2011年 07月 20日
第T80回 栄養医学トピックス VDと黄班変性
さて、週をまたぎ、今日は栄養医学トピックスの2回目、ビタミンDが黄班変性の発症リスクを軽減するという報告です。2011年4月に眼科の専門雑誌(Archives of Ophthalmology. 2011 Apr; 129(4):481-9)で発表されたもので、ビタミンDの摂取によって、年齢が高くなるにつれ発症頻度が高まる、加齢性黄班変性(AMD:Age-related Macular Degeneration)の発症リスクが低下するという報告です。黄班変性については、このブログでも過去に何回かテーマに揚げていますので、そちらを参考にしてください。
1313人のボランティア女性(日本では、男性は女性よりも約2倍、黄斑変性症にかかりやすいといわれていますが、欧米では、女性のほうが黄斑変性症にかかりやすいと言われています)を対象に行われたこの調査では、全員の血液中のカロテノイド、ビタミンDを含むいくつかの項目が検査されています。ビタミンDについては、血液中ビタミンD(25-OH vitamin D)の検査および、日常の食生活からどれくらいのビタミンDを摂取しているかのヒアリングアンケートを行っています。
調査の結果、黄班変性の症状が出始めた初期段階、特に50歳前後の人では、ビタミンDの体内の濃度および摂取量には、顕著な関係は見出せませんでしたが、黄班変性の進行状況とビタミンDの摂取には深い関係があることがわかりました。年齢が75歳以下で、黄班変性の症状が現れはじめた段階から、ビタミンDを積極的に摂取することで、その後の黄班変性の進行を防ぐだけでなく、若い段階からビタミンDを意識して摂ることによって、加齢に伴う黄班変性の発症リスクを抑えることができると考えられます。
ちなみに、の数値が、15ng/ml(38nmol/l)よりも低い状態が継続している場合には、黄班変性の発症リスクは高まるということです。
この手のテーマを取り上げた後には、必ずと言っていいほど読者の方から「それではビタミンDをどのくらい飲めばいいのですか?」「お勧めのビタミンDはありますか?」というメールが押し寄せてくるので、事前に紹介しておきますが、以前ビタミンDを長期テーマで取り上げた時にも書いていますが、ビタミンDは紫外線に浴することによっても人間の皮膚の下でつくられるビタミン、と言うよりもホルモンに近い物質です。したがって、サプリメントや食材から摂取するビタミンDを考慮するのと同時に、1日にどのくらい紫外線(直接間接を問わず)にを浴びるかということも考慮する必要があります。この点を考えると、黄班変性の発症予防や進行抑制を目的に、ビタミンDを摂ることを考えるのであれば、まずやるべきことは、血液検査で確認し、現在のビタミンDの状態を確認することです。すでに眼科で黄班変性の治療をされている方であれば、主治医に相談して血液中ビタミンD(25-OH vitamin D)を検査してもらうことをお勧めします。