第431回 ビタミンB12と記憶力

デジカメが手元になかったので撮影しませんでしたが、今朝我が家のゴウヤの実が4つ確認できました。1本はすでに5cmほどに成長していましたが何とも繊細な弦にさがっている姿を見ると、そっと見守ってあげたい気分です・・

最近日本では、ドクタービタミンCとして名高い、ノーベル賞を2度も受賞したドクター・ライナスポーリングの提唱し続けていたビタミンCのメガドース療法がにわかに話題になっているようです。
「ビタミンC点滴療法」と呼ばれているこの治療法では、目的や患者によっては1日に30グラムという高濃度のビタミンCを静脈点滴注射によって体内に供給するもので、効果は高いと言えます。

同じようにカプセルや錠剤による経口ではなく、筋肉注射によって体内に供給するビタミンとしてビタミンB12がポピュラーですが、日本ではあまり頻繁には実施されていないようです。
2007年イギリスのオックスフォード大学のDr.クラークらの研究チームが、ビタミンB12不足と記憶力や集中力、特に加齢にともなうこれらの能力の低下の研究報告をAJCN誌(American Journal of Clinical Nutrition:November 2007;86(5):1384-1391)で発表しています。この背景にはホモシステインという必須アミノ酸の1つであるメチオニンの代謝異常によって作られる物質が深くかかわっています。ホモシステインが脳内の働きに影響を与える原因の1つに赤血球(有棘赤血球)を増加させ脳内の微小循環系の血行に影響を与えることがあります。ビタミンB12は葉酸、ビタミンB6などとともにこのホモシステインの生産を抑制する働きがあります。ホモシステインの生産が増える状況は何も特別な人ではなく、現代人の多くが日常生活の中でホモシステインの生産が増加するような状態を強いられているといってもいいでしょう。

Dr.クラークらの研究チームの発表によると、痴呆症と診断されている患者の血中ビタミンB12を分析したところ、正常な人に比べビタミンB12が低く、経過観察をしてみてもビタミンB12不足が慢性的に続くと、50%も記憶力、集中力の低下が進む速度が速くなり、逆にビタミンB12の不足を補うことで30%も遅くするこができるということです。

不足症状の自覚ができにくいことと、ビタミンB12不足の確認をする医療施設が少ないこと、そしてビタミンB12の過不足を確認する的確な検査を実施している検査センターがないことから、日本ではビタミンB12に注目するドクターが少ないような気がします。悪性貧血などの血液の働きにかかわる症状の場合にはほぼ必ずビタミンB12の検査はしても、不定愁訴、特にメンタルな症状にかかわる患者に対してビタミンB12の検査は日常的ではないようです。

ここから少し難しくなりますが、ついてきてくださいね。

ビタミンB12の検査についても、日本の検査センターで実施されている検査で捉えることができるビタミンB12は、血液中のトータルなビタミンB12を分析するものですが、細胞内に吸収されてビタミンB12として働くものは「トランスコバラミン」というタンパク質と結合したビタミンB12で血中を流れるビタミンB12のわずかに30%ほどです。その他ビタミンb12の多くは「ハプトコリン」というタンパク質と結合したものでほとんどが細胞内に吸収されません。
したがって、ビタミンB12の不足の状況を確認するためには血清で分析するよりも、このトランスコバラミンを直接分析することが最も適していると言えます。

ここまで来ると理解していただける方がいるかもしれませんが、ビタミンB12はだ液に含まれる物質や胃酸の量やpHによってその吸収が大きく影響を受けるビタミンですから、加齢だけではなく、メンタルストレスによって胃酸やだ液の成分を作る能力に影響を受けている現代人にとって、ビタミンB12の不足は意外にも多いということです。
そして、以前ブログでも書きましたが、ただでさえこのように吸収に影響受けているビタミンB12は、細胞に吸収され作用することができるのはわずかに30%(トランスコバラミンと結合したビタミンB12)しかないわけですから、ビタミンB12こそ最も吸収のいい方法で摂取するべきビタミンであるということです。

以前、私がビタミンB12の筋肉注射を患者に勧めてみてはとアドバイスをしたドクターから、ビタミンB12の筋肉注射をして症状が改善されたが、血中(血清中)ビタミンB12を分析したら基準値を大幅に上回った値であったが大丈夫だろうか、との相談を受けたことがあります。
もちろん、このドクターにも上記のようなビタミンB12の吸収と作用のメカニズムを説明して納得いただきましたが・・
by nutmed | 2008-07-09 14:35