第1430回 銅不足の背景

今日は、昨年からブログでも少し紹介してきている銅というミネラルについて、私が行った栄養カウンセリングで対応した女性のケースで紹介します。
先日、知人の婦人科ドクターからの紹介依頼でカウンセリングを行った30歳半ばの女性でした。女性は生理期に入ると甘いものが欲しくなる人がたくさんいますが、中でも特にチョコレートをむさぼるように食べ始める女性が多いです。今回カウンセリングを行った女性もその1人でしたが、彼女の場合、生理期だけでなく、日常的にチョコレートをむさぼるチョコレートクレーバーでした。黙っていると一般的な板チョコを1日2枚はいってしまうそうです。症状には、朝から疲労感が募り、蒼白な顔色、足の浮腫みをふくむ貧血症状、生理不順、風邪をひきやすく長引くなどの報告がありました。知人の婦人科医のクリニックを受診するまでに、栄養療法を含むクリニックを数軒受診していたようで、その中のクリニックで、「シビアな貧血と副腎疲労を伴う低血糖」と言われ、鉄のサプリメント、高濃度のナイアシン、ビタミンC(週1回の点滴も)、プロテインを飲むように言われて3か月間継続していました。知人の婦人科医師は、3か月間サプリメントを摂っても症状の改善は見られず、逆に生理不順と疲労感が増していることに疑問を感じて、私が相談を受けたのは昨年11月下旬です。それまでの症状と飲んでいたサプリメントを聞いたときに、恐らく銅の不足、または欠乏の可能性ではないかと考えました。私がカウンセリングを行うまでの約1か月間、それまで飲んでいたサプリメントを全て中止してもらい、毎日2回、1回あたり亜鉛15mgと銅4mgを飲んでもらうことと、ニガリを入れたお湯で就寝前に15分間足浴をしてもらいました。
先日カウンセリング行ったときに彼女から受けた報告では、昨年のクリスマスを挟んで、カウンセリング当日までチョコレートを食べたのは12月最初の2日間だけで、自分でも理由がわからないが今までのように毎日チョコレートを食べなくても不安感はなかったそうです。以前にも紹介したことがありますが、生理期にチョコレートを食べたくなる女性の多くは、銅とマグネシウムの不足の背景があることが少なくありません。また、これらのミネラルを豊富に含んでいる食材もカカオであることも事実です。
では、なぜ彼女の銅が不足する原因になったのかですが、彼女の過去の生活状態をヒアリングしていくと、貧血だと言われた18年前から、独自判断で鉄のサプリメントと鉄の吸収を向上させるビタミンCを長期間摂っていたそうで、ここに最初の原因のポイントがあるように思えます。その後、3年前に受診した栄養療法のクリニックで出されたサプリメントとビタミンCの点滴の継続でさらに銅の吸収が阻害されたと思います。銅の働きの1つに体内の酸化の原因になるフリーラジカルの中和除去があります。一方、貧血の背景にある鉄の過剰な摂取は鉄自体がフリーラジカルになる可能性があるために、その除去に作用する銅の需要が常時高くなります。また、鉄の吸収を向上する作用があるビタミンCには、銅の吸収を阻害する作用が報告されていることから、この3-5年で彼女の体内の銅(活性型)のステータスが慢性的に低くなっていたのではないかと思います。
余談ですが、私が8年前にカウンセリングをした67歳の男性で、症状、特に爪の変形と白髪、うつ様症状を持つひとでもやはり銅の不足が疑われました。しかし、この時の原因はこの男性が使用していた入れ歯安定剤にあった可能性がありました。銅というミネラルは亜鉛と絶妙なバランスを保つミネラルで、亜鉛が高くなりすぎると銅の吸収が阻害されます。最終的にこの男性のケースを相談したのは、私の臨床ミネラル学の師匠でもあるドイツ在住のドクターしたが、彼女から「その男性が入れ歯安定するためのクリームを使用していないかチェックしてみなさい」といわれたことでした。いまでこそ、国内で販売されている入れ歯安定クリームには、歯の密着性を向上する目的の亜鉛を配合しているクリームはないそうですが、当時、日本で販売されてた米国メーカーのクリームには実際亜鉛が含まれていました。
この論文の内容をみる限り、また、この2年ほどの間に私が対応した銅の不足の症状を持ったクライアントの何人かに共通点として、点滴と経粘膜、経腸による高吸収のビタミンCを大量に摂取した人がいたことから、昨年春から、慢性症状を訴え、ビタミンCの高吸収多量摂取をしている人には、カウンセリングパートナーの担当医にお願いして血中セルロプラスミンを検査して、銅のステータスを確認してもらっています。高濃度ビタミンC点滴うを受けている人や高吸収多量のビタミンCを摂取している人のすべてがセルロプラスミンの値が低くなり銅が不足しているわけではありませんが、昨年5月から12月末までにセルロプラスミン検査をしてもらったクライアント12人のうち、5人でセルロプラスミンが基準値以下でした。全体の41%が銅が不足している可能性が疑われる結果で、この割合を普通と考えるには、高い数値だと私は思います。
今やビタミンCは、もっともポピュラーなビタミンで、日常的に高濃度のビタミンCをサプリメントで摂っている日本人は多いと思われます。その一方で、銅の吸収阻害の可能性が考えられる報告があることを考えると、少なくとも高濃度高吸収多量のビタミンCを摂るに際して、慢性的な銅不足の影響による症状の有無を確認するとともに、セルロプラスミンなど、銅のステータス確認、モニタリングを行い、必要に応じて銅(亜鉛や鉄のバランスも十分に考える)の補充を行うことをかんがえるべきだと思います。
by nutmed | 2016-01-22 10:33