第T91回 栄養カウンセリング ナイアシン その2

さて、今日は早速ナイアシンの2回目です。今日はまず、ナイアシンについてのトピックを1つ紹介しておきましょう。
最近、アメリカの医師会雑誌(JAMA)で、ナイアシン(タイムリリース型ナイアシンアミド)には、血管の梗塞の原因になるコレステロールが血管の壁に蓄積するのを抑える作用があると報告しています。さらに、その効果は、コレステロールなどが高くなる脂質異常症の改善で広く処方される、スタチン系薬に匹敵する効果があると報告しています。ナイアシンが結果の梗塞予防やコレステロールが高くなる脂質異常症の改善の目的で使われる場合、ナイアシンアミドのタイムリリース型であることが好ましいことと、1日の摂取量は500-1,000mgとされています。
 
さて、前回の続きです。私が、この男性のサプリメントのリストの中でナイアシンに注目したのは、飲んでいる量が一般的な量の100倍もの量で過剰摂取ではないか、と言うことではありませんでした。
ナイアシン(VB3)の構造にはいくつかの種類があり、近年では、飲んでしばらくすると顔が赤く紅潮したり、背中や手のひらがむず痒くなるようなフラッシュタイプ(Flush type)と、そうでないノンフラッシュタイプ(Non-Flush type)に大別されます。この男性が半年近く飲んでいたのは、フラッシュタイプのナイアシン(ニコチン酸)ということが、クリニックに確認してわかりました。アメリカやカナダでは、ナイアシンを使う場合、ほとんどがノンフラッシュタイプのナイアシン(ニコチン酸)アミドのタイムリリース型で、よほどの理由がなければフラッシュタイプを使うことは少ないと思います。日本でも、うつ病の症状改善、脂質異常症改善などで使用するナイアシンは、ノンフラッシュタイプのナイアシン(ニコチン酸)アミドになると思います。このフラッシュタイプのナイアシン(ニコチン酸)を、1日あたり3g以上のメガドース療法として使う場合、常識的に注意する必要があるのが、顔や体の紅潮、痒みのほか以下の症状です。
・黄疸(1日1g以上を数カ月間継続)
・肝臓ダメージ(酵素数値が上昇)
・肝炎(ノンフラッシュタイプのナイアシン(ニコチン酸)アミドでも1日5g以上を数カ月以上継続で発症の可能性)
・血圧の低下(めまいを併発。ノンフラッシュタイプのナイアシン(ニコチン酸)アミドでも1日5g以上を数ヶ月継続で可能性あり)
・インスリン不耐性を招き血糖値上昇(1日2g以上を数カ月間継続)
・尿酸値の上昇。脂質異常症改善の目的で使用の場合には要注意(1日1g以上を数カ月間継続)
・かすみ目(1日3g以上を数カ月間継続)
上記はある意味では、大量ナイアシンの継続摂取時に現れる副作用と言えます。 これらの症状は、ナイアシン(ニコチン酸)アミドでは現れにくいとされていますので、ナイアシンの大量摂取に際して、選択優先順位が高いのはナイアシン(ニコチン酸)アミドになると考えます。一方で、ナイアシンアミドでもこれらの症状が現れることがいくつか報告されていることから、1日あたりグラム単位での摂取に際しては、留意することが肝要です。この男性には、2月下旬から今に至るまで、処方されたナイアシンの摂取をしばらく避けてもらうことにしました。6月下旬に、最初にこの男性の血液と尿検査をお願いしていたクリニックのドクターからメールが届き、6月中旬の段階で、男性の血液検査の数値は80%が正常範囲に戻り、めまいや疲労感は無くなったという連絡をいただきました。このドクターは男性に薬の処方はしていないということでしたが、もし、6月の検査の結果で依然検査数値が高い場合には、薬の処方を考えていたということなので、男性にとっても幸いな結果だったと思っています。結果として、この半年の間に私のクライアントの男性に現れた症状は、ナイアシンの大量摂取による可能性が高いことがわかりました。
ナイアシンは欧米、特にアメリカではこの数年ビタミンD同様に注目されているビタミンの1つで、世界中の研究者から新たな研究報告が多数発表されており、その効果が再認識されています。しかし、この男性のように、対象と使用量、期間、それに摂取中の体内環境、少なくとも定期的な血液検査やヒアリングによって、クライアントの状態をモニターすることは忘れてはいけないと思います。
by nutmed | 2011-08-05 00:14