2013年 01月 29日
第1260回 乳酸菌が大腸菌性尿路感染症の予防に有効
さて、今日の話題は久々に乳酸菌です。昨年5月にオランダの研究チームによって発表された、女性の膀胱炎の予防に対する乳酸菌の有効性評価について紹介します。
膀胱炎に悩まされた経験のある女性は少なくないと思います。私のブログでも6年ほど前に、大腸菌性膀胱炎の症状改善にクランベリーが有効である記事を紹介しています。女性、特に中高齢の女性では年に数回膀胱炎の症状で悩む方が少なくないと聞きますが、今回のオランダの報告でも、平均年齢64歳の閉経後の252人の女性のボランティアによって行われた検討です。252人の女性は過去1年間に少なくとも1回は膀胱炎の履歴も持ち、過去の平均では1年間に平均7回の膀胱炎で治療を受けてきた女性を2つのグループに分け、12カ月間にわたり、膀胱炎の原因となる大腸菌の増殖を抑制するサルファ剤(トリメトプリム)と乳酸菌(乳酸菌ラフマノサス GR-1と乳酸菌ロイテリ RC-14)を予防の目的で毎日摂取してもらった経過を報告しています。結果として、サルファ剤摂取のグループでは、年間の膀胱炎発症平均回数が7回から2.9回に、乳酸菌グループでは同じく3.3回に減りました。この点についてはサルファ剤との優位差はないと報告していますが、私から見れば、この時点で著しい差があるように感じます。大腸菌が繁殖する際に必要不可欠になるビタミンB群の1つ葉酸の合成を阻害する目的のサルファ剤に対して、副作用は皆無でナチュラルな乳酸菌という素材で膀胱炎の予防がサルファ剤と同等に行えると言うことは素晴らしいことだと思います。
一方で、この研究チームの報告では、今回の検討で乳酸菌の優れた点は、大腸菌がサルファ剤を含む抗生物質に対する耐性(平均で90%まで増加)を作り難いということでした。つまり、サルファ剤やそのほかの抗生物質を使用することで、大腸菌がそれらの薬剤に抵抗性を作り、MRSAや大腸菌O-157などの問題と同様に薬剤の効果が低下し、結果として更に強い薬剤とのイタチごっこを繰り返すことが多くなるリスクと背中合わせだということです。その点乳酸菌に対する耐性は著しく低いということでもあります。乳酸菌が膀胱炎の原因になる大腸菌の繁殖を抑える背景には、乳酸菌が作りだすたんぱく質の1つ「バクテリオシン」による天然の抗菌作用が考えられます。
ただし、唯一残念ことは、この乳酸菌ラフマノサス GR-1と乳酸菌ロイテリ RC-14という株は、アメリカのドクターが製法(培養)特許を保有している乳酸菌なので、手軽に商品化されて利用できる乳酸菌ではないということです。
企業にしてみれば、一攫千金を生むかもしれない素材の開発や特許取得に血眼になることはやむを得ないことかもしれません。日本でも大手のビール製造メーカーやウィスキー製造メーカー、ケチャップや野菜ジュースで有名な食品企業が、郷土の漬けものの上澄み液に含まれる乳酸菌を分析して特許や登録商標を出願するありさまを見ていると眉をひそめないわけにはいきませんが・・・


