第T65回 消化吸収の働きは十分か? その2

第T65回 消化吸収の働きは十分か? その2_d0070361_115323.jpg 今朝は今年一番の暑くムシムシする朝を迎えた人が多いのでは? 私も午前4時には寝汗で眼が覚めました! 外に出て庭の寒暖計を見るとすでに26℃をさしていました。これから本格的な夏に向かってこんな朝が続くのですね。 私は、もう10年になりますが、夏の朝は起床と同時に常温の水を約500ml、10分ほどの時間をかけて飲みほします。夜から朝にかけて奪われた水分を補充する目的もありますが、体全体を走っている酸素と栄養素のハイウェーの渋滞を解消するためでもあります。すこぶる調子はいいですね。汗をよくかいて新陳代謝も進みますし。


さて、今日は消化吸収の検査についての2回目吸収の働きを確認する便検査です。
・長鎖脂肪酸
食物、油脂に含まれる脂肪酸は、炭素、水素、酸素が鎖で結びついたような構造をしており、この鎖の長さによって中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に分類されています。トリグリセライド(中性脂肪)は中鎖脂肪酸に分類され、体内では素早く燃焼し蓄積し難い脂肪酸ですが、多くの植物油に含まれるリノール酸、オレイン酸などは長鎖脂肪酸で、ゆっくり燃焼され過剰に摂取したものは体内に蓄積する性格をもっています。
便中の長鎖脂肪酸をチェックすることによって、吸収状態の確認をします。
・この検査によって長鎖脂肪酸の数値が高い場合、吸収の働きが低下しており、食物の栄養素の吸収が不良である可能性があります。原因として考えられることは・・
①慢性的な下痢をおこしている
②腸内細菌がアンバランスになっている
③細菌、寄生虫の感染
④真菌類(カンジダ菌、イースト菌)の異常繁殖
⑤結腸炎
⑥食物性繊維の過剰摂取
⑦ビタミン・ミネラルの欠乏
⑧膵臓の働きが低下している
⑨必須脂肪酸(オメガ-3、オメガ-6、オメガ-9)の不足
⑩胆汁の分泌が低下している
⑪非ステロイドの消炎薬の多用
⑫腸での細菌の増殖

・短鎖脂肪酸
短鎖脂肪酸は、食物繊維が乳酸菌によって発酵するときに作られる脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸)で、ほとんどが結腸で発生します。短鎖脂肪酸が作られる量は乳酸菌の種類と数によって変わります。
短鎖脂肪酸の主な働きには、大腸の粘膜細胞にエネルギーを供給することと、カルシウム、マグネシウム、鉄が腸管膜を通過することを助ける働きです。
この検査によって短鎖脂肪酸の数値が高い場合、原因として考えられることは・・
①腸内細菌のアンバランス
②乳酸菌(飲料、サプリメント)の過剰摂取
③食物性繊維の過剰摂取
④グルテン(精製された小麦を原料とする食材:パスタなど)に対する抵抗性が低い
⑤ビタミン・ミネラルの欠乏
⑥膵臓の働きが低下している
⑦食物性アレルギー
⑧LGS
⑨非ステロイドの消炎薬の多用
⑩炭水化物の消化不良

この検査によって短鎖脂肪酸の数値が低い場合
原因として考えられること
①腸内の悪玉細菌(病原菌、カンジダ菌、イースト菌など)の増殖によって乳酸菌の環境が悪くなっている
②抗生物質の多用(抗生物質は病原菌を殺菌するのと同時に、乳酸菌などの善玉菌も殺菌してしまう)
③食物性繊維の不足
④水分の摂取不足
⑤LGS

⑥結腸の障害(粘膜の再生不良、ガンなど)


便の中の物質を調べてみることで、こんなにたくさんの情報、特に消化吸収という、人間にとっては大事なプロセスの状態を確認することができるわけです。皆さんの体内を通過してきた食材のなれの果てになるわけですから、これらの情報の宝庫であることは当然と言えば当然ですね。
かつては、日本の病院や町の医院でも、体内環境を詳しく知るための手掛かりを確認する目的で、便や尿、だ液を使った検査は頻繁に行われていたことを考えると、その当時のほうがより個人の具体的な体内環境を調べ、的確な治療改善ができる、個人差が出にくい医療だったように感じます。 現代の西洋医学では、少なくとも臨床検査の有用性とそこから得られる個人の体内環境情報の扱い方は大きく変わったような気がします。

次回は、2型糖尿病と関節炎についてです
by nutmed | 2011-06-23 11:27