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第579回 中高年に多いうつ、慢性疲労、肥満の原因 その2

今日の日本は東北、北海道を除いて朝からグズついた空模様。5月最後の週末はそうやらこのまま曇天で終わるようです。まさか梅雨の走りではないでしょうが・・

さて、前回はセロトニンとトリプトファンが特に中高齢者のうつ、慢性疲労、肥満に少なからずかかわっていることを紹介しました。今日は食事から摂取しているトリプトファンが何故不足しがちになるのかについてお話します。
トリプトファンは8種類ある必須アミノ酸(人間が作ることができないアミノ酸)の1つですが、その中でも1日あたりにかなりの量を必要とするアミノ酸の1つでもあります。その背景にはトリプトファンがかなり多くの役割を担っているアミノ酸であるということがあります。
一般的な1日3食の食事から摂取できるトリプトファンの1日量は1,000から1,500mgだと推定されています。この量は1日に必要とするトリプトファンの量にほぼ近いと考えてもいいでしょう。残念ながらここでいう「一般的な食事」はひょっとすると老若男女問わず現代人が食げている食事内容、素材、食事の仕方を考えると、かなりかけ離れている可能性はあるかもしれませんね。
トリプトファンはセロトニンのタネになるアミノ酸であることはお話しましたが、これ以外にも1例をあげると、ビタミンB3(ナイアシン)を作るアミノ酸でもあります。食事からのビタミンB3の摂取が乏しい場合や腸内細菌の環境が悪く、ビタミンB3の供給が不足している場合、人は肝臓でトリプトファンからビタミンB3を合成します。イギリスの研究者によると、1mgのビタミンB3を合成するためには60mgのトリプトファンが必要になると報告しています。特別のことがない限りありえないことですが、もしビタミンB3の摂取が全くなく、腸内細菌による合成もないと仮定した場合、1日に必要なビタミンB3量を20mgとして、この量をトリプトファンから合成しようとすると1,200mgのトリプトファンが必要になり、一般的な食事から摂取する量でも間に合わないということになります。そんな状況になる前に「危険信号」としての自覚症状が必ず出てくるのでまずそんなことはないですが、でも現代人の食生活や腸内環境を考えると、あながち全くない話ではないかもしれませんね。

以前からこのブログでは「食べたものに含まれる栄養素が100%吸収されることはない」ということをお話してきましたが、それは消化分解と吸収能力には年齢、症状、体内環境などの条件に個人差があるからであることもお話してきました。アミノ酸も同様で、トリプトファンが多く含まれた食材を沢山食べたからと言ってすべてが吸収されるわけではありません。そもそもアミノ酸はタンパク質を構成する物質ですから、タンパク質の分解能力(胃酸やプロテアーゼ酵素の生産分泌能力)に大きく依存するわけです。
トリプトファンがセロトニンを合成するためには、血液によって脳細胞の中に運ばれなくてはなりませんが、このとき脳間膜という関所を通過するために、トリプトファンは脳内まで運搬をしてくれるパートナーを必要とします。やっかいなことに、この運搬パートナーはトリプトファンだけでなく、その他のアミノ酸にも必要なために、ここで運搬パートナーの奪い合いがはじまります。さらに加齢によって血液の中を運搬されているトリプトファンの劣化を促進してしまう酵素(IDO:indoleamine 2,3-dioxygenase)が働いてしまうことで、中高齢者では若い世代よりもトリプトファンが不足しやすくなります。
この酵素については後日説明するとして、こんな背景もあり中高齢者ではセロトニンが不足しやすくなり、それにともなう症状が出やすくなるという構図になるわけです。
by nutmed | 2009-05-28 12:59