第1257回 セロトニンについて その3

明日は年に1回の人間ドッグ検診で、1日で午前中に胃カメラ、午後に大腸スコープを行うことになっており、本日のランチから消化器を音の得るメニューに入ります。この10年毎年行っていますが、7年前から銀座数寄屋橋にある「みゆき通りクリニック」の梶原先生にお願いしています。梶原先生は消化器の専門で栄養療法にも理解があり、いつも適切なアドバイスをいただけるドクターとして絶大な信頼をおいています。

さて、今日はセロトニンについての3回目です。セロトニンは痛みのほかいろいろな情報を伝達するための神経伝達物質で、脳内での神経機能には重要な働きを持っています。セロトニンは脳以外でも合成され働く物質で、実は脳で合成される量は体内全体の約2%で、そのほかその多くは小腸で合成され腸の筋肉の運動(ぜんどう運動や毛細血管の収縮)にかかわっています。また胃酸の分泌を抑える働きもあります。
セロトニンの生産量と作用する量が大きく関わるうつ症状や睡眠、集中力、記憶力に影響する症状を持った人の中に、便秘や慢性的な下痢、鉄や亜鉛の吸収不足などの腸の働きが良好でない背景を同時に持つ人が多いのはこのためです。
体内に吸収されたトリプトファンがセロトニンに代謝変化される過程で2つの重要な酵素があります。1つは肝臓で働く酵素でTDO(tryptophan 2,3-Dioxygenase)と肝臓外で働く酵素のIDO(indoleamine 2,3-Dioxygenase)という酵素です。
トリプトファンが含まれる食材を沢山食べたり、トリプトファンの含まれるサプリメントを飲んだ後、血液中のトリプトファン濃度が高くなると肝臓で働く酵素のTDOが活躍しはじめます。TDOは血液中に存在する過剰なトリプトファンを酸化させ、二酸化炭素、水およびATP(アデノシン三リン酸)に分解しトリプトファンの過剰を防ぎます。一方、肝臓の外で働く酵素のIDOは少し厄介な酵素で、トリプトファンが血液中に過剰ではなく、逆に少ない状態でもトリプトファンを酸化させ活性を低下させてしまう働きをもっています。
いずれにしてもTDOとIDOの酵素が働きはじめると、トリプトファンがセロトニンに変化することは容易ではなくなります。ここまで書くと、うつ、慢性疲労、肥満を改善するために、セロトニンの源となるトリプトファンを積極的に摂取することは有効だけれども、このTDOとIDOの酵素によって、仮に大量のトリプトファンを摂取してもセロトニンに変化したりタンパク質を合成する前にトリプトファンが酸化されてしまうということがわかっていただけるでしょうか。つまり、トリプトファンをいくら大量に摂取しても皆さんが想像しているほどセロトニンには変化していないということになります。
「それではうつ、慢性疲労、肥満を改善するためにトリプトファンが豊富に含まれる食材を積極的に食べても意味がないではないか・・」という声が聞こえてきそうですが、そうでもないんです。この体内のメカニズム、特に酵素の働きに注目し、摂取する方法と補うべきビタミンを考えれば副作用なく、トリプトファンを効率的にセロトニン(メラトニン)に変化をさせることが可能なんです。
その方法は次回に紹介します。
by nutmed | 2012-09-13 12:08