第1205回 ビタミンの吸収率について

先週土曜日は千葉の柏そごうの特設会場で開催された「美と健康フェア」で、ジュース療法のすすめについて講演してきました。午前と午後の2回の講演でしたが、聴講していただいたお客様が圧倒的に女性が多かったことと、晴天で紫外線が強い午後だったため、急遽講演内容の1部を紫外線によるシミ、シワ、皮膚の糖化予防に切り替えましたが、好評のうちに無事終了しました。

さて、今日はビタミンの吸収率についてです。
以前、米国国立衛生研究所( NIH )が4600人を対象に行った、栄養補給の効果を調べる研究から、非常に興味深い結果が得られ報告されています。この研究では白内障、黄斑変性、及び、緑内障患者に対して処方するビタミン・ミネラルの栄養素をどのような方法で摂取させたときに最も効果が高いかを検討しています。
人間の栄養素の吸収能力は、20歳台をピークに徐々に下降し、40-60歳以降更に低下し、ピーク時の20-30%の吸収能力になることが報告されています。
この背景には胃酸の生産・分泌が加齢とともに低下すること、胃酸の分泌低下によって口腔内、膵臓、小腸で分泌される消化酵素の生産も低下することにあります。
食材だけでなくサプリメントに含まれるビタミン・ミネラルなどの栄養成分は、胃液に含まれる胃酸によって消化分解されるために、胃酸の分泌、消化酵素の分泌が低下している中高齢以降の年代や胃酸の分泌が低下するような病気や、薬剤で胃酸を止めてしまうような状況では栄養素の吸収能力も低下することになります。胃酸の分泌に影響を受けるビタミン・ミネラルはいくつかあり、ビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンB6、亜鉛は胃酸の分泌低下によって吸収が低下します。

ここで、サプリメントのように加工された食品と生の食材の吸収効率を考えてみてください。
自然界に生育する全ての植物、動物の肉など生の素材には消化酵素を含め数百種類の酵素が含まれています。これらの酵素はそれ自体が自らの細胞組織を守るために、また破壊するために働きます。
例えば、炭水化物を消化分解するために働くアミラーゼは多くの根菜類に含まれ、たんぱく質を消化分解するプロテアーゼは果実、緑黄色野菜に含まれ、パンクレアチンやペプシンなどの消化酵素は動物の臓物に含まれており、食材自体が持つこれらの酵素は人間が口・胃・腸において行う消化分解のプロセスに有用な素材となります。
一方、加工食品としてのサプリメントは、いかに生の天然素材を利用しても、加工段階で受ける熱、触媒、化学物質の影響によって、素材自体が持つ機能の恩恵を受けることは難しいといえます。

サプリメントの多くがカプセル、錠剤の形状をとる理由の1つには、求める素材を濃凝縮可能なこと、保存安定が容易であることなどがあげられると思いますが、そのために加工というプロセスをふむことと、保存安定をはかるために内容素材とは関係の無い保存、安定成分を配合しなければならないこと、さらにその多くが動植物性のグリセリンまたはセルロースでできたカプセルや固めるための物質に充填しなければならないことがあります。
確かに現代の食生活環境を考えると、保存安定、防腐のために様々な化学合成物質が添加されてはいますが、基本的に生の素材を食材として摂取する場合には、前述の酵素や機能の恩恵を受け、消化吸収プロセスを進めていくことが可能です。
生の素材の欠点と言えば、腐敗発酵による素材の安定性が低いということになるでしょうか。

続いて米国のPFD(Physicians’ Desk Reference, NPPDR No. 18:676, 1997.)のデーターから液体と固形の吸収率について説明します。

PFDの報告では栄養素の吸収はその形状によって異なり以下のような数値が出ています。
1、タブレット:10%
2、カプセル:20%
3、ソフトジェル:30%
4、皮膚からの経皮:45%
5、舌下(液体):50%
6、筋肉注射:90%
7、舌下(ミスト):95%
8、静脈注射:100%
この数値は栄養素の成分によっても異なりますが、ビタミン・ミネラルの多くは舌下からの吸収ができます。ビタミンB12をはじめとするビタミンB群、マグネシウム、亜鉛、クロミウムは錠剤、カプセル形状で経腸吸収させるよりも舌下からの吸収がはるかに効果が高いといえます。
特にミスト状にしたスプレーによる舌下吸収タイプのものは吸収が高いと言われています。
舌下からの吸収を考慮した場合、ビタミン・ミネラル、特にビタミンB12、マグネシウム、亜鉛については、イオン化したエレメントとしてのミネラルを直接吸収させることが可能となるため、カプセルや錠剤に配合するような媒体、例えば炭酸、クエン酸、塩素などのパートナーが必要なくなります。
このほか、最近では目から栄養素を吸収させるような点眼タイプのサプリメントも現れています。

さてさて、来月に迫りました私のセミナーですが、今回は少し趣向を変えて、ハーブの種のセットを参加者へのお土産として用意しました。内容は見てからのお楽しみですが、中々入手できないハーブの種も考えていますのでこうご期待です!
by nutmed | 2012-05-15 16:55