第1432回 胃酸についてのこぼれ話

今日は胃酸について少し変わった切り口からの説明です。
pH(酸性アルカリ性)のスケールは水素の量で決定することはご存じだと思います。世間でいうところのアルカリイオン水は水素イオンの量が多い水のことでもあります。したがって、水素の量が増えるとpHはアルカリ性に傾向してしまうため、食後3時間はアルカリ性に傾向することは望ましい環境ではありません。一方で、胃酸が生産分泌されるときに、カリウムとともに必ず必要になるのも水素(イオン)です。
アルカリ性(7.365以上)のまま私たちの体は、アルカリ自体を維持するための自然なメカニズムを有しています。食べ物を消化し、細菌やウイルスを殺菌するためには、私たちの胃の内部は3.0-4.0の酸性に維持されます。 私たちは食べ物を食べ、水、特にアルカリ性の水(水素水)を飲むときに胃の内部のpH値が上がりアルカリ性に傾向します。 このとき胃の中ではフィードバック機構のスイッチが入り、胃の内部のpHを3.0-4.0に戻すために、ph2.0-3.0の強酸性の胃酸を生産分泌し、胃内部のpHの平衡を維持しようとします。 つまり、アルカリイオン水(水素水)を飲むことは、ある意味では逆説的に胃酸の生産を増加させ胃内部のpHを最適な食物分解濃度を維持するためのメリットはあるといえます。ただし、元来胃酸分泌能力が低い状態であったり、常時大量のアルカリイオン水を飲むことはかえってpHそのものを慢性的にアルカリ性に傾向させてしまう可能性がありますので注意が必要です。
せっかくなので少しトピックを紹介しておきます。
通常消化分解を終えて十二指腸に贈られる時に、強酸性のままでは十二指腸に穴をあけてしまうことになります。この問題を回避するために、膵臓が膵液と呼ばれるアルカリ性ジュースを作ります。 このジュースは炭酸水素ナトリウム(重曹)であり、ドロドロに溶けた酸性食物が胃から出る前に混合され、pH5.5前後に希釈をしてくれます。膵臓が炭酸水素ナトリウム(重曹)を作るために、胃壁から分泌された塩酸の一部は血液中に入り循環します。食後に出るげっぷの正体の多くは食事と一緒に飲み込む空気ではなく、この重曹が酸と巡り合って反応してつくられた炭酸ガスでもあります。
また、食後3時間くらいすると眠くなる人がいますが、この背景jにも塩酸(胃酸)がかかわっています。塩酸の成分は眠気を引き起こす作用のあるヒスタミン薬の成分でもあるため、食後に眠くなる人はある意味では胃酸が作られて機能していると考えてもいいかもいしれません。
by nutmed | 2016-02-23 16:20