2011年 07月 27日
第T84回 栄養医学トピックス 魚油と乳がん治療
さて、今日は再び最近の栄養医学にまつわるトピックスの紹介で、魚油が、乳がんの治療成果を向上させる可能性についてです。
2011年4月、アメリカペンシルバニア州フィラデルフィアにある、がんの治療と研究に関しては世界的に名のある、Fox Chase Cancer Centerの研究者らが、乳がんの治療に使われるタモキシフェン(Tamoxifen)という抗がん剤の効果を上げるために、魚油に含まれる必須脂肪酸が安全で有効であると発表しました。
タモキシフェンは、抗エストロゲン作用を示すことによって抗腫瘍効果を上げる抗がん剤で、日本でも乳がんの再発予防などにも使われる薬です。
彼らが行ったラットによる動物実験では、魚油とコーン油、それにタモキシフェンを添加したグループとそうでないグループの4つのグループで、タモキシフェンの抗がん作用効果を8週間にわたって検討しています。
検討の結果、タモキシフェンと魚油のコンビネーションを与えたラットの、乳がん細胞の遺伝子発現率は明らかに低くなっていることと同時に、ガン細胞の分裂を抑える作用も確認できたことを報告しています。
タモキシフェンは、20年以上前から乳がん治療の主要薬として使われてきた歴史があり、外科的な術後の再発予防の目的で広く処方される薬です。
最近では、乳がんの治療にホルモン療法の選択肢も増えており、その主流がこのブログでも以前に紹介しているアロマターゼ阻害成分です。乳がんに対しては、早期発見、早期治療が従来から叫ばれてきており、それは間違いないことです。加えて、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量によって発現する乳がんが少なくないことから、遺伝的な背景を持っていたり、ホルモンバランスの変化が大きい(エストロゲンが常時高い傾向)場合には、予防のために、アロマテーゼの働きを抑える食生活を意識するとともに、今回の発表にもある魚油やオキアミなどの素材から優良な必須脂肪酸を摂ることも考えるといいと思います。