第1164回 消化酵素の不足の兆候 プロテアーゼ

今朝は私のブログを購読していただいている、アメリカジョージア州在住の日本人の女性からメールを頂戴し、ネットの環境さえあれば、世界中で繋がりあえることを今更ながらに実感するとともに、海の向こうにも私のブログのファンがいらっしゃることに、少し嬉しくなりました。

さて、今日は予告したように、酵素繋がりで、数回に分けて消化酵素の不足がどのような体内環境の変化に影響を与えるのかについて紹介したいと思います。1回目はたんぱく質分解酵素のプロテアーゼです。
消化酵素については2009年の7月のブログで紹介しているので、概論として確認してみてください。
プロテアーゼはタンパク質を消化するための消化酵素で、膵臓で作られるトリプシンとキモトリプシン(trypsin and chymotrypsin)です。プロテアーゼが不足欠乏すると血液がアルカリ性に傾きます。たんぱく質がプロテアーゼによって分解されると酸性状態をつくりだしますが、プロテアーゼが不足することで酸性状態が作られなくなることで血液がアルカリ性傾向になるためです。例えば、動物性のたんぱく質を食べない厳格なベジタリアンの人では、プロテアーゼ生産量が低下し、不足するために一般の人に比べて血液がアルカリ性に傾く状態があるため、不安恐怖症状のような精神的な症状をもつことが少なくありません。

・骨とメンタルの症状が出やすいプロテアーゼ不足

タンパク質は、カルシウムと結合して血液中を流れ、細胞にカルシウムを運ぶために必要になります。したがって、プロテアーゼ不足によって、たんぱく質が十分に吸収されない場合には、骨そしょう症や関節炎など、カルシウムが不足することによる疾患や症状の基礎を作ってしまうことになります。この背景には2つの理由がありますが、1つはカルシウムを運搬するたんぱく質の不足、2つ目は骨や歯のほかカルシウムを必要とする細胞組織にカルシウムを供給するために、骨や筋肉などからカルシウムを引き出し体内環境の恒常性(ホメオスタシス)を保とうとするためです。プロテアーゼが不足傾向にある人で、カルシウムなどが配合された制酸剤などの胃薬を常用する人の場合、強いアルカリ性のミネラルの1つでもあるカルシウムの血液濃度が高くなるため、不安恐怖症状が顕著に現れることがあります。血液中が過剰にアルカリ性に傾いている人では、変形性関節症、骨粗しょう症、痛風性関節炎などのカルシウム代謝の問題に起因する症状が出やすいといえると思います。

・プロテアーゼ不足が低血糖の引き金になる可能性

プロテアーゼによって消化されたタンパク質の46%が、体内環境の要求に応じてグルコースに変換されるため、プロテアーゼ不足による不十分なたんぱく質の供給は、低血糖症状の引き金になる可能性があります。特に、自分の代謝タイプを把握せず、またたんぱく質を分解するプロテアーゼの不足の状態を把握せずに、減量のためのダイエット食事メニューを続けることは、低血糖症状につながる可能性があります。
・小児の中耳炎はプロテアーゼ不足の可能性もある
タンパク質の消化不良によって起きる症状の中で多いのは、小児の耳の感染症、特に中耳炎かもしれません。これは、プロテアーゼとカルシウム不足によって、中耳に溜った水の排泄能力が低下することと考えられています。小児の中耳炎の症状改善と予防にはプロテアーゼの補充は有効で、1日3回食後の空腹時にプロテアーゼを飲ませることで症状の改善には有効です。同じようなメカニズムで、生理前症候群(PMS)をもった女性における足首や手足の水分による浮腫みの症状改善にも、プロテアーゼを飲むことで症状の改善に役立つと思います。

・プロテアーゼは血液のクリーニング屋さん

プロテアーゼは、細菌やウィルスの死骸や残骸、また、アレルギーの原因になる抗原と体がつくる抗体や補体が大きな塊になり、リウマチなどのような膠原病の原因にもなる免疫複合体http://nutmed.exblog.jp/10802531/を分解する能力を持っているため、プロテアーゼは、血液中の不要なゴミを消化分解する血液のクリーニング屋さんと言えるかもしれません。感染症にかかりやすい人や、アレルギー性皮膚炎、免疫複合体が血液中に形成されやすい人の場合、プロテアーゼの不足が原因になっている可能性も考えられます。
by nutmed | 2012-01-24 16:42