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第981回 メトホルミンのがん細胞抑制の背景

今日の午前中、以前ブログでも紹介したことのある、食物耐性の確認検査として有効な、IgG抗体検査を、アメリカの検査施設に仲介して発送し、日本語で報告書を作成するサービスを行っているアンブロシアという会社の女性社長にお会いしました。このような検査サービスビジネスを行っている、それも女性の経営者ということだったので、どんな方だろうと思って会いましたが、思った通り、海外(豪州)で経営学を学んできた女性で、ビジネスセンスのいい方でした。たぶんいずれIgG抗体検査の普及と啓蒙について、協力をしていくことになると思います。

さて、今日はメトホルミンが持つがん細胞の抑制作用の背景についてです。今日は最初にかなり難しい話になるかもしれませんが、これを理解してもらえるとメトホルミンの持つ働きの骨格がわかると思いますので、ついてきてくださいね。
メトホルミンの持つ糖の代謝コントロールの働きの背景には、AMPK(AMPキナーゼ:アデノシン1リン酸によって活性化される蛋白質のリン酸化酵素)という酵素がかかわっていることが10年ほど前にわかりました。ここでは難しいことは覚えなくても結構ですから、このAMPKが細胞内のエネルギーバランスの変化を感じるセンサーであると覚えてください。
AMPKは、血糖が高くなったり、インスリンが過剰に分泌されることで、細胞のエネルギーのバランスが崩れることを感知し、そのバランスを取るために様々なたんぱく質や酵素などに働きかけますが、メトホルミンもその1つで、インスリンに対する抵抗性を抑えたり、過剰なインスリンの分泌を抑えたり、またインスリン様成長因子1(IGF-1)を抑えることで、2型糖尿病の改善の機能を持っています。
メトホルミンの働きにはもう1つ重要なものがあり、糖分やたんぱく質の過不足によって体内の細胞のエネルギーバランスが崩れ、それを感知したAMPKが活性すると、メトホルミンががん細胞の発育を抑える働きをスタートさせることがわかってきました。ここで細胞ががん化し、がん細胞が増殖するときに働くmTOR (エムトール:mammallian Target Of Rapamycin) なる物質が登場しますが、これは頭のどこかに記憶していただく程度で今回はいいでしょう。
メトホルミンに脂肪の蓄積を抑えたり、脂肪の燃焼を盛んにする作用があることも多数報告されていますが、その働きの背景にもAMPKによるシグナルがかかわっています。
それではメトホルミンの具体的ながん細胞への関与を見てみましょう。

前立腺がん
前立腺がんは、この30年ほどで増加している男性特有のがんです。2004年のCrinical Cancer Research誌、2008年のカナダのマクギル大学からの研究発表で、前立腺がんの発症リスクと、インスリンに対する抵抗性が高い(インスリンが出ても血糖が下がらない)ことには深い関係があることがわかりました。また、このことから、前立腺がんの予防には、過剰にインスリンを高くさせないことが有効であることもわかりました。 つまり、インスリンに対する抵抗性が高い人が多い2型の糖尿病男性患者では、一般の男性に比べて前立腺がんの発症リスクが高くなるということでもありますが、一方で、従来から2型糖尿病患者に血糖を下げる目的で処方されている、「インスリンをもっと作って分泌させる薬」や直接インスリンを注射する治療方法は、場合によっては適切な治療法ではないケースもある可能性があるということです。

もう1つ、メトホルミンには脂肪細胞で作られるアディポネクチンと言うホルモンに非常によく似た作用があることです。アディポネクチンは2008年12月にテーマとして紹介していますのでそちらを参考にしてください。
アディポネクチンが少ないことと肥満には深い関係がありますが、メトホルミンにはアディポネクチンに似た作用があるため、血糖のコントロールだけでなく、脂肪の代謝を促進する作用があることが報告されています。
by nutmed | 2011-01-14 17:50