第1258回 セロトニンについて その4

今日は朝から予定とおり人間ドッグ入りです。午前中の胃カメラはなんの異常も確認されずいたって健康な胃の状態を確認して終了しました。このあと、大腸スコープ検査があるので2リットルの下剤と格闘中です(^^;;
さて、今日は、うつ症状では頻繁に処方されるSSRI(セロトニン再取り込み阻害剤)と呼ばれる薬に関して以前から私が持っている疑問についてお話しします。

トリプトファンは主に脳内で神経伝達物質(ホルモン)であるセロトニンに変化をします。セロトニンは気持ちの抑揚、情緒、眠りおよび食欲のコントロールをしている物質です。繰り返しますがセロトニンはトリプトファンというアミノ酸から合成され変化した物質でその過程を簡単に表すと以下になります。
ここは今日の話の中で重要なポイントなのでよく理解しておいてください。

日本でも昔から処方されてきた「パキシル」といううつ病改善薬(抗うつ剤)があります。アメリカでは1992年にFDAが認可しその8年後の2000年に日本でも承認された薬です。この薬は不安症、パニック症候群、非社交的症状、生理前の情緒不安などにも適用されている薬で、その働きは放出されたセロトニンが再び神経細胞に取り込まれてしまうことを阻害する作用を持っています。
セロトニンが何かの情報を持って神経細胞の間を行き来するためには、セロトニンの受容体(Serotoninn Receptor)を介して情報を受け渡しをしますが、この受容体と巡り合わなかったセロトニンは再び神経細胞に取り込まれてしまうため、パキシルのようなSSRI薬によってその取り込みを邪魔することになります。最近では第2世代抗うつ剤としてSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)も処方されはじめてはいます。
つまり、多くのドクターは、うつ症状を持った方だけでなく、情緒不安定、不安感、不眠などのトラブルを抱えている方の多くはこのセロトニンの生産能力またはセロトニンを合成する元となるトリプトファンが何らかの原因で少ないまたは不足していると考えているわけです。実際にパキシルなどの抗うつ剤を処方しているクリニックのホームページをのぞいてみると、 「セロトニンは、神経細胞内で作られ、神経伝達物質として放出されると同時に、同じ神経細胞に再度取り込まるという性質があり、正常であればこのバランスが保たれているのですが、セロトニンが低下してくるとバランスが崩れ、思考面や感情面で様々な症状を引き起こすとされています。パキシルは神経伝達をスムーズに行う役目があり、服薬を続けていくことで、神経伝達物質の機能が正常化し、症状が改善されていきます」と書かれています。
ここが臨床栄養学を学んできた私の疑問でもあります。セロトニンはもともとアミノ酸のトリプトファンから作られる物質であるわけですから、SSRI薬を使ってセロトニンの再とりこみを邪魔する以前にセロトニンの元であるトリプトファンに着目することがスタートラインではないかと思うのです。トリプトファンが豊富に含まれる食材やトリプトファンを正しく吸収するための環境などをアドバイスするだけでなく、実際に体内にトリプトファンがどれほど存在しているのかを検査してみることも重要な手がかりになります。
もう少し詳しく言えば、トリプトファンから5-HTPを経てセロトニンが合成されるプロセスではいくつかの酵素とビタミンB6(ピリドキシン)が必要になります。
私の師匠でもあるDr.ライトがタホマクリニックで行っているうつ症状を持った方への治療における第一選択肢はやはりトリプトファンを中心に考えたもので、専門の栄養士によるトリプトファンの食事からの摂取方法や5-HTPとビタミンB6、マグネシウムのサプリメントの処方で、尿検査によって体内のアミノ酸総量を分析することも欠かせません。
最近では日本でも食事療法を積極的に取り入れたうつ病治療を行っているドクターも見られるようになりましたが、この2年間でパキシルやその他のSSRIを処方されているクライアントに行った栄養カウンセリングでは、トリプトファンや食事内容などについては主治医から指導をされていない方が圧倒的に多いことは残念でした。
SSRIでセロトニンを有効に使うことはいいとしても、そのセロトニンの元になるトリプトファンを増やし、効率的かつ適切にセロトニンの合成を増やすことが先決であるはずです。
by nutmed | 2012-09-14 13:17