第1319回 産後うつに備えて。コントロールと栄養管理#1

最近、私の周囲でも話題になることが多くなった、産後のうつ様症状に備えての1回目です。
以前は、あまり話題になることがなかった、出産後のうつ様症状(PPD: Postpartum depression)については、女性の社会進出、就労する夫婦が増加、また出産年齢の高齢化によって、社会問題になりはじめ、妊娠前からのPPDに関する知識及びその予防管理の啓蒙が重要視されています。
1、PPDの背景
産後の女性の多くが、ホルモンの変化による情緒の変化を経験しますが、この背景には、女性ホルモンのエストロゲン数値が著しく低下することによるものです。
特に初産の女性の場合には、知識と経験のなさからくる不安が、情緒不安に拍車をかけ、PPDのシナリオをたどることが少なくありません。一方、女性ホルモンの変化だけでなく、脳内に存在する神経伝達物質の変化によって、産後のうつ様症状の発生の可能性が高いことが考えられています。

①モノアミンコネクション (モノアミン仮説)
モノアミンとは、神経の間を情報を伝達するための物質で、ノルアドレナリン,アドレナリン,ドーパミン,セロトニン、ヒスタミンを言います。うつ症状の原因が、これらのモノアミンが不足することによる可能性が強いことが考えられています。
モノアミン(ノルアドレナリン,アドレナリン,ドーパミン,セロトニン、ヒスタミン)は、トリプトファン 、チロシン 、フェニルアラニンの3つのアミノ酸で構成されています。
モノアミン(ノルアドレナリン,アドレナリン,ドーパミン,セロトニン、ヒスタミン)を分解する酵素のモノアミン酸化酵素(MAO)があり、情緒や感情、興奮、睡眠、精神安定など、精神神経の働きに深く関わっており、人にはMAO-AとMAO-Bの2種類のモノアミン酸化酵素が存在します。この2つのモノアミン分解酵素によって、神経伝達物質であるモノアミン(ノルアドレナリン,アドレナリン,ドーパミン,セロトニン、ヒスタミン)が分解され、量がすくなくなることによって様々な症状が現れることになります。

MAO-A:主にノルアドレナリンとセロトニンの バランスを調整する。MAO-Aの量が増え
   ることで不安、イライラ、視覚障害、知 覚障害、胃腸不調
MAO-B:ドーパミンの調整。MAO-Bの量が増える と四肢の不随意運動

②妊婦に多いMAO-A
特殊な画像解析によってMAO-Aの量を分析し、妊婦と健常人女性を比較すると、妊婦にはMAO-Aが平均で約40%高く、うつ病患者に近いレベルであることが報告されています。
モノアミンを分解する酵素MAO-Aが上昇すると、精神安定、睡眠等の機能に作用するセロトニン、ドーパミンが低下します。また、セロトニンの不足はうつ症状を増長させ、メラトニンの合成が低下するとともに睡眠の質が低下し、情緒不安、恐怖症などの症状が
憎悪する可能性があります。
by nutmed | 2013-10-10 17:33