2009年 06月 15日
第594回 減量のための9つのポイント「インスリン抵抗性」
さて、今日から最近の研究報告やトピックスを含めて、ダイエット、減量、特に30歳後半からの減量で知っておくべきポイントをテーマに9回のシリーズを続けてみようと思います。
1回目の今日は「インスリンの抵抗性」についてです。
若いころに比べ、年齢を重ねるごとにお腹まわりの脂肪がつきやすくなったり、体力が低下してくる症状は、多くの方が経験していることでしょう。この背景にはいくつかの問題がありますが、その問題の多くの原点が糖分の代謝にかかわるインスリンと細胞の働きに関係していることは最近の日本のドクターも注目していることです。インスリンは細胞膜の表面にある「インスリンレセプター」というインスリンによって刺激を受けて細胞内に糖分(グルコース)を取り入れる受容体に働くホルモンです。このインスリンレセプターの感受性が正常であれば食物や飲料に含まれる糖分が細胞内に取り込まれエネルギー源となりますが、何かの理由でこの感受性が低下することによってインスリンレセプターが上手に機能せず細胞内にエネルギー源としてのグルコースが取り込まれなくなることがあり、このような状態を「インスリンに抵抗性を持った状態」と言います。その1つには加齢という自然の成り行きも含まれます。エネルギーを作る細胞にエネルギー源のグルコースが取り込まれなくなると、さらにすい臓からインスリンが血液中に放出されることになり、血液中のインスリンが過剰になることで心臓病のリスクが増すことにもなります。
インスリン抵抗性を低下させる方法はいくつかありますが、医薬品もその1つで、日本でも以前から血糖を下げる薬として処方されているビグアナイド系血糖降下薬のメトホルミン(メルビン、グリコラン、メデット)があります。この薬は糖尿病(2型)の治療薬ですが、多くの薬がすい臓にインスリンを作ることを促す作用であるのに対して、糖分そのものの吸収を抑える作用とインスリン抵抗性を抑える作用をもった薬です。アメリカの栄養療法では、2型糖尿病の方でインスリン抵抗性を持った患者に対して、めずらしく比較的ポピュラーに処方される薬です。日本ではメトホルミンの用途が少しづつ見直され、この5月に用法要領が改訂になっています。
薬以外でインスリン抵抗性を抑えるために有効と考えられている素材の代表的なものは・・・
・クロミウム
・マグネシウム
・セレニウム
・シナモン
・コケモモ
・ココア(ポリフェノール)
・タラの肝油
もちろん、1日の摂取カロリー(特に炭水化物)を見直すことも重要なことではありますが、このインスリン抵抗性の有無または大小を考慮せずにカロリー摂取抑制だけをしても効果は半減してしまうことにもなります。
次回は減量のための9つのポイントの2つめ、ホルモンバランスです。