刺すような痛みが襲い、意識がモウロウとするような症状が現れる病気です。以前は1万人に1人くらいの発症率と言われてきましたが、この5年ほどでその発症率は増えているのが現状です。 背景にあるのはビタミンB12の不足や欠乏によるもので、野菜しか食べない厳格な菜食主義者の中でも、胃酸の分泌が低下している人や、肉や魚を食べないダイエットをしてきた人、また胃酸の分泌が著しく低下している人、胃酸を止めてしまうような薬を不必要に飲む人では、亜急性連合性脊髄変性症が現れる可能性は少なくありません。

「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」の第2話でこの病名が扱われたときに、笑気ガスのことが扱われていましたが、笑気ガスもビタミンB12を低下させ不足へ導く原因にもなります。
笑気ガスの正式な名前は亜酸化窒素(N2O)と言い、このガスは200年ほど前にイギリス人によって発見され、その後、吸うことによって麻酔様の作用をもつことから、外科手術に応用されてきました。顔面がひきつり、笑うような顔になることから笑気ガスの名がついたものです。日本でも1部の外科手術や歯科医が抜歯などの麻酔用として今でも使われています。
笑気ガスに含まれる亜酸化窒素は体内でビタミンB12を不活性化、つまりビタミンB12の働きを著しく阻害してしまう作用があります。笑気ガスは世界中で日常的に医療で使われていますが、通常、笑気ガスを使用する場合には、必ずビタミンB12の不足の状態を確認することが重要なこととなります。私がシアトルで研修していた時代に、一緒に栄養療法を進めていた歯科医がいましたが、彼女のクリニックでも頻繁に笑気ガスは使われていました。当時から彼女は笑気ガスを使用する患者に対しては、事前に食事の内容のカウンセリングをするとともに、血液と尿でビタミンB12、メチルマロン酸、ホモシステインの検査をしてビタミンB12の不足の確認をし、さらに胃酸の分泌状態を確認したうえで笑気ガスを使うことを徹底していたことを記憶しています。
以前、日本で、ある歯科医師のグループに栄養療法の講演をした際、笑気ガスを日常的に使っている歯科医に、ビタミンB12の不足を確認しているかを聞いたことがあります。会場の50%くらいの歯科医が笑気ガスを使っていると答えてくれましたが、ビタミンB12の不足を確認、少なくとも血液でビタミンB12の検査している歯科医は残念ながら1人もいなかったことを覚えています。 その理由を聞くと、多くの歯科医が「動物性のたんぱく質摂取は以前よりも多くなっているので、よほどのことがない限りビタミンB12が不足していることはない」ということでした。ここにもまた「摂取量」と「吸収量」の誤解があるわけです。
外科手術で笑気ガスを使う場合、事前にビタミンB12の筋肉または静脈注射を施すこともあるようですが、過不足の確認検査は、現代の食生活を考えれば必須であると思います。
読者の皆さんの中に、今後笑気ガスを使った治療を受けることがあるような場合には、少なくともビタミンB12の不足の確認をしてもらったうえで治療を進めてもらうことをお勧めすると同時に、主治医に確認をすることをお勧めします。

さて、明日から週末です。来週は火曜日が祝日なので少しラッキーな気分でもありますね。
それでは皆さん 良い週末を!
by nutmed | 2010-11-19 17:17