第978回 メトホルミン  その1

新年が1週間も経過しているのに、ブログのスキンがクリスマスのままになっていますよ!とご指摘のメール
を今朝ほどいただきましたので、早速新年バージョンのスキンに変更いたしました(笑)
昨年カマキリの産卵の話をしたかもしれませんが、昨秋のカマキリの産卵場所が、いつもよりも高い場所に
あるので、今シーズンは雪が多い年になるかもしれないという予想は、どうやら的中のようですね。 典型的
な西高東低の冬型気圧配置ですが、大陸からの冬将軍が非常に強く、猛寒波です。この様子では1月末か
ら2月中旬ころにかけて関東でも大雪に、また4月直前には湿った大雪に見舞われるかもしれないですね。

さて、今日からメトホルミンについて紹介します。メトホルミン(metformin)については以前から数回扱って
きましたので、記憶に残っている人は多いでしょう。特に今回は、この5年ほどの間に発表されている、メトホ
ルミンの持つがんの予防と治療サポート効果、それに糖尿病とがんの関係について、しばらく続けてみたいと
思います。
何故今になってこのブログで薬のメトホルミンをテーマとしてあげるのか?
それはこの薬を構成している原料のほとんどが植物性の機能成分であり、薬と言うよりもハーブサプリメント
に近い、また副作用が他の薬に比べて少なく、ビタミンミネラル、その他のハーブと一緒に、上手に使用する
ことで優れた効果を示すことがわかってきたことが背景にあります。

復習の意味で、メトホルミンの素性についてはじめにおさらいしておきましょう。
日本でも以前から血糖を下げる薬として処方されているビグアナイド系血糖降下薬のメトホルミン(メルビン、
グリコラン、メデット)があります。糖尿病(2型)治療薬の多くの薬が、すい臓にインスリンを作ることを促す作
用であるのに対して、メトホルミンは、糖分そのものの吸収を抑える作用とインスリン抵抗性を抑える作用を
もった薬です。
メトホルミンの歴史は古く、1957年に世の中に発売処方され、日本でも1961年に発売されています。しか
し、1979年にこの薬の副作用とも言える、乳酸が貯まりやすいことが原因によって、高齢者を中心に死亡例
が出たことで、日本をはじめとする世界各国で使用されなくなりました。ただ、これには原因背景があり、その
後の調査で対象となる人と量に注意することで、2型糖尿病の血糖改善効果が高いことが再認識されていま
す。アメリカでは1994年にFDA(米国食品医薬品局)が2型糖尿病改善薬として承認し、1996年に、インス
リンに対して抵抗性を持ってしまう2型糖尿病患者の血糖降下作用が強く、副作用もほとんどないことが報告
され、1998年には、糖尿病の合併症の原因となる糖化最終産物(AGE)の抑制効果が高いことが報告さ
れ、アメリカではこの20年間でメトホルミンの処方が劇的に増加しています。
残念ながら日本では遅れること8年、2005年になってようやくメトホルミンの有効性が見直され始めたところ
です。それでも、私の知り得る限り日本では、メトホルミンを2型糖尿病患者に処方する医師はまだまだ少な
いように思います。
今から50年以上も前に開発されたメトホルミンの主要成分であるグアニジンは、元々ゴーツルー(Goat’s
rue)と言う植物の花から抽出されたものです。和名をガレガソウ(Galega Officinalis)と言い、ハーブでは
ゴーツルー(Goat’s rue)と呼ばれるマメ科の植物で、別名フレンチライラック(French Lilac)とも呼ばれて
います。ゴーツルーはヨーロッパを中心に昔からハーブ療法の素材として使われていて、もっとも有名な使い
方は、牛や羊の乳の量を増やす目的です。餌としてゴーツルーを食べさせることで、最大50%も乳の量が増
えると言う報告があります。名前の「galega」は「乳を増やす」という意味があるのもうなずけます。もちろん
人間の授乳期の女性の母乳を増やす効果もあるので、昔から産後の授乳期の女性には重宝されてきた
ハーブでもあります。

このメトホルミンにがん細胞の増殖を抑える働きがあることがわかり、アメリカやドイツ、フランスでは、メトホルミンをがん治療に使うことが増えてきました。この話は次回に・・
by nutmed | 2011-01-07 15:07