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エビデンスは画一ではない・・

昨日の日曜日は今年で5回目となった新蕎麦賞味会に長野まででかけてきました。
趣味のバイクの友人による趣味を逸脱したプロさながらの蕎麦打ちを見て、蕎麦の食べ方のレクチャーを受けて、今年は35人の参加にも関らず、6種類の二八蕎麦の相伴にあずかりました。しっかりとポリフェノールを摂取できた1日でした。

さて、今日は私の知人でもあり、今や米国だけでなくヨーロッパ、最近では日本でもその名前を聞くようになった点滴療法の第一人者ドクターAlan R. Gabyから届く毎月1回のトピックスレポートから「コーヒーが肝臓がんを予防する???」を少し紹介しましょう。
肝臓がんは近代社会で増加しているがんの1つで、世界中で年間60万人が肝臓がんによって亡くなっているという数字もでています。今年、米国の権威ある医学誌Hepatology (2007;46:430-435.)で報告されたドクターBraviらによる追跡統計調査によると、コーヒーを頻繁に飲む人には肝臓がんが少ないことが報告されています。これは以前からも言われていることで、コーヒーに含まれるカフェインによる背景であるとか、ポリフェノールによるものであるとかが報告されていますがどれも確定的なことはわかっていません。この日本でもかつて疫学調査をおこなった結果、コーヒーを飲む人には肝臓細胞が癌化するリスクが低いという報告もあります。現状ではコーヒーのどの成分ががん細胞に有効(可能性)であるのかがわかっていません。ただ、このような研究報告が発表されると多くの場合、○○コーヒー協会、○○コーヒー会社などコーヒーを扱う団体企業がこの部分だけを取り上げて、「コーヒーは肝臓がんの予防になるから毎日○杯のコーヒーを飲みましょう!」などというPRを出したり、TVのメディアが取り上げて健康番組で特集したり、雑誌が特集したりしますね。それを見聞きした消費者の多くがコーヒー豆を買いに走り、何となく今までコーヒーなんて飲まなかったお父さんが街角のスターバックスに入ってコーヒー飲んだり(笑)
しかし、注意、いや注意というよりも警戒しなければいけないのは、確かに統計的にはコーヒーを飲んでいる人に肝臓がんが少ないかもしれませんが、それが単純にまた直接的にコーヒーによるがん細胞への影響と言い切るには時期尚早であるということです。なぜならば、コーヒーが肝臓がんの予防に有効であることは確かに統計学的には言えるかもしれませんが、一方でコーヒーの成分の1つであるカフェインが脳神経細胞への影響によって記憶力が低下する、特にパーキンソン病の患者ではカフェインは禁物であることが動物および人の研究で報告されている事実があるからです。
よく「木を見て森を見ない」ということばが使われますが、今回の報告は正にこれと同じです。以前にも書きましたが、最近一般の方の口からも「エビデンス・・」という言葉を聴くほど、世の中エビデンス偏重の状況があるようですが、特に日本人が注意しなければいけないのは・・・
医学、科学の実験研究によるエビデンス(証拠)はそのときの条件から見つけられた結果であって、言い換えればキュウリを包丁でスパッと切った切り口だけを見て「このキュウリは腐っていないしスが入っていないから安全でおいしいキュウリだ」と言っていることに近いということです。しかし、その切り口からほんの数mm左側を切ったらスが入っているだけでなく黒く腐っているということが決してない話ではないということです。

エビデンスがいけないということではありませんし、医学的・科学的に証明されることは消費者にとってもいいことは疑う余地はありません。ただし、そのエビデンスを消費者に伝えるメディアは、そのエビデンスのおいしい部分だけを捉えるのではなく、少なくとも全文を読み理解し、従来報告されているエビデンスやそれに関係するエビデンスとの比較評価をし、第3者として中立的な立場で正確にそれを伝える義務と責任があると思います。そしてそれを受け取る消費者も自分で可能な限りそのエビデンスを正確に評価するために積極的にインターネットなどを使って分析し評価しなければいけないと考えます。 好むと好まざるとに関らず、幸か不幸か今の世の中は我々消費者のエゴで作り出された副産物ばかりです。便利、合理的、楽ちんというエゴによって作り出されたモノの評価だけは、自分が責任を持って行うべきではないかと思います。
なぜなら自分の健康は他人に委ねるものではないからです。自分の健康は誰が決めるのでもなく自分が決めるものですから、それを選択する決定権は自分にあり、そこからくるリスクを被るのも自分の責任であることを考えれば、エビデンスとは「そのエビデンスが自分にとって有益なものかどうかの判断と選択は自分にある」ことを考えるべきだと思います。
by nutmed | 2007-10-29 14:04