第591回 コレステロールの真実 その1

いよいよ来週には梅雨入りの予報がでました。多くの方は雨が続くジメジメの季節ですから「梅雨が好き」と言う方はそれほど多くはないでしょうが、適度な水分があって紫外線も多くなく、皮膚にとっては都合の季節でもあるように思います。それでも、カビが増殖しやすくなり、洗濯物も家干しになるために「梅雨は嫌いだ」という方がいるのもうなずけます。ドイツの音響学者の話では、適度な湿気のあるときの音はいつもより柔らかく聞こえ、細胞には優しくなる時期でもあるそうですから、盲目の天才ピアニストのクラシックに耳を傾けてむけるのもいいかもしれませんね。
そういえば読者の方からメールをいただくまで忘れていましたが、この6月7日でこのブログも丸3年を終え、4年目に入ったんです!日記をつける代わりに自分の専門分野の情報を書くことで後々に振り替える自分の歴史の1つと思ってスタートしたこのブログですが、これからも体力、知力の続く限り継続していきますのでよろしくお願いします。

さて、今日からコレステロールについて少しお話します。
メタボリック症候群、ダイエットの話題が出ると必ず出てくるのがコレステロール。
「善玉・悪玉」などと呼ばれるようになったコレステロールですが、場合によっては毛嫌されてコレステロールを摂らない食生活が横行することも少なくないようです。しかし、コレステロールの85%近くは肝臓、脳、各細胞内で合成されるもので、食事から摂取するものは皆さんが想像している以上に少ないのです。
コレステロールは体内で酵素の働きによって、ビタミンD、女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)男性ホルモン(テストステロン)やストレスホルモン(コルチゾール)に変化するもの、また胆汁によって脂として吸収されるものがあります。コレステロールは体を構成している細胞の膜を作っているほか、コレステロール全体の約25%は脳細胞を構成するために使われています。つまり脳の働きにはコレステロールは欠かせない物質で、神経の働きはコレステロールに依存していると言ってもいいでしょう。
減量のためにコレステロールを摂取しないかなり過激なダイエットをしている若い女性も困りますが、もっと厄介なのは、マスコミやネットで情報を得て多少知識があり、炭水化物は言うに及ばず、タンパク質と脂質の摂取制限をし、毎日のようにジムに通ってポンプアップエクササイズや1時間以上のジョギングをハードにこなしてしまう方々、特に40歳を過ぎてからの方々ですね。
このような方々の中には、筋肉をなるべく落とさないように体重は期待とおり落とすことはできるのですが、記憶力や集中力が以前よりも急激に低下してくることがあります。さらに検診や人間ドッグで血液検査をすると本人が想像している以上にコレステロールが高くなっていて、「食事や運動をこれだけやっているのに・・」と落胆してしまう方も少なくありません。
これと性格は違いますが、コレステロールが高く、コレステロールや中性脂肪を低下させるような薬を長い間処方され服用し、コレステロールを蓄積させないようにする厳格な食生活を送っている方々もまた似たような状況を作ってしまうことがあります。
この両者の原因には、背景は違いますが「脳の働きに必要なコレステロールを必要以上に低下させてしまう」ということがあります。
コレステロールの中でもLDLコレステロールが基準値を下まわるほど低下していることが少なくありません。メタボリック症候群予防に関して、コレステロール、特にLDLコレステロールが「悪玉コレステロール」としてやり玉に挙げられますが、LDLコレステロールの極端な低下はかえって脳の働きや細胞の治癒にマイナスになることがあります。事実、LDLコレステロールが脂質改善薬(スタチン系薬)で急激に低下したり、ダイエットとエクササイズで低下していて、記憶力や集中力が低下している方に、食生活指導でLDLコレステロールを上昇させてあげることで症状が改善することがあります。
by nutmed | 2009-06-10 08:25