第1412回 腸内環境とバクテリア

過敏性腸炎、腹部膨満、便通不良、ガス、胃もたれ、貧血、逆流性食道炎等の症状の背景にあると考えられるSIBO(Small Intestine Bacteria Overgrowth:小腸におけるバクテリア(主にグラム陰性菌)の過剰繁殖)の原因の1つに、胃酸不足または、最適な酸性になっていない胃酸の背景があることは以前ここでも紹介しました。胃酸のpHが十分に酸性に傾向していないことによって、ペプシンの生産が低下し食物の消化分解が進まないだけでなく、十二指腸及び小腸のpH環境も酸性を維持できず、十二指腸、小腸におけるバクテリア(グラム陰性菌)の除菌コントロールが低下することが報告されています。イラストを見るとわかるように、通常、バクテリアの繁殖は大腸付近が最も多く、小腸では大腸の約1/3、十二指腸では大腸の1/10程度の生存繁殖に抑えられています。この背景の1つには胃から継承されて送られる胃酸が深く関わっています。この程度の生存に維持コントロールできている場合には、SIBOの症状を呈することもなく、食物の消化分解と吸収は十分行われていると考えられます。
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しかし、食事後の胃酸の生産が十分でなく、pHが十分に酸性に傾向していない場合には、十二指腸、小腸におけるグラム陰性菌の繁殖を助長することになり、腹部膨満、便通不良、ガスの発生のみならず、栄養吸収障害、貧血などの栄養のステータスに関わる原因にもなりえると考えられます。
最近になってようやく日本でもネット等でも「消化と吸収」のことが話題になりつつあることは大歓迎である一方、それらの掲載記事や抄録を見ると、胃酸、SIBOについて説明されているものが皆無なことは残念です。
by nutmed | 2015-10-30 16:38