2011年 01月 11日
第979回 メトホルミン その2 がんの抑制
さて、今日はメトホルミンの2回目です。
前回はメトホルミンの素性について復習しましたが、今回は、メトホルミンにがん細胞の成長を抑える働きがあることについて紹介します。 この10年ほどの間に行われた研究、検討によって、糖尿病(2型)患者では、一般の人に比べてがんの発症リスクが高いことが報告されています。それは細胞に対する糖化の影響やインスリンに対する抵抗性の影響によるものなど、様々な原因があります。 日本でも2006年9月に国立がん研究センターの研究チームによる研究報告( Inoue M, Iwasaki M, Otani T, Sasazuki S, Noda M, Tsugane S. Diabetes mellitus and the risk of cancer: results from a large-scale population-based cohort study in Japan. Arch Intern Med. 2006;166(17):1871-7.)の中で、2型糖尿病では癌のリスクが増加することが報告されています。
メトホルミンという薬は発売以来長い歴史を持った薬で、世界中で様々な研究が行われてきました。その1つに、メトホルミンを服用している2型糖尿病患者におけるがんの発症率を見た研究報告がいくつかあります。
2009年8月、アメリカテキサス大学のがんセンターの研究チームの報告では、メトホルミンの服用により、2型糖尿病患者の発症率が高い、膵がんの発症リスクが62%低下することが明らかになっています。
この報告の中では、メトホルミンには、インスリンに対する細胞の感受性を高め血糖を低下させる作用があるとともに、がん細胞を増殖させる作用を持つとされるインスリンの血中濃度も低下させる作用があることがわかりました。また、メトホルミンには、、がん細胞の分裂と増殖を制御する重要な役割を果たしていると考えら れており、世界中でメトホルミンのがん抑制、予防作用の研究が盛んにおこなわれるようになったと同時に、メトホルミンの処方量がこの数年で増加しています。
最近の糖尿病の治療や改善については、従来から処方されてきた薬(スルホニル尿剤)や・ンスリンによる治療が癌のリスクを高める可能性があることがわかってきたため、世界的にメトホルミンの新たな有効性が期待されています。
繰り返しますが、メトホルミンの原料は植物(ハーブ)の機能成分で、人間が100%化学的に合成した「薬」でとは異なります。