第955回 ビタミンB12の不足について バクテリア

11月の第4木曜日はアメリカでは感謝祭(Thanks Giving Day)の祝日です。 どうりで今朝はアメリカからのメールがいつもの1/10ほどだったわけです。私も以前カナダ、アメリカに留学をしていたときには、友人宅に招かれてグレービーソースやアップルソースをたっぷりとかけた七面鳥のローストを食べたことを思い出します。

昨日、ビタミンB12の不足で、血液中のビタミンB12が高くなるケースを紹介しましたが、血液中のビタミンB12が高くなるケースの中にはバクテリア(細菌)の異常繁殖による背景もあることを紹介しておきましょう。
ビタミンB12は動物性たんぱく質に含まれるビタミンB群の1つですが、いくつかのバクテリアにはビタミンB12を合成して作りだす能力があることが、1980年には報告されていて(Albert, M.J., V.I. Mathan, and S.J. Baker, Vitamin B12 synthesis by human small intestinal bacteria. Nature, 1980. 283(5749): p. 781-2. )この報告で、少なくとも緑膿菌の仲間であるシュードモナス菌や、クラブシエラ菌という人間の腸の中に存在するようなバクテリアが、自らビタミンB12(コバラミン)を合成することがわかっています。その後も世界中でバクテリアが合成するビタミン(特にビタミンB群)の研究は続けられており、乳酸菌や土の中に生息しているバクテリアでもビタミンB12を合成する種類が存在することがわかってきました。
これらのバクテリアの中には、人間の腸(小腸)に生息するような種類もいて、バクテリアが生息する環境が整い、異常繁殖をした場合には、理論的には血液中のビタミンB12が高くなる可能性は高いと考えられます。
下の図はこのブログでは何回も登場しているのでおなじみの図ですが、この図を見てもらうとわかるように、ビタミンB12が吸収される場所は、小腸のパートの最後にあたる回腸付近です。
第955回 ビタミンB12の不足について バクテリア_d0070361_15213329.jpg

したがって、小腸付近に生息するこれらのバクテリアが合成したビタミンB12は、回腸付近で十分吸収は可能であることがわかります。しかし、以前にもお話したように、ビタミンB12が回腸で吸収されるためには、胃の中で結合されたたんぱく質が必要になります。人間がビタミンB12を吸収する方法には、確かにたんぱく質を必要とせず、コバラミンを直接吸収するしくみがあることはわかっていますが、その量はわずかなもので、体内にあるビタミンB12のせいぜい1%とされています。 実はここにビタミンB12の吸収の複雑なところがあって、バクテリアが合成したビタミンB12がどのように吸収されるのかについては、未だに明確なことがわかっていません。

一方で、サプリメントに使われているビタミンB12の多くは、やはりバクテリアが合成したものを配合していることが多く、放線菌の1つであるストレプトマイセス菌(Streptomyces griseus)を培養して作られています。
今回でビタミンB12のテーマは最終回となります。
来週からは季節がら、感染症の予防についてのテーマを少しお届けしようと思っています。

明日から週末ですが、もう11月も終わり、来週から師走です。 この週末風邪などひかぬように、皆さんよい週末を!
by nutmed | 2010-11-26 15:35