2011年 07月 25日
第T83回 放射性セシウム
栄養医学研究所で受託している爪分析検査ではじめてセシウムが高いクライアントが1人現れました。ただ、お住まいが今回の原発に近いわけではなく、311以降に福島県などの方面に旅行したわけでもなく、件の稲わらの問題が発覚する以前に爪を提出された刀ので、セシウムが高値で検出された背景が不明の状況です。
臨床ミネラル学の私の師匠で、爪分析を委託しているドイツのDr.ブッシュにメールで確認してみたところ、39種類が確認されているセシウムの放射性同位元素の中で、最も安定している形のセシウムはセシウム133で、いわゆる半減期は110日、生理学的には、ごくわずかな量であれば人間には無毒とのことです。一方、1986年のチェルノブイリ原発事故や今回の福島原発事故で放出されるセシウムの同位元素は、主にセシウム134(Cs134)とセシウム137(Cs137)で、不安定で半減期も長いことは最近のメディアで報道されているので、皆さんもご存じでしょう。メディアでは今回の稲わらと牛肉から検出されたセシウムの情報量は多いですが、このセシウム137が、ガンの治療用だけでなく、工業製品、特に厚さや質量を測定する計測器(レベルゲージ)などに使われていることは私自身も知りませんでした。
また、セシウム137を調べて行くうちに、独立行政法人農業環境技術研究所が平成19年に「黄砂とともに飛来する放射性セシウム(137Cs)」という報告書を公表しています。この報告を見る限りでは、1896年のチェルノブイリ原発の影響によるセシウム137の飛散が、東に向かい、モンゴルやウイグル地方から中国に至る広範囲で高濃度に検出されていて、少なくとも同研究所が平成19年に黄砂に付着していたセシウム137が、青森県で高濃度に検出できており、セシウム137に限って言えば、今回の311以前にも、日本への飛来が確認され、農作物だけでなく、日常生活の周囲に検出されていた可能性は高いことが考えられます。
幸か不幸か、今回の福島原発事故によって、多くの国民が放射性物質のことがわかり、十分に理解できないまでも、ストロンチウム、セシウム、ヨウ素の数値に過敏反応を示すようになってしまいました。しかし、311以前の大気に飛散していた、また農作物から検出されるセシウムなどの放射性物質の数値については、全く蚊帳の外であると同時に、理解すらしていなかったと言ってもいいでしょう。
栄養医学研究所の爪分析でも、セシウムを検査分析しはじめたのはこの6月からですので、過去10年間のセシウム濃度については、日本人の平均的な数値がどのくらいかは不明です。
今回爪検査でセシウムが高い数値で報告されてきたクライアントについては、もちろんセシウムを分析するのは今回が初めてですし、そのセシウムがセシウム133由来なのか、134由来なのかまたは137由来なのかは確認できないだけでなく、蓄積した背景は今後のカウンセリングで詳細を探っていくことになると思います。